俺独自のゲームワールド[俺独ゲー]2-3

――ケイゴ達がゾンビロードを倒す数十分前のとある屋敷での事――
玉座に鎮座した機嫌の悪そうな顔の男が声を荒げて叫んでいた。
「おい!!ラウヴァン!来い!酒だ!!」
「はっ。ここに。」
コウモリの羽を生やし、薄気味悪い笑みを浮かべたラウヴァンと呼ばれた男は、その男に酒を注いで渡した。男はラウヴァンを睨みながら言った。
「俺は今日気分が悪い。なぜか分かるか?」
「いえ、わたくしめには考えつかないことでございましょう。」
「ちっ、そういうことを言ってるんじゃねえが……大地の魔人が死んだ。」
「なっ!あのジライゲン様がですか!?一体どんな輩があの方を…」
「いや、ただの冒険者らしい。」
「ただの?ジライゲン様が一般冒険者に負けるなど……」
「俺もそこが気がかりでな、あいつとは何度か手合わせしたが冒険者にやられるようなタマではない。戦う相手が悪かったのだろう。ラウヴァン、ジライゲンを殺したやつが今ゾンビロードという魔物の討伐クエストに向かっているという情報がある。奴の所へ行き、強さを見てこい。ちゃんと俺の元へ戻り報告しろよ。」
「はっ!」
ラウヴァンは男の元を離れて飛び立った。
飛びながらラウヴァンは小言を言う。
「それにしても殺戮の魔人様はお人よし過ぎますね。大地の魔人が殺された所でわたくし達には何の被害もないというのに。ですがわたくしは殺戮の魔人[エルガゴーム]様の配下ラウヴァン!!しっかり役目を果たしてまいります。ケヒヒヒ!!」
殺戮の魔人[エルガゴーム]の屋敷から遠く離れ、ゾンビロードの住処に飛んで行った。
――――
俺たちがゾンビロードを倒した直後、俺たちは驚愕して動けなくなっていた。
「ゴ、ゴーレムが何で落ちてきたんだ!?」
空からゴーレムが降ってきたのだ。そりゃあパニックになるに決まっている。俺達は勢いよく空を見上げた。
「!!何だあいつ?コウモリの羽がついてる?」
空にはニヤニヤしながらこっちを眺めている男がいた。コウモリ男は羽を使って空を飛んでいる。
「やい!てめえは誰だ!ゴーレム出したのお前か!?」
「ケヒヒヒ、そうですよ。面白いでしょう?」
「面白く無いわよ!はやく消しなさい!これは召喚魔法でしょ!召喚した奴を倒すか、召喚者が取り消せば消えるのは分かってるのよ!」
「分かってて消すとお思いで?あなた達の力を見たいから召喚したのですよ。特に黒髪のあなたのね。」
「…俺?」
コウモリ男はニヤニヤしながら俺を見てくる。こいつの目的は分からないし誰かも分からないが、性格が悪すぎる。ここからでは攻撃が……
「あっ!そうだ!ミラン!魔法を!」
「…!はあーー!!」
ミランは俺の言葉を聞いた途端に魔力を溜めて放った。今度は炎魔法だ。しかし、
「ケヒヒヒ!わたくしには当たりませんよ!」
「なっ!?」
ミランの魔法がコウモリ男に当たる寸前で曲がってコウモリ男を通り過ぎた途端に軌道が戻った。
「今あいつの体を自分から魔法が避けた!?」
「たぶん体に魔法バリアが張ってあるわ。魔法攻撃を自動で避けさせるバリアだからどんなに魔法を撃っても無意味ね。」
くそ……!そうなのか…!
「ではわたくしは見学してますね。ケヒヒヒヒ!」
(バサッバサッ)
「ハ…イ…ジョ!!」
ゴーレムもこちらに気づいて近づいてきた。戦うしか無いか…
「2人とも!もう戦う以外なさそうだ!協力して戦うぞ!」
「「了解!!」」
2人は一度後ろに下がってもらい、俺が前に出る。
「よーし!俺のスキルを使う時がきた![大地スキル]![地割](じわれ)!」
すると全身にエネルギーを感じた。この[地割]という技はさっき歩いている時に考えた即興技で、使うのは初めてだ。体の底から湧き上がってくるこのエネルギーはジライゲンと戦っている時にも感じた。これが大地の力なのだと実感する……!このまま拳に力を溜めて地面を勢いよく殴れば……!
ゴン
「…………いてぇーーー!!!?」
地面は割れないし、痛みもあった。あれ?おかしいな?痛いのは分かってたけど割れないだと?割れる想定してたんだけど……
「おりゃー!!(ゴン)いてぇーーー!!!?」
「何やってんだよ!!?」
大地スキルあるのにジライゲンみたいな技は使えないのか?
「ケイゴ!スキル欄を確認して!スキルに書いてあることしか使えないのよ!」
「そうなの!?よーし……大地スキルの技……足突起……以上。」
