着ぐるみバイトの話
この世で唯一手放しで大好きな仕事、それは着ぐるみバイトである。
理由は透明人間になれるからだ。
こちらからは周りの人々が見えているのに、周りからは私が認識されないのだ。
私は自意識過剰の為、高校生の時からそのような状況に憧れていた。
電車の座席に座りながら、今すぐ他人の視界から消え去りたいと常に願っていた。
着ぐるみに入ると、中はほぼ真っ暗である。
そこに覗き窓が空いている。
その中に入ると、えも言われぬ安心感に包まれるのである。
仕事上色々と大変なことはもちろんあるが、それよりも好きの方が勝つ仕事だ。
そういった着ぐるみバイトに対する思いをテーマにした作品を作ったことがある。
本当は普段から着ぐるみを着ていたいが、そうもいかないので着ぐるみのようなものを被って生活している。
いわゆる外面である。
年が経つにつれて段々と、外面という意味での着ぐるみを少しずつ被れるようになってきたため、高校生の頃のように他人の視界から消えたいとは思わなくなった。
きっと高校生の頃は中身が剥き出しになっていたのだ。
しかし、着ぐるみを被るのと剥き出しの状態とでは、本当はどちらが良いのだろうか?
恥ずかしながら、いまだに全然分からないままなのである。
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