かげふみ10

「ありがとう。じゃあいくよ!」
彼女は、微笑んだ。しかし、その微笑みの中に黒い闇が見え隠れしているように感じて。私は身構えた。

「やめないか!君はいつまで嘘を繰り返すつもりだ。H1002!」

後ろから父の声が聞こえて、振り返る。
「亜子!その横に居る奴は有花ちゃんなんかじゃない。幼なじみの有花ちゃんは、別世界になんか飛んでない。ずっと自分の殻に閉じこもり、部屋を出るのは用を足すときだけだった。
亜子の横にいる奴は時空を彷徨う影ハンターだ。早くそ奴から離れるんだ!

父は鞄の中から、折りたたみ式の刀のようなものを取り出し、スイッチボタンを押すと、日本刀のような長さの剣が現れた。

「ふふふふふふつ、ははははははっ、バレてしまったなら仕方ない。お前は、アンドロイド4986 だな!しかし、何故この世界にいる?」

父はまさかのアンドロイドだった。私は目の前で、起きている真実を信じられないでいる。私は父の顔をまじまじと眺めた。いつもと変わらぬ父の顔が歪んでいた。

「何で意味がわからない!お父さんが、アンドロイドってどういう事?」

「亜子。すまない。詳しい説明は此奴を懲らしめてからにしてくれ!」
父はいつもの穏やかな優しい父ではなくなっていた。

俊敏に剣を扱い、有花ちゃんの姿をした影ハンターと対峙する。
影ハンターは、徐々に有花ちゃんの体の皮が剥がれるように、漆黒色の化け物へと変貌していった。

父は剣を巧みに操り、影ハンターの体に剣を射し込んだ。

その瞬間、光の粒子がふわふわと天空へ上がるように舞い上がった。

「うおおおおぉ!」体に剣を刺されたハンターは、強烈な悲鳴をあげ、光の粒子と共に消滅した。

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今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。