足突起ってあのジライゲンの足の裏にあった突起?それだけ?嘘だろ?
「ハ、イ、ジョ!!」
ドォン!!
流石にゴーレムも待ちきれなくなったのか近くの地面に拳を打ちつけ、ひびを入れた。
「うわっ!あぶねっ!」
こいつこそ大地スキル使ってやがる。意外と重そうな体してるくせに攻撃速度は速かった。あれを喰らったら致命傷だ。
「[逃走本能]!はっ!」
からの
「[モンスター使い]!!仲間になれ!」
モンスター使いのスキル説明を見たところ、人間の言葉を話さない魔物である事と、自分よりレベルが低い事が条件で、仲間になるらしい。ただゴーレムは明らかにレベルが高いのと、さっきからハイジョって言葉を話してるから無意味だった。
「ならこれはどうだ![ナイフ]……って俺が持ってるの剣だった!!」
「さっきから何やってんだよ!俺がやる!」
見てられなくなったのかキースはナイフを構えて走り、ゴーレムにナイフを当てた。しかし、(カキン)
「ちっ、やっぱりだめか…」
ジライゲンの時と同じように硬い体にナイフは無効だった。
「くっそ!でも俺らだけだったら勝てなかった!ミラン!頼む!どんな魔法でもいいから撃ってくれ!」
「分かったわ!はぁーーー!!!」
(キラリン)(ピュウン)
「………!?ゴガガガガ…!」
ミランの杖から光のレーザーが飛び出て、ゴーレムの体を貫通した。そしてゴーレムの体が動かなくなった。
「え?倒したの?」
「そうみたい…」
「すんげえ!」
ゴーレムは体を少しも動かさなくなった。
少し遠くで見ていたラウヴァンは
(「おやおや、ゴーレムの体を貫通させるとは…あの魔法使いやりますねえ、ですが!ケヒヒヒ!」)
「あっ!そういえばゴーレムの体の中には珍しい鉱石が入ってるんだってよ!俺が採ってみるな。」
キースがゴーレムの前に立った。その時、ゴーレムの目が光った。
「あっ!?キース!危ねぇ!」
(ドォン!!)
キースがゴーレムの攻撃によって吹き飛ばされ、近くの木に全身を強打した。
「ぐはぁっ!」
「キース!!大丈夫か!?」
「あ、ああ、背中の骨が痛いくらいだ。だけど、もう歩けねー。」
「ゴーレムの体が消滅してないってことはやられてなかったからだったのか。」
「またゴーレムが動き出したわ…」
「グゴゴゴゴ……ハ、イ、ジョ!ハ、イ、ジョ!」
キースは動けそうにないし、俺は攻撃手段がない。ミランの攻撃はダメージは入るが致命傷にはならない。ゴーレムの弱点は何なんだ……
「野生ではゴーレムを見たことないから対処法が分からないわね……」
「?野生ではってどういう事?」
「ゴーレムは人間が生成するか召喚するかしないと出現しないのよ。だからゴーレム召喚するやつもあまり見た事がないの。たしか王都の周りには昔王都を守るために作ったゴーレムがいるらしいけどね。まぁ常に魔力を補充してないと動かないけど。」
「………!まさか!よしミラン!キースを守りながらゴーレムを足止めしといてくれ!」
「はぁ!?私が足止め!?無理よ!!キースを守りながらなんて!!」
「任せたぞ!!」
俺は近くに見える山に走って行った。
「ケイゴはどこに……私はどうすれば…」
「ミラン…!」
「?…何?」
「ケイゴに任せられたら…ひとまずやってみろ…!ケイゴを信じるんだ……あいつなら…勝てる方法を見つけてくれる……」
キースは一度ケイゴの作戦に救われている。ケイゴに信頼を置いていた。
「………」
(「いや俺だって自分のスキル探り探りだし。何よりミランの[乱魔法]ってスキル強くね?ポジティブに考えたらどんな魔法も軽い魔力で撃てるんだろ?運ゲー要素強いけど俺は羨ましいなー。」)
ミランはさっきケイゴが自分に投げかけてくれた言葉を思い出した……。あんな風に自分の強みを言ってくれた人は今まで1人もいなかった。そんな人の期待を蔑ろにはできない。
「……分かったわ!あんたを守りながら戦ってやるわよ!もしゴーレムを倒せたら、新しい杖買ってね!!さっきヒビが入ったから!」
「杖?りょ、了解(杖って一本買うのに1万Gくらいした気がするな……ぐっ)」
――
はぁっ、はぁっ、早く!ミランとキースがゴーレムを止めてくれている間に!急げ!俺の足!!
あいつは俺がやる……!

2-3  完

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