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ちおり

私は友達が少ない。

小学生から続く唯一の友達がちおり。

と言っても小学生の頃はあんまり好きじゃない子と一緒にいる地味な子、という印象しかなかった。
かなり遠い、興味のない対象。

中学に入って初めてクラスが一緒になりなんとなく仲良くなった。

みんなが恋愛のことばっかり考えるようになりドロドロとした空気が蔓延する中でちおりは色恋からキッパリと距離を取り、みんなに適度に可愛がられるペットのようなポジションを取り続けていた。

戦略的に舐められにいっていたのだ。今思えば。
それは成功し、順繰りに対象を変える女子の陰湿な無視といういじめから上手く逃げていた。

対照的に私は悪目立ちもいいところ。

誰かの好きな人が私のことを好き、という事で全員に長らく無視されたりブスな先輩に呼び出しをくらったりしていた。

おままごとのような、だいたい3ヶ月スパンで入れ替わる恋愛事情と妬み嫉みの醜さにうんざりしていた私はその嫌悪感をあからさまに態度に出した。
そりゃ、嫌われる。

私は一人になった。
女子のムードを察知した男子も話しかけてこなくなった。
よくある中学校の風景だ。

そんな中、気づけば横にちおりがいた。

私に近づくのはかなりリスキーだった時に、本当に犬のような何気なさでそこにいた。
全方位を意識して、誰の反感も買わないように、
え?何が?え?
みたいなキョトン顔をキメながら。

私にとってはあまり振り返りたくない時期だけど、大人になってから一度だけ当時のことを話したことがある。
やはり彼女はキョトン顔で私のことを世渡りが下手でバカだなーと思っていたという。

そして、私の態度に心底共感していた、とも。

学年中の嫌われ者になった私はそれと引き換えに生涯の友を得たのだった。

昔より多少世渡りできるようになったけれど、本心ではそのような友達以外はいらないと今でも思っている。

誰にも理解されないと孤独を感じていても、どこかで誰かが見ている。
それは予期せぬ時に予期せぬ方向から現れる。

「私がどこまでも私なら あなたは私に気づくはず」
これはそんな中学の頃出会った銀色夏生の詩。

不器用でも、自分らしく生きていればいいと思うよ。






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