かげふみ3

中学を卒業し、私は地元の公立高校へ進学した。
中学時代に引き続き、バレー部でボールを追いかける毎日。

お隣の有花ちゃんは、家に引きこもったままのようだった。

時々、カーテンの隙間から、有花ちゃんの姿が見え隠れしたが、あの日以来、一度も家を訪ねたことはなかった。

バレー部の厳しい練習と、学業に、精一杯だった。
ボールをおいかけ、ボールを拾い次に繋げ、相手のコートにボールを落とす。
チームメイトとの、関わりの中で、私はバレーにのめり込んで行った。

大学は、スポーツ推薦で、地方の大学に進学した。

今思えば、申し訳ないが、お隣さんの事は私のなかで過去になっていた。

昔お隣の家は、いつも花が植えられ季節ごとに違う花を咲かせていた。

春は、パンジー。夏は、ひまわり 。秋、秋桜。
冬は、マリーゴールド。

それは、何時も明るさでいっぱいだった。

そのお隣の庭も、今はざっそうがたくさん生い茂る。家自体も荒んだようだった。

風の噂で有花ちゃんのお父さんがリストラにあって、経済的に苦しくなったらしいと知った。

母が、有花ちゃんのお母さんを見たのは、梅雨空の中だった。が、会釈をして通り過ぎたそうだ。

そのひと月後

お隣さんの様子がおかしい!と様子を見に行った母は、腰を抜かした。

テーブルの上に腐ったなんだか分からないものが、シチュー皿にこびりつき、3つの皿に、3つのコップ。

テーブルの下に転がる腐った死体。
スプーンが3本。無造作に散らばる。

母は
動揺をして父を呼んだ。父もその参上を目の当たりにして動揺したが、直ぐ警察に通報した。

青酸カリ入りのビーフシチューを食べ、3人は仲良くあの世へ旅立ったのだった。

お隣さんのということもあり、役所の人と小さなお葬式をした。

私も連絡を受け、久々に帰省したのだった。

蒸し暑い夏の日3台の霊柩車の後を私たちの家族の軽自動車が着いていく。

火葬場で有花ちゃんを見たが凝視出来なかった。周りをひまわりの花が飾ってあった。

火葬場の煙突から煙が上る。

しかし、私は、涙1つ出なかった。

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