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製作ノート vol.2 「関西弁」

絵本『ちもとぺーい』の主人公「ちも」は関西弁をしゃべる。自分の絵本で関西弁を使うのは2度目だ。

関西は私にとって親しみがある地域で、関西弁は大好きな言葉。というのも、1998年から9年間ほど大阪で暮らした経験があるからだ。
東京で生まれ育った自分にとって、大阪は初めて暮らす東京以外の街で私に大きな影響を与えた。
見るもの、聞くもの、食べるもの、すべて新鮮でカルチャーショックだった。そんな大げさな~と思うかもしれないけれど、当時は恵方巻きだって関東では知られていない行事だったのだ。

恵方巻きのことをたまに実家に帰った時に話すと、「どうして切らずに丸かぶりするの?」と驚かれ、「それはね…」と説明していた。「お好み焼きをおかずに御飯を食べるんだよ」と言っても信じてもらえなかったこともある。そんなことばかりだったので、大阪での楽しい食体験をまとめて紹介する絵本も作った。それが『食べる大阪人』だ。(渋谷〇〇書店の棚に閲覧用で置いている)

大阪での食に関する異文化体験を綴った

それから私は大阪気質に影響を受けて変化したところがある。それは以前より「しゃべる」ようになったことだ。今もしゃべるのは下手で口数も少ないほうだけど、昔はもっと静かだった。無口や寡黙が悪いことではないけれど、「しゃべらんと伝わらんこともあるわな〜」と教えてくれたのが大阪だ。

大阪の人はとにかくよくしゃべる。まるでしゃべることが生きていること、起きていることの証明のように。
だからこちらも寝ていると思われないように、頑張ってしゃべらないといけない。

幸い大阪の人々は東京からやって来た私に温かかった。面白いことを一つも言えなくてもちゃんと構ってくれて、色々関西弁で話しかけてくれた。

とりわけ家の近所にあったマーケット(市場)の人々との交流は今も懐かしく思い出す。
塩干屋さん、お豆腐屋さん、鶏肉屋さん、八百屋さん…。みんな私が東京から来たと言うと、興味を持ってくれて「なぁなぁ、ねえちゃん」と話しかけてくれた。ちなみに関西弁で「ねえちゃん」は幅広い年齢層の女性に使われる。

塩干屋のおっちゃんは「なぁ、ねえちゃんは東京の人やのに、べらんめえ口調やないなぁ!」とからかう。
「えーっ!?東京でもべらんめえの人なんてあんまりいないですよ(笑)」と私。
何のヒネリも無い返しでも、おっちゃんはニコニコ聞いてくれた。私が東京の人だから大目に見てくれたのかもしれない。

彼らと日々しゃべることで私は関西弁が自然と好きになり、関西文化に馴染んでいったのだと思う。

私は関西に親戚はおらず、大学時代の友人が数人いるくらいで心細かったけれど、それも最初のうちだけだ。大阪には良い思い出が多い。
絵本製作を学んだのも大阪だ。

大阪を離れ在京の今でも大阪の文化に触れていたくて、関西弁が聞きたくて、吉本新喜劇と探偵!ナイトスクープは毎週欠かさず見ている。どちらもテレビ神奈川と東京MXで見ることができる。

だから関西弁は忘れていないはずで、絵本の主人公「ちも」がしゃべる関西弁にもまぁまぁ自信はある。でも念のため関西弁ネイティブの友人に試作本を見てもらい、関西弁についてOKをもらった。

ところで、絵本『ちもとぺーい』の構想は10年以上前につくったものだ。ちょうど「自作絵本を売ろう」と思った頃、家で探しものをしていたときにひょこっと古い構想メモや絵コンテが出てきた。

なぜ10年前にこれを絵本に仕上げなかったんだろう…と思うくらい、楽しい構想メモだった。それで今回絵本を製作した。
きっと、主人公の「ちも」が「ウチらの話を販売絵本第一作にしたらええやん!」と、今を選んで出て来てくれたのだと思っている。

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