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アメリカ珍旅行記 英語を全く話せない男が一人旅でアメリカに行った話(6)

タコベルで食事を済ませた僕は涼しい店内で考え事をしていた。

どうやって帰ろう。

帰りのバスがどれなのかも分からない。
地下鉄の駅すらもどこにあるのか分からない。
Wifiが電池切れの為、地図も見れない。

ぼんやりと外を眺めると度々通る同じような黄色い車。
タクシーという手があった。

英語も喋れない奴はどうせぼったくられるからタクシーには乗るなと散々言われていた僕だが、お金を気にしている場合ではない。
日が暮れたら完全にアウトだ。

僕は急いでタクシーを拾った。
ホテルの住所は紙に控えてあったのでホテルに帰るのに難しい英語なんてのは必要ない。

幸いにも運転手の人はとても優しいおじいさんだった。
ぼったくられることもなく、無事にホテルへ到着したので多めにチップを払った。
疲れ果てた僕はキングサイズのベッドで果てるように寝た。

起きた時にはすっかり夜になっていた。
お腹も減ってきたがどうにも出かける気にならなかったので近くにあるセブンイレブンに行くことにした。

日本のセブンイレブンとは異なり、見事なまでにアメリカ色が強すぎるラインナップに思わずにっこり。
知的飲料ドクターペッパーにやたら大量にストックされているスナック菓子、いつ作られた物か分からないピザやホットドッグなどのホットスナック類を買いホテルへ戻ってゆっくりと食事をした。
ホットスナック類のクオリティはとても低かった。

翌朝、カーテンの隙間から差し込む気持ちのいい朝日で目を覚ました。
旅行に来て一番のいい朝だった。
初日の朝にやらかした風邪も大分良くなっている。
こんないい朝には気持ちよく朝シャワーを浴びて出かけよう。
日本のようなホースで自由に動かせるシャワーでなく、壁に固定されたいかにもアメリカっぽいシャワー。

お湯が出ない。

使い方も分からないうえ、どこを押しても出るのは水。
そして水はドバドバと重力に従って垂れ流されている。
僕の想像していた気持ちのいいシャワーとはいかなかったものの、遠いアメリカの地で僕は滝行をおこなった。

水を浴びたせいかお腹の調子が悪くなってきたのでトイレへ駆け込んだ。
昨晩大量に食べたせいもあって、見事なものだった。
さー、アメリカ旅行を楽しもう。
意気揚々とトイレの蛇口をひねった。

流れない。

ちょろちょろと水が出てくるだけで何度やっても僕の思い出達は流されていかない。
トイレのタンクの中を見るが原因が分からない。
このままでは僕の旅行はう●こで染まっていく。
僕はそっと蓋を閉めた。

毎日部屋を掃除してくれるおばさんが来るのがあと1時間後くらい。
僕にはこのトイレをどうすることも出来ない。
任せよう。やってくれるかは分からないが、おばさんに任せよう。
僕はいつも通り机の上にチップと、携帯で調べ英語で記したメモを残した。

「Toilet doesn't flush.(トイレが流せない)」


続く


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