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いい風の日は、くるくるまわる [エッセイ]

日曜日。

私は当麻町の実家の畑でくるくる回っていた。

真夏のように暑い日が続いた後、急に11度くらいまでしか上がらない雨とくもりの日が続いて(北海道の一部では雪も降ったそうな…)、寒いとたくさん着込んで体も丸まっちゃうし、しゃきっとしない。

だから土曜日の畑仕事、どうもノらなくて。

(暑いのはしんどいけど、やっぱりハウスはくもってドヨーンとしているより、汗が噴き出して止まらないくらいの方がいいな)

父親が自由にしていていいよと言うので、高校生まで使っていた部屋の片づけなんかをしていた。本や当時描いた絵や小説ばっかり見入っちゃって、ちっとも進みやしないのだけど。

実家に泊まって、翌日、日曜日。

9時くらいからやっと、雲が切れだして、強い陽ざしが降り注ぎ始めた。

空は高く青く、緑はくっきりと鮮やかで、みずみずしい。

私はこの日、サヤエンドウのつるがからんで上に伸びていくための支えを作ったり、菜っ葉がたくさん植えてあるハウスのわきの草取りをしていた。

私はこの日、サヤエンドウのつるがからんで上に伸びていくための支えを作ったり、菜っ葉がたくさん植えてあるハウスのわきの草取りをしていた。

ちょっとでも陽がさすとハウスの中はぐんと熱くなる。額に湧き出る汗をタオルでふきながら、雑草を抜く。ちぎる。オオバコ、ハコベ、クローバー、ツユクサ…

両ひざをついて頭を垂れて雑草を抜き続けていると、草刈機の手をとめた父が「間あけてやれよ~」と声を張り上げてくる。

「はーい」と言ってちょっと草をとって、ふと立ち上がって、ハウスの横から外に出た。

ハウスがどんなに暑くても、外に出れば20度ないくらい。

とてつもなく爽やかな風が吹き抜けて、汗で湿った額を風にさらしたくて、私はおもむろに、その場でくるくる回りだしていた。

回転して、風が吹いてくる方向をおでこでキャッチして、しばらくその場に突っ立つ。

ハウスとハウスを結ぶ道を歩く時も。田んぼの急斜面の畔を登った時も。

おでこをアンテナに、くるっと回って風がやってくる方を探す。

こんなに気持ちいい風が吹く、この土地が、大好きだ。

大好きだ、と書いてみて、涙が出そうになるのは、この自然に包まれて感じるのは、幸福感だけではないからなんだろう。

……とにかく。

畑にいい風が吹く日は、私は風見鶏のごとくくるくる回って、汗でべちゃべちゃのおでこで風をキャッチしています。


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