TURN JOURNAL編集企画トーク 畑まりあ氏

「作品制作を目的としないアートプロジェクト」。タブロイド紙TURN JOURNALを企画編集する畑まりあは、そのねらいをそう語る。アーティストやキュレーターなどのアートの専門家が寄稿し、監修者であるアーティスト・東京藝術大学美術学部長 日比野克彦氏のイラストが誌面を大きく飾る。「ここにこの写真がある意味はなんだろう?」「これは誰に向けて作られた冊子なのだろう?」と読者は考えさせられる。

冊子名となっているTURNは、障害の有無、世代、性、国籍、住環境などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を表現として生み出すアートプロジェクトの総称である。2017年度より、東京2020公認文化オリンピアードとして実施されている。

畑はオリパラを盛り上げるためではなく、「社会変革、意識更新」を次の世代や社会に投げかけるためにTURN JOURNAL編集のソフト・ハード面ともに気を配る。最新号では、コロナ禍における社会の変化をテーマと定め、各専門領域を活かしたチームを編成する。「このテーマがこの場にふさわしいのか」。言葉を重ねるプロセスを大切にし、企画段階だけで1か月もかける。公共事業だからこそ、制作に十分長い時間をかけ、また複数年かけてできる取り組みである。多様性を広げる、マイノリティの特性も活かしながらつながるという相互作用を、オリンピック後もレガシーとして、つなげていきたいという。

一見するとデザイン性に富んだアートとの関係を感じさせる読み物なのは、畑が媒体特性と向き合い、いかに対象読者へ働きかけるかを意識しているからである。活動のすそ野を広げるために「友人と共有し、ちょっとカバンにいれて持ち歩ける」をコンセプトに紙の丈夫さや目を惹くデザインが意図されている。専門家、事業関係者、幅広い一般層、障害を持っている当事者、福祉関係者など、それぞれの人たちが興味を持ってもらえるタブロイド紙となるよう工夫している。どの号にも、後で振り返られるように誌面に社会情勢を入れている。読者が増えれば、多様性から生まれる相互作用や意識更新が広がっていく。スタイリッシュな冊子は多くの人から人へおススメされ、じわじわと広がり続ける予感がする。

佐藤久美


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