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製作ノート vol.3「恋する古本」

古本の絵本との出会いについて。
昨年11月からシェア本棚「渋谷〇〇書店」に「えほん定食書店」として入居している。一人一箱、自由に本を並べて自由に値付けして売ることが出来る書店だ。新本でも古本でもよい。私は自作絵本の他はほとんど古本の市販絵本を並べている。

実はこの書店を始めるまで、絵本の古本に触れる機会はなかった。でも実際、古本に出会い始めると思いもかけない収穫がある。

私はいつも、古本屋を営む友人のところを訪れ絵本を物色しているが、今まで知らなかった絵本が次々に現れる。日本は絵本大国と言われるだけあるなぁと思う。
新しい作品を読むのはシンプルに楽しいし、自分の創作にも刺激を受ける。
それに先日、こんな忘れられない出来事もあった。

自分が仕入れた絵本の中にラブレターの下書きのようなメモを見つけてしまったのだ。

ハッとして赤面。そしてメモをよく読むと、どうやら告白するための口上、セリフの素案のようだ。
小さめのノートか手帳をちぎったような2枚の紙。1枚は鉛筆で、もう1枚はボールペンで丁寧に書かれている。書いた人は一人称が「私」なので女性だろう。内容は2枚とも同じような感じ。

「ずーっと〇〇のことが好きだった。これから行く中学校が違うし、もう話せないから告白しようと思った。」

ということは、このメモの筆者は小学校6年生かぁ…。
メモの終盤には「ふられたとき…」というシミュレーションまで書いてあって胸が締めつけられる。

何より私が心動かされたのは次の内容。

「告白しようかどうか、ずっと迷っていても自分がどんどんダメな人間になっちゃう…って思って、勇気を出して今日告白しました。」

うわーん。小学校6年生で、もうこんなに大事なことを分かっている。実行しようとしてる。
いい歳した大人の私でも、ちゃんと言うべきことを言うべきときに言ってないよ!…と小さな彼女を見習いたい気持ちになりました。

このメモ、いま自分の創作用ノートに挟んである。古本でこんなことばかり起きるわけではないけれど、前の持ち主に思いを馳せる時間は楽しい。


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