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プロポーズを断った話

結婚を前提に、お付き合いしてくれませんか?


……え、早くない?

23歳の夏
わたしは、善意ある申し出をお断りした。


相手の方は、3つくらい歳上だった。
職場の先輩に、無理やりつれていかされた合コンで出会った人、消防士。

2年くらい付き合って結婚することから逆算すると、もうこれくらいの年齢からこういう話が出てくるんだろう。

でも、わたしには、まったく想像がつかなかった。

付き合ったら、もう結婚を視野にいれないといけないの?
遊びたいわけじゃないけど、でも早すぎない?
だいたい、この人のこと、まだそんなに知らないんだけど。
変な性癖があったらどうしよう〜
消防士と看護師、絶対生活がすれ違うよね。


……断ろう。
でも、どうやって?

これまで、習い事も受験も自分で選んできたという自負があった。
同世代と比べて、意思決定力はあるほうだと思っていた。

けれども、断るという意思決定はしたことがことがなかった。
そちら側を選ばないという意思表示だけではなく、そちら側を拒否するということを。

できるだけ相手を傷つけないように
でも、わたしの主張に嘘がないように
慎重に言葉を選ぶ。
心のMPが砂時計のように削られていく。

・あなたのことが嫌いではないこと
・付き合う前から結婚の話をされてびっくりしたこと
・もし、しばらく付き合ってダメになったら、あなたの貴重な時間を奪うことになってしまうこと
・正直、仕事がおもしろくなってきたから、付き合うとか結婚についての優先順位が自ずと低くなってしまうだろうこと

どうやって伝えたか覚えていないけれど、うまくいった感触はゼロだった。
その日を境に、彼と連絡をとることはなくなったからまぁ、そういうことだ。

それから、いろいろ考える。

日本以外の国では、NOと伝える練習をする機会があるのだろうか。
わたしの覚えている限り、NOと伝えることを考えたのはあれがはじめてで、学校でもコミュニティでもそういう機会はなかった。

練習してきてないんだもの、そりゃいきなり本番なんてムリだよ!と、うまく伝えられなかったことを教育のせいにした記憶がある。

嫌よ嫌よも好きのうち、なんて言葉があるくらいだからね、この国は。
NOと言えない日本人、そのままじゃないかと自虐的に振り返ったりもした。

ただ、日本でもNOと言わなくちゃいけない機会は、世界と同じようにある。

別れたい
仕事を辞めたい
飲み会、行きたくない
子ども、産みたくない
義理のお父さんの介護、したくない

社会で生きていくためには、選択するだけではダメなのだ。
選択したことを伝わるように、齟齬のないように主張するというスキルが必要だと、わたしはあの時はじめて知った。

健全な関係性を築くには対話が必要だという話もあるけど、あれもそうだ。

対話の前には、相手を尊重しつつも自分の主張を伝えるためのコミュニケーションスキルが必要だし、その前には自分の選択や意見がクリアになっていないといけない。

ひとがひとと関わり合いながら生きていくって、ほんと難しい。
けれど、難しいからこそ通じ合ったときの喜びはひとしおなんだろう。


わたしのあのときの選択が、わたしだけでなく、彼のためにもなっていることを心から願う。


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