俺独自のゲームワールド[俺独ゲー]1-9

ジライゲンは俺に覚悟が無いと分かるや否や突進して来た。俺はどうにか避けようと横に飛び退いて回避した。
「貴様マデモ我ノ攻撃ヲ避ケルトハ。貴様ハケイゴト呼バレテイタナ。モット貴様ノ力(ちから)ヲ見セテ見ロ!!ケイゴ!!」
ちっ。こいつの早さは異常すぎて避ける事に精一杯だ。しかも色んな攻撃をしてくるから予測できない。
「ケイゴ!どうにかこいつに攻撃を叩き込めないか?スキル無いはずのお前も避けられてるんだ!まだ余裕があるうちに弱点を探してくれ!」
「分かった!どうにか探してみる!」
「馬鹿ニシオッテ、余裕ナド直グニ無クナルゾ!」
こいつの攻撃はさっきから高速移動をしながら攻撃を叩き込んでくる単調な攻撃だ。さっきの火を吹く攻撃は高速攻撃になってから一度も発動していない。
「?高速攻撃の速さが遅くなってる気が……」
「…」
すると突如ジライゲンが攻撃をやめてこっちを向いて話し始めた。
「貴様、我ノ攻撃ヲ躱ワシ続ケルトハ。大シタモノダ。賞賛スル。」
するとジライゲンの体がさっきみたいに足から赤く光り全身が発光するようになった。するとキースが
「動きを止めてる時に赤く光ってるから力を溜めてるのか?」
と言った。俺もそう思った。ジライゲンは赤く光ってる時ほど速く、火を出せるのかもしれない。今力を溜めてるのなら、今がチャンスなのかも知れない。
「今度コソ貴様ヲ葬ル!!」
ジライゲンがさっきまでの速さの10倍以上の速度で突撃して来た。
「やばっ!!……ぐあっ!」
ボキッ
足を蹴られ、骨が折れる音がした。足を見ると紫色に変色し、足が斜めに曲がっていたのだ。痛すぎる!!
「はぁ、はぁ、これ以上は逃げられないか……」
「貴様程ノ低レベル冒険者ガ我ト、ココマデヨクヤレタ。最後ハ痛ミヲ感ジサセズニ殺シテヤル。」
「ケイゴーー!!!やめろてめえーー!!!」
キースが走ってジライゲンに向かって持っていたナイフを振り上げた。
「ナイフスキル!![パワーダガー]!!」
ナイフが赤いオーラに纏われ、勢いを増した。しかし、ジライゲンは横を向いていたのに前から受け止めた。
カキンッ
「なっ!?」
「ソンナ攻撃、我ニハ届カナイ。ドラゴンデモ無イ限リナ。」
硬すぎて皮膚も通さないようだ。しかし、
ドラゴンでも無い限り?さっきドラゴンの攻撃も躱わして……いや、違う。ジライゲンは火を吹いてドラゴンが近づけないようにしていただけだ。つまり、まともにドラゴンの攻撃を喰らったらジライゲンでもきついって事だ。でもあの速さだと逃げられたら終わりだ。ジライゲンが遅くなってくれれば……
(?高速攻撃の速さが遅くなってる気が……)
俺はさっき感じた違和感を思い出した。
あっ!もしかしたらさっきのはそういうことか?
「おい!ジライゲン!!」
「ヌ?何ダ?サッサト止ドメヲ差シテ欲シイノカ?」
「お前の弱点分かったぜ!もう攻略方法が分かった俺は止められねぇ!お前はもう手順通りに倒せばいい楽勝ボスモンスターみたいなもんだ!」
「え?マジか!ケイゴ!」
「何?誰ガ楽勝ダ!!痛ミヲジックリ噛ミ締メテ死ネ!!」
さあて!こっからは賭けだ!本当に俺が出した弱点が合ってるかどうか確認する為に!お願いだ!言う事を聞いてくれ!足の痛みは関係ない!!
「キース!俺の代わりに攻撃を避け続けてくれ!」
「うぇっ!マジかよ!そんなきつい事頼むなよ!」
「?マアイイ!足ノ骨ガ折レテル奴は後デ簡単ニ捻レル。[アホ面]!貴様カラダ!」
よし、その間に……痛ぇ!動くのもやっとだけど今はこれしか無い!泣きたいけど!叫びたいけど!今はとにかく!俺は全力で匍匐前進をしながらドラゴンに近づいた。
「ドラゴン!君の力を貸してくれないか?」
「グルルルルルル……」
そりゃ警戒するよな。でも、
「お前の主人の敵を討ちたくないか?」
「グ…………キュウン……」
ドラゴンの頭の中では主人が自分の怪我したところを助けてくれて、仲間になった事を思い出していた。その主人が魔人に無慈悲に焼かれてしまった。
ドラゴンは主人がドラゴン族以外の唯一の家族でいて、それを魔人に奪われて許せなかった。
「ギャァオォ!!」
「もしかして……。協力してくれるのか?」
ドラゴンは頷いた。主人の敵討ちに協力する。そう言っているようだった。とても賢く強いドラゴンだ。
「よし!じゃあドラゴン、俺が合図したらあの魔人を宙に浮かせてくれ!」
「ギャァオ!!」
