かげふみ14
2階の自室は、高校を卒業して、あらからなにもなく、押し入れに、昔の書いた絵や文集などを積み重ねて、束ねてある程度。殺風景な何もない部屋の片隅に、本棚がある。昔は沢山の漫画本が、並んでいたところに、1冊のアルバムを見つけた。
埃っぽい部屋の窓を開け夜風に吹かれながら、アルバムを持ち出して座る。
1ベージ目、インクで塗って貼り付けた小さい手形と足形。
2ベージ目、母に抱かれた猿顔のわたし。「うわぁ不細工!」次のページ。私は目を見開く。父らしき、男性。彼に抱かれた私は、泣きじゃくっていた。はるかに今の父とは違う顔立ち。きっとこの時父は私の父になったのだろう。その後は、お雛様の前で行儀よく座る私。その次は、お隣の有花ちゃんとプール遊びをする姿。
この後は、彼女との思い出写真が、続いた。近所の駄菓子屋の前にある木の長椅子のならんで腰掛けかき氷を食べる姿。
真夏の光の中、2人の笑顔が眩しい。
かげふみ遊び、どちらかが鬼になって影を追いかける。
何故か、私はいつも鬼役だった。笑いながら逃げる有花ちゃんに私はその頃少し嫌になっていたのかもしれない。しかし、私は必死で影を追いかける。幼かったあの頃。それでも有花ちゃんが、好きだった。
2人の楽しかった思い出は、そこで途切れてしまったようだ。幼なじみとはそんなものなのかもしれない。
それぞれが、それぞれの世界を広げ、そしてそれぞれの道を歩んで行く。
私達もそんな人生を歩んで行くはずだった。
少しの、歯車が食い違った。
再び父に抱かれた自分を見つめる。
しかし、私の記憶の中の父は、今の父でしかない。
剣を隠して、私達をずっと守ってくれた。光と影は、紙一重。母はきっと父の光となるだろう。
アルバムをとじ、目を閉じた。
その瞬間、若き母の涙を見た父のやるせない表情が脳裏に広がった。「私はあなたの娘が成長するまで一緒にいる。あなたの夫の代わとしてあなた達を支えていく。私は影ハンターからあなたの夫を救えなかった。どうか私の願いを聞き入れてくれないか?」
母は、動揺して何も言えなかった。
しかし、一言だけ呟いた。
「娘が笑顔で成長できるなら。」
私は幸せな家族愛に守られていたのだ。
私は来年大学を卒業する。就職は、まだ決まっていない。とりあえず、あと1度大きなしあいがあり、それが終わった後で仕事を探す予定だった。
「亜子は亜子のままでいい。」
中学時代の父の言葉が木霊する。
色んな思いを馳せ考えてるうちに窓の外は、白けていた。
今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。