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野鳥観察|Oystercatcher|空は繋がってる

スコットランドのノースベリック(North Berwick)は海鳥にたくさん出会える街。

カモメやウはもちろん、例えばアジサシ、カツオドリ、パフィンみたいな「実物を見たことはなかったけど絵本の挿絵とかで和名を知っている」ような鳥もいるし、

Guillemot(ウミガラス)、Razorbill(オオハシウミガラス)、Eider Duck(ホンケワタガモ)みたいな、ここで初めて知って英語から覚えた鳥もいる。


その中で、ひときわ目を引く鳥がいた。

シギ・チドリの仲間だとわかる表情と歩き方に、独特の赤い目とオレンジ色の嘴が鮮やかだ。現地の図鑑で調べてみると、Oystercatcher、オイスターキャッチャーという。カキみたいな貝類を主食にしているんだろうか、覚えやすい名前である。

海岸の岩場を一羽で、あるいは数羽で連れ立って歩いており、人間が近くにいてもあまり警戒しない。

かといってやっと人影に気づくと、「キュピー」と鳴いてフワフワ飛んでいく。逃げると言っても、元いた場所から5メートルも離れていない。

こんな派手な鳥がいるなんて、『雨の多い北国』イギリスといえどさすが海外だなあ。なんて感心していた。最初は珍しがっていたけど、この海岸に行くといつでも会えるので、いつしか当たり前の風景になった。
そうやってOystercatherは私の頭に「イギリスの鳥」としてスコットランドの海の景色とともに強くインプットされたのである。


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8月末に帰国したあとは、生物の知識をアップデートしようと「生物分類技能検定」という民間の資格試験に取り組んだ。主に日本に住む生物(外来種含む)を対象にした試験である。そこで初めて、ウとカツオドリが近縁で(ともにカツオドリ目)、シギはチドリの下位分類で(チドリ目シギ科)、スズメ目の仲間はやたらとたくさんいることを知った。

チドリ目を勉強している時に、灰褐色の似たような種類が並ぶ中で、見慣れた鳥を見つけた。赤い嘴、黒い体、Oystercatcherである。だけどその名前はこうあった。
「ミヤコドリ」

チドリ目ミヤコドリ科、ミヤコドリ。

都鳥…その響きはどこかで聞いたことのあるような、だけどもっと日本に馴染み深そうな鳥を想起した(事実、東京湾によくいるユリカモメを俗に都鳥ということがあったらしい)。
Oystercatcher、君だったのか。日本にもいたなんて。冬限定みたいだけど。


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鳥をよく知る人ならばサムネイルを見ただけで「ミヤコドリやん」とわかったのだろうけど、元々知らなかった身としては、外国で出会った綺麗な鳥が日本でも親しまれ、「ミヤコドリ」という懐かしい感じの名前を付けられていることが面白い。世界が繋がった感覚。と同時に、同じ種が9時間離れた2つの島国にそれぞれ存在することに驚いた。いや、両国で見られる鳥なんて他にもいるんだけど。

考えてみれば、鳥には翼がある。広く生物を見渡しても、鳥は人や爬虫類や両生類と比べて自力でどこまででもいくけど、それは飛べるからだ。鳥に国境はない。山や谷や海があっても、空さえあれば移動できる*。圧倒的自由。そこに鳥の面白さがある。

イギリスと日本のミヤコドリのおかげで、鳥の本質的なユニークさに改めて思い至った。

キュピー

*もちろん、大移動は大変な危険を伴うし、移動せずにインドアを選ぶ鳥もいる。飛ぶのが鳥のアドバンテージならば、飛ばない鳥、飛べたとしても移動しない鳥もまた面白い存在だ。


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