2.ピリオダイゼーションの基本的な考え方(月刊トレーニング・ジャーナル2023年4月号、特集/ピリオダイゼーションを考える)


寺田健太郎
STUDIO BAZOOKA(パーソナルジム)

年間のトレーニング指導を考えるとき、どのように内容を変化させていくのか、実践的な部分についてお聞きした。

特集目次
https://note.com/asano_masashi/n/nf984ec80c5e1

 現在、アスリートから一般の方までトレーニング指導を行っています。アスリートでは柔道やビーチバレーボールの選手のほか、ハンドボールのチーム、そして過去には水球、カーリング、ウィンドサーフィンなどなど、いろいろな競技のアスリートを指導してきました。いわゆるストレングス&コンディショニングの指導者という立場で活動しています。

ピリオダイゼーションの目的

 なぜピリオダイゼーションを行うのでしょうか。それは、よりよい結果を出したい試合に向けてピークを持っていけるよう、計画的にトレーニングを行うため、というのがピリオダイゼーションを行う目的となります。ピリオダイゼーションを実際に考えていくうえで、トレーニング種目や回数、強度、休息時間、動作のスピード、セット数、全体のトレーニング量といったところを変化させていきます。

4〜5つに分ける

 競技にもよりますが、試合に向けて準備を進めていくうえで、全体を4つに分けることが多いです。筋肥大期、筋力向上期、筋パワー期、積極的休養期の4つです。これに加え、シーズンが長い、たとえばリーグ戦のように毎週試合を行う時期がある競技では、ピークを維持していくような期間として維持期を設けて、5つに分けることになります。

筋肥大期

 筋肥大期は、筋を肥大させる時期となります。基礎的なトレーニング種目からやっていきます。もちろん選手によりますが、ベンチプレスやスクワット、懸垂などのオーソドックスな種目で、まずはしっかりと身体の土台をつくっていくような形です。

 回数としては、1セット8回から12回あたりで、強度としても8RMから12RMになるように設定しています。RMというのは、最大挙上回数のことで、8RMの強度というのは、連続して挙上したときに、8回目までは挙上できて9回目は挙上できないくらいの強度になります。これが1RM(1回だけ挙上できる最大の負荷)の65〜80%ほどにあたります。

 この時期には、フォームが崩れないことや、コンセントリック局面およびエキセントリック局面のどちらも、丁寧に動かしていくイメージでやっていきます。休息時間は、私はセット間に1分半から2分半ぐらいの間になるようにしています。ただ、実際には休息時間は測りきれていないところがあります。たとえば3人一組で回しながらやっていると実際は休息時間が意識されていなかったり、仮に1対1でトレーニング指導をしていても、修正について話したり食事の話をすると、決めていた休息時間を過ぎていたりします。

筋力向上期

 筋力向上期では、強度としては基本的に3〜5RMくらいと考えています。回数も1セット3〜5回となります。この時期も、基本的にはオーソドックスな種目、スクワットやベンチプレス、懸垂を行います。特異的な種目も入れていきます。私はチームをサポートすることが多く、個別に細かなところをみることが難しいため、ベーシックな種目で同時にトレーニングを指導していくという流れでやっています。重さがあるので、スピードはどうしても下がってしまいます。とくに反動も使わずしっかりと挙上していくイメージです。

筋パワー期

 筋パワー期は2パターンがあると考えています。そもそも、「パワー」と聞いたとき、筋力とパワーが混同されることも多いと思います。筋力が何kg挙上できるか、というものだとして、パワーは何kgをどれだけの速度で挙上できるかというように、速度も関係してきます。高重量で挙上が遅くなってしまう状況での速度を意識するのか、より低重量でより高速のところを意識していくのかというところで、2つに分けられていると思っています。

 それに対して重さも、たとえば1〜3RMの高重量で狙っていく、もしくは10RMあるいは15RMの、筋肥大期と同じような重量設定(1RMの40〜60%)でスピードを意識してやっていきます。これは選手の特徴だったり競技によって分けています。

 休息時間は、ここではスピードを意識したいので2分から2分半にしています。短すぎることがないようにしています。

維持期

 維持期は、どのくらいの期間になるかにもよりますが、筋パワー期と重量設定は変えません。高強度でトレーニング量(ボリューム)を減らしていきます。たとえば回数を少し減らして強度×回数×セット数で表される全体のトレーニング量を減らし、疲労を残さないようにしていきます。実際の試合でコンディショニングを落としていかないよう、いわゆるピーキングというところです。

積極的休養期

 積極的休養期に関しては、選手本人の意向や、チームの意向によって内容が変わります。完全に休みたい人は完全に休み、全部忘れてもらおうという感じにすることもありますし、あとは動的ストレッチだけ、あるいは軽い感じで身体を動かしたり、たとえば柔道だったら柔道以外のスポーツとしてサッカーなどを楽しんだりします。

 ウェイトトレーニングを行うにしても、重いものを持ったりせず、体幹を使ったり、自重だけといった感じです。自重トレーニングは腕立て伏せなどのほか、アニマルフロー的な動きを取り入れたりしています。

 この時期は、身体と心を休めるという点で大事であると考えています。本当に軽く身体を動かしておいて、ちゃんとまた動き出すときにケガだけはしないようにしておきます。いろいろな選手を見てきて、ここの過ごし方をどうしたいかについては本当に人それぞれで、監督やコーチの考えもそれぞれなので、こちらから「これが絶対いいです」といった勧め方はしないようにしています。質問されたときに「このくらい動いたほうがいいよね」と答えています。

ピリオダイゼーションの分け方の例

 大学ハンドボール部でのピリオダイゼーションの例を示します。おそらくハンドボールに限らず、バスケットボールやバレーボールもこのような年間スケジュールになってくると思います。

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