見出し画像

身体の動きを学んでみる3;筋力について(9)〜筋パワーとは?

前回は物理学の復習みたいになってしまいましたが、
今回は生理学の勉強になります。
また勉強かよ!と言わずも少しお付き合いください。

筋肉が発する力と速度、
そしてパワーとの関係について説明したいと思います。

筋パワーとは何か?

筋パワーとは、筋肉が発する力と(収縮)速度を
掛け合わせたものです。
すなわち、
筋パワー = 筋力 × 筋の収縮速度
この式からわかることは同じ筋パワーであれば、
力と速度の関係は反比例するということです。
どういうことでしょうか?下のグラフを見てください。

筋の力ー速度曲線と筋パワー

赤い線で描いた部分をみると、
筋力が大きくなるに従い、速度は減少していきます。
その逆に、速度が増大するほど力は少なくなります。
これは一見イメージと異なるような気もします。

力を出せば出すほどスピードも上がるような感覚ですが、
実際は筋肉の収縮速度に関して言えば、
スピードを増す瞬間(収縮しはじめ)は発する力は少なく、
収縮速度が減るつまり収縮の後半には強い力を発する、
ということになります。

スピードというと、腕や脚が動く速さをイメージしてしまうので、
ちょっとピンと来なかったのだと思います。
その辺がなんの速度か?というところで分かりにくくなっていて、
誤解が生じやすいところです(後述;注釈にて)。
先ほどのグラフの速度はあくまで筋肉の収縮速度を指します。

最大筋パワー

もう一度先ほどのグラフを見てください。
青い線で描いた部分です。

筋の力ー速度曲線と筋パワー

これは筋パワーの値をおおむね、なぞったものになっています。

逆 U 字型 / 山型になっていますね。
つまり、
筋力が増すのにともない、筋パワーは増加していき、
大体最大筋力の 1 / 3 くらいでピークを迎え、
それ以上の筋力では減少していきます。
このグラフが示すこととは何でしょう?後述します。

注)一般的に使う最大筋力の定義は、
随意性最大筋力(意識して出せる最大の筋力)のことを指します。
これは筋力を出す個体(個人)の状況によって、
一定でないことがあります。
その時の気分や、掛け声などの有無、疲労の度合いなどによって
異なる値を示しやすく、抑制がかかりやすい状況です。
ですから、
実験的には電気刺激などを与えて、随意的ではない(抑制がかからない)
状態で最大値を引き出す場合もあります。

筋パワーとは筋肉が行う仕事の効率

ここで仕事という言葉が再び出てきましたね。
仕事とは、前回 説明しました。
そして、
パワーとは一定時間内で行った仕事、
いわば仕事の効率です(仕事率とも言います)。

というわけで、
筋パワーとは筋肉が行った一定時間あたりの仕事となります。
言い換えれば、筋肉が行う仕事の効率です。

最大の筋パワーは、力もスピードのそこそこのところで得られる   という事実

筋の力ー速度曲線と筋パワー

先ほどのグラフの青い線をもう一回見てください。
筋パワーが最大ということは、最も効率よく仕事をすることです。
その時の筋力最大筋力ではなく、その1 / 3 くらいの力ということです。
これはとても面白い現象で、力はそんなに出さなくとも
最大の仕事効率が得られるということです。

ちなみに、最大筋パワーの時、
スピードもほぼ最大の 1 / 3 くらいのところにあります。

つまり、
大体 1 / 3 くらいの力とスピードがあれば、
最大の仕事効率が得られるということになります。

パワーアップに必要なのは力か?スピードか?

よくパワー・トレーニングという言葉を
使うことがあると思いますが、言葉のイメージからすると
何か力強さ、すなわち力を重視したトレーニングのようですが・・・

パワー = 力 × 速度
という式からすると、
力をアップさせても良し、スピードを重視しても良し
ということになります。

注)ここでいうスピードとは、動きの速さをイメージしています。

具体的に言えば、
重い負荷を与える筋力 (strength) 重視のトレーニングでも良いし、
軽い負荷で素早く動かすトレーニングでも良い、
となります。

効率の良さを考慮すれば、
最大持ち上げられる重さの大体 1 / 3 くらいのおもりを持って動かす、
というのが最大パワーを鍛えるには良いとも言えそうです。

注)スピードという言葉に関して;
筋の収縮速度と、実際に(関節が)動く速度とは、
必ずしも一致しないので、この辺を並行して使っている
(前半部分は筋肉の収縮速度、
 後半部分はトレーニング時の動く速さ、として使用)
ことをお断りしておきます。

いかがでしたでしょうか?
日頃よく使う( 筋 ) 力パワースピード
という言葉のイメージが少しでも正確に伝わったならば、
幸いです。

次回はまた少しややこしくなりますが、
筋繊維の種類とそれぞれの特徴について解説したいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ではまた次回に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?