ピアノを始めて三ヶ月、今日は偶然にもグランドピアノをさわる機会に恵まれた。普段はMIDI鍵盤をiPadにつないでアプリを鳴らしているため、ヘッドホンをつけられず（分岐ケーブルを買えばいいだけなのだが）、隣の部屋に気をつかって小さな音で弾いている。どうなるかといえば、鍵盤を叩く音の方がカチャカチャと耳障りなのだ。

　グランドピアノだ。鍵盤は重くなめらかで、適度な反発力があるものの、内部機構の重さで沈み込む感覚が心地良い。音も低音は腹に響き高音は高く遠くまで伸びていく。三ヶ月前に「ピアノを弾こう」と思わなければ、今日さわることもできなかった。練習している曲や、おぼえている循環コード、コードに連なる単音をつらつらと弾く、なにかのメロディに聴こえるような、そうでないような。

　こういうことがあるのだ、何事も始めて遅いということはない。