俺がジライゲンの方を見ると、ジライゲンにダメージは入っていないがキースも攻撃を避け続けられていそうだ。この調子なら……
「おい!ケイゴ!いつまで続ければいいんだよ!」
「小癪ナ!避ケ続ケルナ!サッサトクタバレ!!ハァ、ハァ、」
!!
ジライゲンの動きが遅くなって来た!
「糞!ソロソロカ……」
キースからジライゲンが離れた!今だ!
「ドラゴン!行け!」
「ギャァ!」
「ヌ!?」
ドラゴンが地面に足を突き立てているジライゲンに向かって突撃した。ガシッ!!
「よっし!宙に持ち上げたな!」
「グゥ!!何!?」
ジライゲンはさっきから速度が上がる直前に地面に足を突き立てていた。その間に地面から段々赤く光が強くなっていたので、地面から何かを吸収してるのかと思ったのだ。結果、地面から離れさせる事ができた今、奴の速さは落ちていた。だからドラゴンの攻撃も避けられなかったし、さっきみたいに火を出す攻撃も出来なかったのだろう。ドラゴンが足で空中に留めている為、新しく地面からエネルギーを吸うこともできないはずだ。
「貴様!放セ!」
赤く光る岩のような腕でドラゴンを殴り続けるジライゲンだが、ドラゴンの硬い鱗は攻撃を受け付けていない。よし!ドラゴンの硬さは間違いなかった!
「キース!あとは頼んだ!あいつの弱点は空中にとどまることだったんだ!今なら身動きがとれない!」
「お前!頭良すぎるだろケイゴ!!」
キースは近くの家の屋根に登り、ドラゴンの所へ飛びかかって言った。
「俺は[アホ面]のキースじゃねぇ![天才肌]のキースだ!覚えとけ!!」
そう言ってジライゲンの腹にナイフを突き刺した。
(ブシュッ!!)「グアァッ!!キ、貴様ァ……」
それでドラゴンは地面にジライゲンを叩き落とした。
ドカァーーーン!!!
地面にヒビが入り、倒れているジライゲン。最初に見た時のように無傷ではなく、しっかりと倒れていた。
ジライゲンの足の裏を見ると、収納可能のような突起が付いていて、先端には吸盤みたいなのもあった。これで地面からエネルギーを吸収していたのだろう。
「や、やったか?」
キースがフラグを立てた。
「ウ、ウグゥ、マダ、我ハ死ナン………。」
「余計な事言うなよキース!」
「え?何が?俺のせい?」
俺とキースとドラゴンは身構えた。まだこいつ戦えるのかよ……。どうすればいいんだ……?
「我ハ他ノ用ガアル。一時撤退トシヨウ。」
こいつは街の人に危害を加えた。このまま返すわけにはいかない。何かヒントはなかったか?こいつの弱点、何が……あっ!
確かこいつ、キースの攻撃を受けるとき、わざわざキースに向き直って攻撃を受けた。って事はまさか!
「サラバダ。貴様達ニハ期待ヲシテイタガ…(グサッ)グ…グハッ!?ナ、何?」
俺は首の後ろにナイフを突き刺した。
「ナ、ナ、ナナ、何!!?ナゼ我ノ急所ガ分カッタ!?アト貴様ハモウ動ケナイ程重症ダト思ッテイタガ!(血を吐く音(ゴポッ))」
「ただの勘だよ。大体強い敵は首が弱点ってのが相場だからな。あと、ドラゴンと約束してんだよ。敵討ちするってな。」
「我ハコンナトコロデ…死ヌワケニハ……グハッ」バタン
今度こそ倒した。これでたぶん平気だ。
「や、や、やったか!?」
「またフラグ立てやがって!まあもう大丈夫そうだけど。」
ジライゲンの体がバウラドッグと同じように光に纏われて消えていく。
「ふぅー〜ーきつかったーーって、イタタタタ!!!!」
骨が折れてるの忘れてた!!キースがレベルめっちゃ上がった!とか騒いでるけどそれどころじゃない!
突然街中から拍手が聞こえて来た。
「こいつ!魔人を倒したぞ!」「この街の英雄だわ!」「ありがとう!街の平和が守られた!!」「ありがとう!ありがとう!」「かっこいい!!」「おい!俺は?俺も戦ったんだけど!?」「ファンになってもうたわ!ファッファッファっ!」「ありがとう!!」「ギャァ!!」
街中の人々が歓声をくれた。俺は今まで生きてきて初めての経験だった。こんなに嬉しいなんて。ありがとうと言われて気付いた。骨が折れても戦いを諦めなくてよかった事に。キースやドラゴンに助けてもらえたからこそこの戦いに勝利した。ありがとうと言いたいのはこっちの方だ。
「俺の名前は谷口圭吾!今日からハマリングの街の……!!英雄って事でいいですか!!!」
「イェーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

