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桜橋

大学1年の時に親と喧嘩した勢いで一人暮らしを始めてから、引越しの回数は両手を超えた。振り返ってみると3年以上住んだ場所には共通点がある。桜の名所にほど近いのだ。

意識しているわけではないけど、気がつけばそばにある。中目黒に13年住んだ後、「半蔵門線(not東武線)の駅から徒歩圏、猫が飼える、2LDK/3階以上」の条件で紹介された今の住まいも、ベランダから外をみると隅田川の桜があった。

家から一番近い桜橋は、X字型の個性的なフォルムの橋だ。隅田川テラスの遊歩道からそのままつながる橋なので、人と自転車しか通れない。車が通れないのでGoogle Mapがゼンリンと契約を切ったら一度地図から消えてしまったという笑い話がある。

桜の季節は両岸の桜並木をつなぐ橋になり、地元の町会が仕切る「桜まつり」のメインステージが設置される。隅田川花火大会では打ち上げの第一会場になり、真上に大きな火の花が咲く。桜橋は立ち入り禁止になるけど、東に伸びる「桜橋通り」は、第一会場の花火が真正面に見える特等席になる。

でも普段の桜橋は何の変哲もない、美しい橋だ。車が通らないので犬の散歩コースとして良いらしく、夏の暑い時期は暗いうちから賑わっているそうだ。犬を連れていない人も橋を渡っていく。私も歩いて川を渡る時は、理由もなく下流の言問橋よりも桜橋を選んでいることに最近気づいた。

桜橋を渡り始めて、今年で10年め。あと3年で目黒川の桜よりも隅田川の桜の方が長いつきあいになる。中目黒は店の新陳代謝が激しい場所だったけれど、桜橋通りのあんみつ屋とパン屋と金曜の夜しか営業しないコーヒー屋は、3年後にもお気に入りの店のままでいてくれそうで、良い街に住めたと思っている。

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