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ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第十五話「邁進」

自分の出来上がり不足の状態を各々が認識し、このままではヤバイと焦り出した。

特に、なかなか稽古に参加出来なかった粒ちゃん、いぶき、たっちゃん達は、稽古の絶対量の少なさが、比例して不安を増幅させていただろう事は想像が付く。

この時点で、既にベティ役のなほと個人練習を始めていたパティ役の粒ちゃんはまだしも、稽古終盤で突然台本を見ない様に言われたラファエル役のいぶきとロバート役のたっちゃんは相当なプレッシャーを感じた筈だ。

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台詞の覚え込みと言う事とはまた別に、練度の不足は、照れや自意識の壁を乗り越える為の手順不足ともなる。これ迄の数ヶ月間の経験で言っても、自我を取っ払う前とその後では演者の様は全く異なる。
羞恥心などと言うものは、自らにかました足枷に過ぎず、他人から見たら意味を為さないものだと早々に気付く事が、演じる事に没入する早道なのだ。

それにしても、この時一番ヒヤリとしていたのは、恐らく他でも無い王子だったのではないか。
残り三回の稽古で果たして仕上がるのか。

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しかし、ここから巻き返しが始まった。
いぶきは、次の稽古では完璧と言える程に台詞や段取りを頭に入れてやって来た。見事なリベンジャーに皆が賞賛を与えた。特にカイトが演じるトニーとの夫婦の会話の場面は見違えた。二人の夫婦感も当然に増したものとなったのだ。

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クリスマスキャロルのスレッドに、各人、若しくは数人集まっての自主練の模様が次々と投稿され出した。

皆、乗り切る気でいるのだ。
こうなればトップギアで突っ走るのみ。

たっちゃんは、最後の最後に参加したキャストだった。
端っから分が悪い上に、なかなか稽古への参加もままならなかったのが彼だ。

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のんちゃんと同様にマイルド人材であるたっちゃんは、激しめの演技や感情の起伏の表現などにまだまだ惑いが見えていた。
(続く)

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