かげふみ12

茜色に、照らされた父はいつもと変わらぬ父の顔だった。

しかし、、先程の、激しい闘いの一部始終を目前で見てしまった私は、頭が混乱状態にあった。
何か大変な事に巻き込まれたのは間違いない。沈黙は、時間とともに日没を迎えた夜の闇に、私を溶かしてしまいそうだった。

「2人でそんなところに突っ立ってないで、早くお骨を集めて家に帰りましょ。役所の人があとはちゃんとお寺に持って行ってくれるそうよ。だから、話は家に帰ってから、ほら2人とも早く! 」

母に促され、お骨を集めて骨壷に納めた。骨壷に入れる度涙が零れる。

役所の人にお骨を預け、帰路につく。

帰り着く頃には、どっぷり日が暮れていた。

夕食は、コンビニで、弁当を買い、簡単に済ませる。その間も父の様子を伺うが、普段と変わらぬ父の顔だった。

弁当を食べ終わり、母がコーヒーを入れる。
私は、意を決して言葉を発した。

「あの、火葬場での出来事。あれはどういうことなの?それから父さんがアンドロイドってどういう事?」単刀直入に聞いた方が答える方も分かりやすく説明してくれるだろう。

父は私の目をみて、話し始め。
「亜子俺はあちらの世界の世界から来たアンドロイド、つまり擬似人間だ。亜子の本当の父はもうこの世にいない。先程のような影ハンターは、時空を超えこちらの世界にやって来る。先程影ハンターが話したことは全部嘘だ。亜子の父親は影ハンターに言いくるめられ影を吸い取られてしまった。こちらの世界は、光の世界。影を作る太陽がさんさんと降り注ぐ。しかし、あちらの世界は、こちらとは反対に、闇に包まれて日陰の世界なのだパラレルワールドであっても、こちらとは全く違う。しかし、技術的には進歩していて、人工太陽が発明され、明るさは手に入れた。しかし、、影は作ることは出来なかった。何度も研究を重ねていくうちに、人影は、人からしか出来ないことに気がついたどうしても人影が欲しいというのは、アンドロイドであっても欲望として持っている。その弱みに、乗っかったのはこちらの世界の世界から飛び込んできた人間達だった。あちらの世界に飛んだ人間は、何かしら現世界に恨みを持つものが多かった。そういう奴らは、ルール違反を繰り返し、時空を彷徨う。そしてあちらの世界の裏組織と手を結び、吸い取った人影を渡す。私は、影ハンターと闘う戦士だった。しかし、亜子の父親を救うことは出来なかった。任務を遂行することの出来なかった罪悪感に苛まれ、私はアンドロイドでありながら、現世界で亜子の父親として生きることに決めたのだ。」

私はただ唖然とするばかりだった。母は、普段と変わらぬ顔でコーヒーを飲んでいた。

「母さんは知ってたの?」
母は、コクリと頷く。「顔や姿は夫と同じでも、何か違和感を感じる事が多かったわ。性格も今のように穏やかな優しいものではなかったから。でも、ね。今、父さんが居てくれて本当に良かったって思ってる。亜子の悲しむ顔も見なくて済んだ。だから、私はアンドロイドだろうが、父さん影が無かろうが関係ないのよ。父さんは父さんだもの。死んだ本当の父さんには悪いけど、私は今幸せだよ」

「父さんに影がない?」私はようやく気がついた。だから、夏の暑い時期でも長袖シャツとパーカーを羽織ってたんだ。仕事も出来るだうちで出来るWebライターの仕事。

しかし、父の書く文章は、とても面白いと評判だった。小説と言いながら、実体験をモデルに書いていたのだから。臨場感あふれる作品が出来るのは当然だ。何も知らないのは、私だけだった。

「影ハンターは再び現れる!私の感は当たった。これからも、また亜子の人生を、脅かすもの達が現れるかもしれないと。しかし、亜子はもう大丈夫だ。影ハンターの間であの家族は危険だと、情報が、流通してるらしい。私は父親としての、役目は終わった。なくなった本当の父さんの遺骨も何もない。けれど死んだ命を忘れないで欲しい。私はそろそろあちらの世界に戻る事にする。」

「ちょっと待って!私はいいけど、母さんは、どうするの?」
母は微笑んだ。そして静かに答えた。
「私も父さんについて行くわ。」

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