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FF16をクリアして 脚本がとにかく酷い!

ネタバレ有り!

前置き


私は1年前からFF14をプレイし暁月で大泣きし「Flow」を聴くと風景が滲むほどストーリーに感動させられたのですが

逆に言えば新生~紅蓮までのストーリーはさほど…というようなユーザーで

今回FF16の脚本家はその新生~蒼天を担当した前廣和豊さん

本職はプランナーであり、脚本家ではない。
(本職じゃないからダメというつもりは一切ない)

ただFF16は各媒体でのインタビューでしきりに「物語」を売りにしていたため

情報が出始めた1年近く前から”あの”新生~蒼天のメインライターをそのまま起用。という時点で非常に不安でした。

とは言いながらも、世代を問わず想起する西洋ファンタジー的な世界観や
”いなたい”雰囲気。

兵器や奴隷として扱われるドミナント、いわば改造人間的な

吉Pも大好きな仮面ライダー的な悲哀もありつつ

同時にエネルギー問題から奴隷制度と、しっかりと普遍的で深く掘れるテーマが並んでいるため

発売前から期待値はどんどんと上がっていました。

しかしゲームを進めていくと

重要な設定の後出しや投げっぱなし。

台詞回しの雑さ。

整合性のないキャラクターの行動。

それらがあまりにも目立ち、どんどん没入感を削いでいき、終盤にはもうどうでもよくなるような展開になっていったため

ストレス発散のために書いていきたい

※何も粗探ししてやろうとか、特定の誰かが嫌いだから!とかではありません。



まず最初に強く違和感を覚えた描写は

シドが橋を飛びこえようとして落ちかけるシーンでクライヴはすぐに助けに行くが、ジルはそのまま棒立ちというシーン…

とはいえここだけなら省略ということで納得できるものの

その後、謎の敵がクライヴに手を伸ばすシーンでも、またジルは棒立ちのままトルガルだけが動く

ジルはドミナントであり、剣を持って戦うキャラクターでありながらとにかく動かない。

ジルのドラマが展開されるはずの司祭のシーンでも

”司祭が差し向けたわけでもない”ボス相手に顕現するもまったく歯が立たず、ゲーム上仕方のない形でサポート役に徹する。

その間、司祭はジルが足止めしたり拘束するわけでもなく、ほったらかしで一切の描写がない。

命や性を搾取した相手への復讐もさっぱりしたもので、あまりカタルシスがない。

確か制作陣のインタビューで「映像がリアルになった分~」とグラフィック向上によるリアリティラインの引き上げとそのための努力が必要という旨を話している一方で

そういったリアルに近づいたが故に、これまでは気づきにくい脚本の”粗”が際立ってしまい
それらの補填や理由付けに、気が回らなかったのか気づかなかったのか。

どちらにせよこれでは主人公のために奉仕する都合のいい”ロール”で完結していて、キャラクターが地に足がついていない。


設定説明と演出不足

そういった状況設定の理由付けに留まらず、アルテマは複数体いるという設定も最終盤で初めて見せられ

その間、早い段階でこれまで姿を見せなかったジョシュアがアルテマを自身に封印するという展開から

(結局なぜ姿を見せなかったのかの理由も明かされることもなく、クライヴの奴隷時代は場所が掴めなかったから。とかそういうセリフもない。)

最初から病弱であるという設定で制限をつけているにも関わらず、さらにアルテマを内に閉じ込め、内部からダメージを負う。というのが設定として重複しているため上手くないし

その後またアルテマが出てきたときに、えっ封印したんじゃないの?という当然誰もが湧く疑問にキャラクターが一切代弁もしないため、何かプレイヤー側がムービーや台詞を見逃したのかと気もそぞろとなる。


見逃したのか?という点ではシドの死後、5年後に時世が飛ぶのも

砂漠地帯に場面転換し、場所の名前が出たときにも時間軸の表示がされず、主人公たちの見た目の変化もない

ただ突然「”先代”のシド」と言われても、まぁ死んでからちょっと時間経っ
てるのかな?程度で

時世を飛ばすことの魅せ方というか楽しませ方は

「…?これがこうなってるってどういうこと….えっ5年後!?」

というようなサプライズ的な演出をするのがベターで、そうでないなら結構な捻りを必要としますが

”何故か”

”急に5年”

時間が飛ぶため違和感しかない。



またこれも大きな設定である「顕現」についても
ガルーダやタイタンは召喚獣の力を奪われても、自我を失う代わりに再び顕現していたが

バハムートとクライヴとの会話では「力を失ってもまだ顕現できると聞いたが」「あれは人を捨てる行為だ」と警告した後「正気を保ってみせる」という

未知なものに対して謎の自信…はまだいいものの、その後自我を失うこともなく力が弱まったような描写もなく平然と戦うため、リスクが感じられず切迫感もない

つまり最も避けねばならない「何でもありじゃん」状態になっている。

(せっかくトライディザスターとかはカッコイイのに)

