イグアナ14

翌朝は、やっぱりスマホのアラームとともに目覚めた。毎朝の習慣、そう簡単に変わらない。
「優子さん、おはよう。」真一郎もスッキリした顔で目覚めたようだ。
「僕さ、折角採用されたから、年内は清掃員として、働くことにするよ。それで、年末に、実家に帰る。厚かましいお願いなんだけど笑年末までここにいていいかなぁ。」
上目遣いで私を見つめる。
「年末帰ってお父さんと、しっかり話してね。ちゃんと自分の思いを伝えるんだよ!」私はうふふと笑う。まるで昨日の母との会話のようだ。真一郎は、訝しげに私を見ていたが、
「仕事、今日からなんだ。朝早くから出るから、優子さん、みどりさんの事お願いね。」
とりあえず、食パンにバターを塗り、オーブントースターで焼いて、コーヒーはミルクたっぷりのカフェオレにした。「朝ごはんはしっかり食べてね!」

嵐のように真一郎は、仕事に出かけた。
とりあえず、私もパンとコーヒーで朝食をすませ、みどりさんに、野菜とくだものを1口大に切って与える。
「みどりさん、ごめんね。お腹空いたでしょ!」
専用のボウルの野菜を飲みこむ。
食べ終わったのを見計らって、ケージから出ししばらくの間膝の上に乗せた。
「みどりさん、あなたが縁であなたの飼い主さんと出会えた。ありがとね。さて、ケージ掃除するよ!」
みどりさんは、円な瞳で私をじっと見つめるだけだった。


ケージの掃除が終わったら、午前9時を回ったところだった。

よし!とりあえずハローワークへ行って、離職票を、出して失業保険の申請をしよう。

スーツ姿に着替え、髪を後ろで一纏めにした。
ふと、カレンダーに目をやる。今日は、12月1日。もう師走か!タンスの奥からマフラーと手袋を出した。
歳を重ねるにつれ、日が過ぎるのが早く感じる。スマホを見ると、母からLINEが入っていた。
「たくくん喜んだ。」またまた小学生のような文章。折り返し電話する。「優子か?卓くんに話したよ。飛び上がって喜んでたわ。でも私の体を心配してた。もう43やからなぁ」
「それでどうすることになってん?」
「産む事にした。来年にはあんたの妹か弟が出来るで」母は、やっぱりぶっ飛びな行動力を発揮する。
「それはおめでとう!私も1つ報告があるねん。」少し躊躇ったが、いずれは分かることなので仕事を辞めたことを報告する。
母は、「なんで?あの会社安定してたのに!もったいない。」
「私な、やりたいこと見つけたん。とりあえず今からハローワークに書類出して失業保険は貰えるようにするから心配せんといて!お母さんは自分の体のことだけ考えや!あと、誕生日は、そっちに行けないからな。吉田君によろしく!」一気に早口で伝えて電話を切った。

今日は、師走の始まりだった。
マフラーと手袋をして外に出た。
10時前陽射しが暖かい。私はよし!と、気合いをいれ、駅へと向かった。

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今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。