好きな人のはなし
新しい職場では私を含め女性3人のチームで同じ業務を行っている。
覚える事もたくさんある中で仕事量も膨大、かつ日々更新されていくため毎日必死で周りの人の顔もろくに見る余裕がない。
そんな私の横でベテランの女性Aが呟く。
「ケンティに似てる!」
「はぁぁ、かっこよ…」
あまりにも自分とのモードの違いに一瞬何を言っているか分からなかったし、アイドルにも疎いのでケンティもどんな顔だか分からなかった。
ケンティ似の新入社員やイケメン部長が通るたびに彼女は
「はぁ」
とうっとりしている。
ケンティは若すぎて全然ピンとこないけどイケメン部長の事なら頭では理解できる。
初対面でイケメンですね。と思ったから。
「えっ?かっこよくないですか??」
と彼女に問い詰められて自分が何故イケメンですね、と思いつつ彼女のように素直にうっとりしないのかという問いに直面した。
私はイケメンを信用していないらしい。
はなから嫌なやつ認定している。
ママ友の旦那さんで、若手俳優みたいな人がいた。
絶対浮気しまくってるんだろうな、と決めつけていたけど全くそんなタイプではないと知った時には脳がバグった。
私は謎の偏見でイケメン差別をしながら生きてきた。
そして別にタイプでも何でもない人と付き合って傷付けられたりしてきた。
何故こんなに無駄にひねくれているんだろう。
あまりにもイケメンに素直な彼女に出会って考えさせられてしまった。
ちなみに女性Bは私と全く同じタイプだった。
2人でお弁当を食べながら
「だってイケメン怖いよねぇ…」
と空虚に呟く。
私たち、これで幸せになれるんだろうか。
女性Aはいつか溜息が出る程のイケメンを捕まえることができるかもしれない。
そしてそのイケメンが私の偏見通り何股もしていたとしても彼女は後悔しないかもしれない。
だってイケメンだから最初から想定の範囲内。
私の推しを問い詰められて、真剣に社内を見渡し1人見つけた。
彼は落ちていた使用済みのマスクを拾って持ち主をみんなに尋ねたところ何の返答も得られなかった時に
「じゃあ、僕が使いますねぇ」
と言ってみんなの笑いを誘った人。
あの人いま、面白い事言った!
と感心したのを思い出した。
でも顔の印象がまるでない。
女性Aに話すと、普通はそのパターンはただの面白い人止まりらしい。
何故?
素晴らしい機転とサービス精神と強さがあるのに。
「それって、別に恋愛じゃなくてもよくない?」
と前に地元の親友に突っ込まれた事を今思い出した。
なにそれ。
そうなのか?
私、尊敬と恋愛を間違えてきたのか?
こんな歳で今さら考えたくもない大きな問い。
みなさんはどうですか?
好きって何?
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