甘い汗、夏の憧れ① ダイヤルQ2

中学2年になった。
桜庭陽が、転校することになった。兼田聖司の時と一緒だ。北陸の企業の寮に入っている家庭は、どうやら数年で必ず本社に戻されるようだ。
桜庭は仲良くしてくれたので、少し寂しかった。

桜庭にひとつ、エピソードがある。
彼の家に、当時アダルトチャンネルとして社会問題化していた「ダイヤルQ2」からの請求書が届いた。
親に詰問された時に、彼は「僕は知らない。同級生の誰かが勝手に電話したんじゃないか」と言ったとのことで、桜庭の家に行ったことがある全員が春日先生に呼び出され、尋問を受けた。
私も「桜庭の家で変な電話をしたことはないか」と、形ばかりの質問をされた。
流石にみんなわかっていたのだろう。桜庭が自分でダイヤルQ2に電話しておきながら、請求書に慌てて嘘をついたことに。
スケベで憎めない奴だった。

桜庭と入れ替わりに、その同じ北陸の企業の寮に新しい転校生がやって来た。
三ツ木幸也(みつきゆきや)。
2年になりクラス替えがあったが、三ツ木くんは私と同じクラスになった。

高井戸遼一は、別のクラスになった。
代わりに、「ザ・ピエロ」で遭ったことがある日下部や近藤と同じクラスになった。
高井戸とは疎遠になり(仲が悪くなった訳ではない。彼は適応力が高いので新しいクラスで新しい友達関係を作れる為だ)、日下部や近藤たちと一緒に遊ぶ機会が増えていった。

バレー部にも、2年次から加入した部員がいた。
高井戸、日下部、三ツ木。
それに肥後光晴(ひごみつはる)。
肥後光晴は大工の子で、同じ「草木の会」の会員だが、居住地域が異なる為に会合ではあまり会わなかった。

「お前が入るからバレー部に入るんだからな。辞めるなよ」
高井戸には、そう言われた。
三ツ木は生粋のサッカー少年なので本来はサッカー部に入りたかったようだが、残念ながら日蔭中にはサッカー部が無い為に、熱心に誘われたバレー部に入った。
日下部は…恐らくは運動部に入った方が内申書が良くなる、という計算が働いていたようだ。親の方針もあったのかもしれない。

2年になり、友達関係も多少変化があった。



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