そのせいで、だったら人類の危機なんだからジルも召喚獣になって加勢しろよ!等々余計なツッコミが増えていく

そういった「じゃあこれ出来るじゃん」という穴を理路整然と埋めるのが脚本家の仕事にも関わらず、それをしようとした気配もない。

ゲースロが好きなので~と語っていたけど、様式や雰囲気だけは真似して肝心な部分が疎かって、実写版ガッチャマンとか実写進撃の巨人レベルの酷さだよ つまり真剣に作ってないのと同じ

オーディンの母への執着も特に語られることもなく、またこれも急に豹変し性格が激変する展開も、そもそもどういう人間かもわからないしバックボーンも描かれないためキャラクターが記号でしかない。

(アルテマの姿がころころ変わるってあれもなんだったのよ)

なぜ彼が人に落胆して神に縋るのかも分からないため

なぜクライヴが圧倒的に強いオーディンに勝てたかが”器だから”の設定でしか説得力を持っていないことは

このゲーム最大の欠陥であり

それは最後まで続く



アルテマとの戦いでは、自我を失いそうになるクライヴも

言わば「敵の技によって、夢や幻想の中に閉じ込められるも、それまで築いてきた人との繋がりや信念によって打破し、今一度覚悟を決める」という

デジモンアドベンチャー02やグレンラガン等々にもある

私が一番好きな激アツ展開にも関わらず

特にこれまでの旅の中でのことが活きてくるわけでもなく、ジョシュアだけの呼びかけで目を覚ます。

下手か!!!

あの牢獄の中にドミナント達がいるのは分かるけど、オーディンの副官みたいのがいるせいでクライヴが力を吸収してきたが故に、内部で渦巻くマイナスといった演出…わけでもないのも上手くない。

その後ジョシュアも死に、最後の戦いでも「クライヴ!」と声はするものの(ジョシュアとジル以外に誰がどの声かわからない)外でクライヴの無事を願う人々や、その世界で生きる人達が一切描かれない上

ゲーム上、クライヴが使う技は基本相手から奪う形で得ているので、何か想いや繋がりの力。というものが実感しづらい。

中でもジルから吸収したシヴァの力も、あの全裸シーンからその後のジョシュアから殴られる展開を含めて

愛する人を石化させないためと汲み取れはするが、結局は相互理解の末だとかではなく、ここも通底した「ジルの意志のなさ」で

黒人が出ないからポリコレが~と一時期騒がれたが

こっちの方がよっぽど問題で、ジルは召喚獣になっても弱く、OP以外は見せ場がなく、足止め程度かそもそも敵わず連れ去られて拘束される(2回も)と

さすがにこれは時代錯誤がすぎるというか、もしこれが女性じゃなかったとしてもこの主体性や行動のなさ(司祭の部分の数分以外は)は

まさに自我のない肉の塊と言われても仕方ない。

そんなわけで結局クライヴがただ一人で抱え込んだまま戦うせいで

オーディンの時と同じように

なぜ創造主であり、圧倒的に強いはずのアルテマに勝てるのかの説得力に欠けている。



台詞もどうかと思う部分が多い

FF16一番の名シーンであるバハムート戦で

ゼタフレアが迫る中「兄さんこのままじゃ」に対して

「覚悟を決めろ!ジョシュア やるぞ!」って

会話になっていないし言葉の並びがおかしい!

「俺たちならやれる!」とかそういうんでしょ!!!

まるまる変えないにしても

「やるぞジョシュア!...覚悟を決めろ!」
「覚悟を決めろジョシュア!やるぞ!」

と並び変えるだけで十分違和感ない、ちゃんと勢いに乗ったものになるのに

こんな細かい部分をとっても、やはりキャラクターが生きていないが故に、台詞も浮いてしまって自然にならないというのは

いかに今作の脚本とキャラクター演出の力不足なのかが如実に表れている。

それはラスボス戦でも同様で、とどめの一撃が「くたばれ」なんてのは論外として

「最終幻想」と「究極幻想」のワードを熱く使いたいなら

タイトルである「最後の幻想」をボス側に言わせるのも違和感というか綺麗じゃなくて

魔法や奴隷、エネルギーなどはアルテマが創造したものであり、クライブはその神の描いた”幻想”を終わらせる。という構造なんだから

「人ごときが…被造物が思い上がるな!我は創造主なのだ!」的なところで究極幻想は台詞で言わず、自分の名を冠する魔法がいつもの赤線で出て

クライヴがアルテマに対して
「お前の生み出した世界はここで終わる!これが”最後の幻想”だ!」的な流れの方がよっぽど自然でしょうが!!

と、あまりに酷すぎて、自分の中のFF16を再構築したくなってしまうような酷いセリフ回しだった。


テーマが手に余った

やたらと出てくる「大悪党」というのも

イマイチ世界でどれだけクライヴたちが非難されてて恨みを買っているかも、難民の描写はあるも直接的にクライヴたちが自分たちの行動に自信を失うようなシークエンスもなく

そもそもマザークリスタルをすべて壊した後の世界をどう支えていくのか、エネルギーの代替案的なものもない。

とりあえずこのままだと環境破壊で遠くない未来、人が住めなくなるから、様々な発電システム壊そう!その後のことは何も言及しないし考えてもいない!

