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ミュージカル HIU版 クリスマスキャロル ドキュメント 第十一話「界境」

なお、僅かワンシーンのみの出番ではあるが、大天使ミカエルのくだりは、ファンタジー或いは異常な世界へと誘う導入部であり、この物語の大きな分岐点となっている。
御本家である堀江さんのクリスマスキャロルに於いて、作・音楽・演出を務めた湯澤 幸一郎さんがその歌唱力を遺憾無く発揮し、劇中随一の迫力を見せ付けた重要なシーンだ。
歌唱パートとして捉えても、劇中で最も難易度が高い。
それが逡巡を生む。

我らのHIU版 クリスマスキャロルにて、その大天使ミカエルを演じるのは、38歳としか思えないのに実は16歳のRyo Tanakaだ。
低音の声圧が魅力の彼にとっての最大の見せ場となるのだが、その分プレッシャーも大きい。


どう歌い切る・・・?
彼は稽古終盤時に於いても未だ悩まされ続けていた。
しかし、彼のキャスティングに間違いは無かったと俺は思っていたし、恐らく関わった全員も同じ考えに違いない。
稽古では、迷いや踏ん切りのつかなさを見せていたRyo Tanakaだったが、本番では細かいミスを重ねつつも投げ出す事無く大役を果たしてくれた。

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ミカエルに続いて登場するセインのガブリエル、いぶきのラファエル、あすみんのウリエルらの天使達にしても、異形の存在故に通常人とは異なるメンタリティー等をどう演じたものか。
そんな風に、それぞれ考えあぐねる様子も見て取れていたが、各々が想った様にキャラクターを作り上げ、且つ、良くぞ楽しそうに演じ切ったものだと今更ながらに思うのだ。

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12月28日。立ち稽古の二回目から俺は台本を見るのを止めた。
タブレットを手にしていると、どうしても動きに制動を掛けてしまう。極端に言ってしまえば棒立ちだ。
また、手元に眼が行っている為に、観客へのアピールと言うものを意識することがいつ迄経っても出来ない事となる。それらは自ら枷を嵌めているに等しい。
俺は、演じる上でもっと自由を得たいと思ったのだ。
(続く)


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