――そして夕方――――

門の前に行った俺とキースはゼンじいとタマキ、そしてにわとりもどきを見送っていた。
「まさか荷造りしている間に街の英雄になっておるとは……人生色々あるもんじゃのぉ。」
「いやなんで魔人来てたことさえ知らねぇんだよ!」
ゼンじいとタマキは荷造りに夢中でジライゲンがきてたことさえ知らなかった。
「鈍感過ぎるだろ……」
「コォコォン」
「なあなあ。この人達は誰なの?」
「ああ。そういえば紹介してなかったな。こっちのじいさんはゼンじいって言って一緒にバウラドッグを討伐した人だよ。で、こっちがゼンじいの孫のタマキ君。」
「この人と一緒に倒したの!?強っ。」
「お主は確か門の前で捕まってた小僧じゃな?もうあんな事するんじゃねぇぞ?」
「だから!俺は悪くねぇんだよ!」
「ふーん?そうかえ?おおそうじゃ。一つ言っておきたいことがある。」
「ん?」
「圭吾をよろしく頼むぞ。わし達の家族みたいなもんじゃからな。」
「えっ。」
俺はまさかそんな事を言ってくれるとは思わなかった。たった2日の付き合いなのに、死闘を一回乗り越えただけなのに。まあそれでも充分過ぎるとは思うけど。俺を家族みたいに思ってくれてたなんて。
「僕からもよろしくお願いします。僕の年齢とそんなに変わらないのにケイゴさんこの辺の事何にも知らないので心配です。」
「あ、心配されてるだけね。」
「おう!こいつの事は俺様に任せろ!」
それでも家族みたいに思ってくれてたのはとても嬉しかった。
「じゃあ、わしらはもう行くでな。タテッホの近くに来たら寄ってってくれ。」
「お二人ともお元気で!!」
「ああ!短い間だったけどありがとう!ゼンじい!タマキ君!またな!!」
俺の目からは涙が出ていた。ゼンじい達2人も涙が出ていた。部外者のキースまで泣いてた。というかキースが1番泣いてた。たった2日の付き合いでも家族になれると実感した。ゼンじい達が門を出て少ししてキースが聞いてきた。
「そうそう!思い出した!さっき魔人を倒した直後にレベルめっちゃ上がったんだけど、ケイゴもレベル上がったらスキル覚えてるんじゃねぇか!?」
「そうか!俺の所持スキルはレベルが高くないと使えなくて、表示されてなかっただけか!よーし!俺のステータスよ!いでよ!」
・名前 谷口圭吾
・趣味 ゲーム
・特技 ゲームプレイ、人間観察
・属性 土
「あ!!土属性になってる!!」
「まじか!で?で?」
・レベル:17
「あれ?レベル1も上がってねぇな?」
「え?なんで?」
「最後にスキル…と。」
・スキル 大地
「スキル、大地。?」
「大地?あれ?それって…」
「「魔人のやつじゃん。」」

1-9  完

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