って、流石にそれって真摯でないというか、この現実世界で誰もが

聞いて、感じて、考えている問題なわけで



そこに”綺麗事ですらない”思想と目的で動いているため

人が人として死ねる世界=奴隷制の撤廃と

黒の浸食=エネルギーシステムによる環境破壊

この二つが何の論理や展望もなくむやみに混同されたまま進んでしまう。



アルテマが一族を蘇らせようとしてたとかもあまりにサラッと明かされる…というか急に設定が追加されるにも関わらず

それが信念や想いの衝突という構図にも台詞にもなっていない。

アルテマが死の直前に「お前たちは永遠に苦しむのだ」的な呪詛を吐くも

クライブは無言のまま、その呪詛がこだましたままにしてしまっているのも良くない。

そこは「負けないさ、想いが紡ぐ限り…」的な前向きなアンサーが必要でしょうが!!!

その後、赤ちゃんが生まれて新たな生命が。ってそれは苦しみのアンサーになってないし

その妊婦がちょっと前に出てきた、まったく思い入れのない人だからやっぱり記号でしかない。

しかもそのままエンドロール入るせいでとても長い間

えっその後の世界は?アルテマの呪詛がこだましたままなんですけど!と感慨に耽ることも出来ず

エピローグ的に魔法が無くなりました。って

結局「黒」はなんだったんだよ!人の環境汚染的な比喩かと思ったら、アルテマ一族がいたときも黒はあったって、何それ!?

あれだけ嫌な気分にさせる奴隷制度のその後もノータッチ!

酷い!明らかに土台の世界設定の構築で力尽きたのか

もっと重要な部分が疎かというか、致命的に荒いというか、整合性もなければテーマ性の解決や昇華、明るい提示出来てない!

何よりこのプロットに、敬愛する吉田直樹がOKを出した。っていうのが一番理解できない。

がっかりしました



最後に良かったところ

ゲーム部分は楽しめたし、グラフィックやキャラクターデザイン、世界設定は良い

バハムート戦のジョシュアとの共闘!ビームラーニング!で十分めちゃくちゃ熱いのに、さらにそこからキングギドラ、合体、宇宙と

もう誰が見たってわかるガイナイズムはめちゃくちゃ燃えたしムービー全部かっこいいし、もうこれラスボス戦級じゃん!と凄い盛り上がってた!!


間違いなくあそこがピークでした。

(とはいえ、以前FF14の生放送で坂口さんが仰られていた
「FFらしさとはアニメ的な粘っこくない透明感、ドライ」
とFF16の中で一番良かった部分が最もFFらしくないというのが皮肉…)

もちろん祖堅さんの音楽は素晴らしいし、リップシンクもそりゃ仕方ないと思っているし

私は「ゲーム画面が暗い~」などのネガティブな意見は

そりゃ肉眼で見たらもっと鮮明に見えるし、こういうステージもあるでしょ。と擁護というかポジティブな意見を発していたし

発売以降の「ラスボス戦がQTEで~最後顔面パンチが~」等々のネタにされている部分はまったく問題とは思いません。

というより、もっとそれ以前の根本的で致命的な脚本の荒さが大問題だから!!!!

この規模のゲームを作るなら脚本家選んで!スクリプトドクターも入れて!ちゃんと作ってください!!!

FF16本当に期待して、天獄零式も終わらせていろんな準備してたのに….

エオルゼアに帰ります。

あまりこういう時に比較として名前を出すのは申し訳ないんですが

FF14の7.0以降も前廣さんではなく石川夏子さんでお願いします…


追伸と本質

進んで探しているわけではありませんが

絶賛している方の意見で
「駆け足で進むとサブクエストをしなかったり、反芻していないから。」

と、いわば擁護意見がSNSで流れてくるのですが

もちろんこれまで書いた部分にそれゆえの可能性もありますが、根本的な問題として挙げている脚本部分は解決されません。

一番問題なのは

奴隷制度

優性主義

環境問題


これらをストーリーのリアリティラインを引き上げるために、厳然として存在する問題を”利用”しておいて

それをしっかり描き切らないし、タランティーノ的にPAY BACK!するわけでもない。その後も描かれないし、解消されるどころか

魔法が失われたら現実に近くなるんだから奴隷制度も優性主義も強まるに決まってんじゃん!って問題に明るい回答やケアは一切ない。

これが一番デカい問題!!!

…しかし当然それでも楽しんでいる人に水を差すなんてもってのほか。

それでも批判意見を見てみよう。という奇特な方もいらっしゃるようなので

そんな方に

”FINAL FANTASY XIV フリートライアルというものがある”

こんなにも文句が出るようなめんどくさいプレイヤーがなんの文句も出ないどころか

ゲームのゲームらしさをキャラクターとドラマに結び付け、RPGでネックとなる”お使い”を見事に落とし込ませるだけでなくこれ以上なく昇華させる素晴らしさ。

FF16が良かったという人も、良くなかったという人も等しく

FF14をこそやろう!!!

フリートライアルはこちらから↓
https://www.finalfantasyxiv.com/freetrial/



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