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3000日、夢の中

2024年2月18日
オードリーのオールナイトニッポンin東京ドームに参加した

チケットがなかなか取れず、現地での参戦を諦めていたが、腱鞘炎になりながらもリセール合戦に競り勝ち、「注釈付きスタンド」のチケットを2枚獲得することができた

出会った当初からオードリー愛を伝え続け、私の布教にしっかり影響を受けた妻もノリノリな様子で、ふたりして浮き足だった様子で会場に向かう

そもそもなぜここまでオードリーが好きなのか
それは約8年前にまで遡る

当時、大学3回生で就活手前の1月、私は人生に疲れてしまい、大学を休学して地元に帰ることになった

何をするにも活力が生まれず、チョコパイを片手に米澤穂信を熟読する毎日

活字を受け入れすぎたせいで目は悲鳴を上げ、しばらくベッドに横になっていた
どうにも手持ち無沙汰な時間が苦しく、実家の録画データを漁る

目星をつけたのは「爆笑問題の検索ちゃん」
もともとお笑いが好きだったことから、母も録画する癖がついていた

当時のニヒルな心には、笑いはあまり良薬とは言えず、表情筋も退屈だったことだろう

そんな中で目を引いたのがオードリー
「後輩への講義」というネタでいつものズレ漫才をやっていたかと思えば、中盤から若林さんが怒涛にボケ始め、春日さんがツッコむ

あまりにも新鮮で面食らったが、何よりも純粋に面白すぎた

大爆笑した

どんどん畳み掛ける若林さんの「いきますよー!ニクイねぇ、三菱!」と例のCMを模したポーズは色んな意味で"キマって"おり、春日さん以上のエネルギーを感じた

何度も何度も見返して、約8年経った今でもセリフレベルで再現できる自信がある

何をしても生きた心地がせず、時の流れとともにこのまま沈んでいくんじゃないか、と不安と諦めが入り混じった心に無理矢理割って入ってきた

オードリーのことを考えずにはいられなくなった
そこで出会ったのがオールナイトニッポン

試しに聴いてみると、またもや大爆笑

部室の延長線である"最高の内輪ノリ"とも評されるふたりのトークは、ふたりで話す時間が一番楽しそうなのにもかかわらず、完全に外野である自分もなぜかその場にいたのではないかと思わせる巻き込み力があった

ますます沼にハマっていく

なぜこんなにもハマっていくのか、うまく言語化できずにいたが、若林さんのエッセイを読んでみるとすぐにわかった

あ、若林さんなら俺のこと許してくれそうだな

そんな気持ちになった

優しいとか包容力があるとかそんな立派なものではなく、若林さんの言葉や経験に「わかるわー」とただ共感できた

それは、同じ柄のキーホルダーをつけていたクラスメイトを見つけたけれど、声をかけることもできず勝手に同志に思っているような感覚だった

勝手に「若林さんは俺と似てる気がする」と痛いファンよろしく縋りついていたが、それで許された気持ちにしてくれるのだから安いもんだと思う

ドロップアウトした自分が抱える罪悪感は次第に肥大していくが、土曜日深夜の2時間だけは治外法権の夢の中にいた

毎週毎週聴き続け、今でも寝る時はラジオをつけないとうまく寝られない体質になっている

それほどまでに切り離せないところにあるのがオードリーであり、オールナイトニッポンである

たったの8年だけど、オードリーの歴史を直に浴びてきた自分は、昨夜また新しい感動に出会う

超満員に包まれた東京ドームは時間通りに暗転し、騒音が心配されるほどの声援とともに幕が開く

ふたりの内輪ノリの代表作である「フィールド・オブ・ドリームス」と「メジャーリーグ」をパロって登場

YouTubeで小出しにしていたチャリをここぞとばかりに登場させ、東京ドームのアリーナを爆走する若ちゃん

あまりに爆走しすぎて転倒しちゃうじゃないかとヒヤヒヤしたが、杞憂に終わった

ど真ん中のステージに座ったふたりはいつも通りの「ラジオ」を始めた

驚いたと同時に、「そりゃそうだよな」と心の中で古参心が湧き立ち、自然と笑みが溢れる

前半のトークゾーンでは、自分の中で不思議な感覚に包まれた

なぜかボーッとしてしまうのである

基本的に人の話を聞いているときや、映画を見ているときは、必ずと言っていいほど考え事をしてしまうのに、なぜかボーッとしてしまっていた

「いかん、いかん」と意識をふりだしに戻すが、その感覚からなかなか抜け出せない

しかし、トーク内容を思い出そうと振り返ったとき、不思議とすべての内容を覚えていた

そこで気付く

あ、すごい集中しているんだな、と

集中しすぎて意識が飛びそうになるアレ

人生で中々体験できないものをこの大一番で体験していた

自分以外の52,999人の笑い声を一切排除し、ひたすらに自分の世界を創り上げ、そこに居座る

夢の中だな、ここは

この感覚を受け入れてから徐々に周りのリトルトゥースと時間を共有できるようになってくる

きっとみんなも夢の中なんだろうな

中盤に差し掛かり、フワちゃんの登場

春日さんとプロレスをするのだが、フワちゃんがかっこよすぎる
あのフワちゃんがほとんどマイクに声をのせず、ただプロレスを徹底する

視覚的には喧しいはずなのに、実のところほとんど声を発していなかった
それはフワちゃんなりの覚悟でもあり最大のリスペクトであったのだろう

あくまで主役はオードリー
その矜持を強く感じ、一気に好きになった

プロレスが進行しているとき、若林さんの姿がなかった
そこで妻にこっそり「これ、次若ちゃんラップするんじゃないかな?」と耳打ちをした

春日さんもプロレスで疲弊し、とてもすぐに出てこられる状態になかったから

そこで思い浮かぶパターンは二つあった

一つ目はターンテーブルをしていた若林さんの後ろからDJ松永が登場し、R指定とセッションするパターン

そして、二つ目は最近コラボしたあの人と歌うパターン

見事に二つ目が的中した

あまりの感動に妻とふたりで叫んだが、周りのみんなも叫んでたな
やっぱり期待していた人が多かったのだろう

若林さんのラップが音源とは違っていて、それを聴きたかったけれど、それ以上に会場のボルテージが上がっており、うまく聞き取れなかったのが心残りだ

はやく映像化してほしいな

夢にも増して夢の時間が過ぎ去り、残り時間は30分

漫才が始まる

今回は「自己紹介と感謝」のネタで、それぞれコナンのテーマとTomorrow Never Knowsにのせて歌うというもの

今まで見てきた漫才の中で一番ふたりが楽しそうだった

ケツから感謝の言葉を排出して、それをバットで打つという、言葉にしてみてなおさら意味不明なネタなのに、会場は爆笑を止めることはできず、笑い疲れるとはまさにこのことだろうと思い知らされた

やっぱりただの同級生なんだよな

若林さんは春日さんをコントロールしてきたけれど、春日さんが突拍子もないことを言うと誰よりも笑ってる

その瞬間がこの世の中で一番尊いかもしれない

きっと、ふたりともいわゆる"真ん中"の人間ではない中で、お互いを許せ合える時間がラジオや漫才の中で巻き起こっているのだろう

自分はただの外野なのに、16万人みんなただの外野なのに、一緒に許せ合えてきたんだよな

8年間居座った夢はまだ今も覚めない

それは、失敗を経験した自分だからこそ手に入れられたギフトなのかもしれない

そう考えると、これからの人生もまだまだ希望が持てそう

どうせ、これからも夢は覚めないから

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