私が話す時に心掛けているたった一つのコツ


今日は「相手に伝わる話し方」についてお話してみたいと思います。

私は身体の専門家として、10年以上前から講演やセミナー、
そういった場所でお話をする機会が多くありました。

他にも雑誌のインタビューなど、
相手にお話をするシチュエーションに恵まれてきたのですが、
せっかく話しても、ちゃんと伝わっていなければもったいないですよね。

私が人前でお話をするときに、心に決めていることが一つだけあります。

それができているときと、うっかり逸れてしまったときでは、
相手への伝わり方が大きく異なります。

私は決して話が上手い方ではないのですが、
私の心がけが皆さんに少しでもお役に立てば嬉しいです。

私が独立した当初から来てくださっていたお客様の中に、
スーパー講演家がいらっしゃいました。

全国のセミナーや講演に引っ張りだこで、
本を何冊も出されている「伝説の営業マン」と呼ばれる方です。

武士のような日本の男魂、そんな風格のある素敵なおじさまでした。

そして私にも講演という依頼が来たとき、
やはり未経験ですし、とても緊張するし不安でした。

だからそのお客様に、
「いつも悠々と講演をされていると思いますが、
どうしてそんなふうにできるのですか?」
と聞いてみました。

そしたらその方がこうおっしゃったんです。

「いい話をしよう、なんて思ったら失敗しやすい。
うまく喋りたい、そう思ったら頭が真っ白になることもある。
これだけを覚えておけばいい。
今日の話で何を自分が伝えたいか。
それだけを、ステージに立つ前にもう一度思い出すんだ。
そうしたら、もし頭が真っ白になっても、
自分が今日伝えたいことを思い出せば、ちゃんと相手に伝わる話はできる。
みんなそこを忘れたり、すっ飛ばしちゃったりするんだよな。」
と。

私は人生初めての講演の前にそのコツを聞かせてもらえたので、
念仏のように今日伝えたいことを唱えてからステージに立ちました。

そうしたら確かに、初めてにしては伝わる話ができました。

聞いてくださった方々からも、話がうまいと言われました。

例えばこんな感じです。

講演の依頼が
「20〜30代の女性たちにバストについてお話をしてほしい」だとしたら、
「バストケアをすることの魅力を知ってほしい」、
これを今日伝えたいこととして心の中心におきます。

そうすると、もし途中で話が脱線したり、
何を言っているのか自分でわからなくなったりしても、
参加している女性たちにバストケアをすることの魅力を分かってほしい
という目的に立ち返ることができます。

こんなご依頼のときもありました。

10月、ピンクリボン月間で、
乳がんの早期発見についての講演をやりたいのですが、
お医者さんだとテーマが暗く怖く思われがちなので、
朝井さんからポジティブにバストケアについてお話をしてほしい。

このとき私からは「バストケアが命磨きになる」、
そこに話の中心軸を置き続けながら
バストケアの魅力についてお伝えをしました。

その講演は、終了後のサイン会に長蛇の列ができたほど大盛況で、
しかも翌日には予定になかった地域の新聞にまで特集されました。

そのくらい、かなり反響が大きかったです。
でもこんな失敗ケースもあります。

講演に慣れてくると、あれもこれも伝えたいと欲をかいて、
話をてんこ盛りにしてしまう癖が出てきます。

そうなると、ひとつひとつは実のある話をしているつもりなのですが、
議題が多すぎて聞いている側に伝わらない。

これを私は結構やってしまいます。

書籍の中や、資料を用意できる学校のような講座であれば、
沢山の議題があってもいいかもしれませんが、
1回きりの講演だと聞いている方はつらいですよね。

そして話している私の方でも、何を中心に伝えたいかに
ぶれが生じてしまうので、結果的にしっくりこない、
そういった後味の悪い講演会になってしまうケースもありました。

なので、人前で話すときや人にものを伝えるときは、
シンプルで大きなテーマを心に置く。

それが人に伝わる話し方なんじゃないかなと思います。

これは講演やセミナーに限った話ではなく、
日常会話でも使える技だと思います。

例えば仕事のミーティング。

自分の頭の中でもまだ漠然としているときや、
今日は上手く伝えられないな、
まだ自分の頭の中で全然まとまっていないし答えが出ていないな、
そういうときでも、まずは大きなテーマを掲げます。

それについて議題が3つあったとしたら、まず相手に
「今回はこれについて、そして、これにまつわる1、2、3のことについて
お話をしたいんだ。」
と、先にお伝えします。

そうすると、ひとつひとつを上手く話せなかったり
オチのない話になったりしても、自分の中でも、
1つ目の議題について話したから2つ目の議題に行こう、
そういったけじめがつけられます。

そして相手も、今1つ目について話されたから次は2つ目なんだな、
もう1つ言いたいことがあるんだな、
そうやって順序よく頭で切り分けながら聞いてもらうことができるので、
話したいテーマの大枠を掲げた上で
小見出しをいくつか明確に提示するというのは日常会話でも使える
のではないでしょうか?

プライベートでもこんな使い方ができますよね。

パートナーや家族と大げんかをしたとします。

気持ちの中心は仲直りがしたい。

だけど、伝えたいことやリクエストがいくつかある。

そういったときに、漠然と自分の希望だけを話していくと、
また喧嘩になったり言いたいことが伝わらなかったり、
そういった逆効果になってしまうことも多々あるかと思います。

だから、「仲直りをしたい」を心の中心に置きながら話をすると、
うっかり強気になったり、喧嘩がぶり返しそうになったりしても、
仲直りをしたいという主軸に立ち返ることができます。

最近、私は2歳の息子にこれをやっています。

朝から寝る前まではバタバタしていて、
日常会話をいい加減に済ませがちです。

「ほら、時間だから行くよ!」とか、
「何をやっているの!」とか、まくしたててしまいます。

まだまだボキャブラリーが少ないし、
言語能力も発達の初期の初期なので、
私との会話はニュアンスでなんとなくわかっているとは思うのですが、
言語としては伝わっていないと思います。

夜寝る前に絵本をいつも読むのですが、
読みながら寝てしまうので、絵本に入る直前にギュッと抱きしめて、
そして1日を振り返る、そういった会話をするようにしています。

朝はこんなことがあったね。

昼間はこういうところに行ったね。

今日はこんな初めてのことがあったね。

そうやって1日を振り返りながら、
息子の記憶と心にアクセスしているのですが、
このとき会話の内容はどうでもいいのです。

私の心の中心軸は、
「どれだけあなたのことが大好きか」を伝えることです。

でも、そういう気持ちでいると不思議で、
いつもはワーキャー言ってふざけて、
落ち着いて私の話を聞けない息子なのですが、
そのときばかりはじっと抱っこされて、
とても嬉しそうに穏やかに私の話を聞き続けてくれるんです。

だからこれは、いつになく伝わっていると感じる瞬間です。

このような感じで、
シチュエーションや相手に関わらず、
心の中心に伝えたいことをしっかり置いておく。

この話し方は意外と使えると思うので、ぜひ試してみてください。

▼音声で聴きたい方はこちら


(2022年9月21日配信分)

「緩和ケア」と「産後ケア」。一見対極な存在と見られがちですが、両方を経験しそれらは近い存在であり、両方の重要性を心から訴えたい。これらの在り方捉え方の啓蒙、それらにお役に立てる活動をすることが私の将来の目標です。頂いたサポートはそのために使わせて頂きます!