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MakerFaireTokyoで見た「アシスティブテクノロジー」のかたち

Maker Faire Tokyoでは今年から「アシスティブテクノロジー」というカテゴリが新設されました。Make:公式サイトでは、

お年寄りなど介護が必要な方や障害を持った人の生活機能を向上させたり改善させたりする技術を「アシスティブテクノロジー」と呼ぶ。一人ひとり異なるニーズに合わせた「一点もの」は、Makerが手がけるプロジェクトとしては最適な方向性の1つだ。

と説明がされています。具体的にはどんな展示があったのか、見ることができた範囲で紹介します。

at.Fab / ファブラボ品川

ファブラボ品川では、作業療法士の方が中心となって3Dプリンタで作った数々のアイテムを展示・販売していました。作業療法士(OT = Occupational Therapist)とは、リハビリテーションに関わる専門職のひとつで、以下のような「意義ある作業活動」をサポートする職業です。(公式サイトより

①日常生活動作(排泄、食事、入浴など)
②日常生活関連動作(料理、子育て、仕事、買い物、掃除など)
③趣味活動(スポーツ、ゲーム、手芸、園芸、アート制作など)

ラボのメンバーは食器を持ちやすくするためのホルダーや、ハサミを行いやすくするための機器・手の開閉を鍛えるためのなどを毎日のように作っており、Maker Faireではその一部を展示・販売していました。

ペットボトルを開けやすくするための蛇口なんかは、見た目も面白く、普通に使ってみたいと思えるアイテムでした。いいなぁ。

大田区看工連携プロジェクト

富士通の「あしたのコミュニティーラボ」が旗振り役となって進めるプロジェクトでは、大田区を舞台に看護とモノづくりの現場を繋ぎ、機能的な医療機器を作ろうと取り組んでいます。

今回展示されていたのは、歯で強く噛むことで水分を口の中に取り込むことができるポンプのようなもの。見た目のインパクトが強いですが、「寝たきりの人が水を誤嚥しないように」というアイディアから生まれたとても実用的なモノです。

興味深いのは、もともとは誤嚥防止のために開発が始まったモデルが、現在はマラソンなどのスポーツ選手のための応用も検討されているということ。ニーズから開発された技術が、別の場面にも転用されていくのは素敵な流れですね。

Assistech Design Lab

「タブーじゃないぜ」をモットーに、自作の筋電センサーを使って手足を使わず色々なモノを動かすことに挑戦しています。僕が体験したのは、頭に筋電センサーを取り付けて車椅子を動かすというもの。

右側を噛めば右へ・左側を噛めば左へ。両側を噛めば前進/バックするという仕組み。ちょっと慣れが必要でしたが、装着から操作まで3分もかからない手軽さは魅力的!これだけ気軽にできれば、筋電位を単なる入力デバイスとして考えて、いろいろな応用が利きそうです。

写真のウサギ耳も、同じセンサーでギャンギャンに動いていました笑。

慣性工房

右手でカメラ撮影が出来ない身体障害を負った方が、気軽に現行のデジタルカメラを使用できる様にするための補助装置=アシスト・グリップを製作。アルミプレートを加工し、コルクボードと100均の粘土を組み合わせて片手で持てるようになっています。

カメラをハックする事例としては、パーツの3DデータやSDKをオープンにしたOLYMPUS AIRをほうふつとさせます。このグリップは開発途中ではありますが、NPO化を検討しつつ進めているとのことでした。

多摩ファビリティ研究所

歩行困難な電動車いすの利用者が、世界各国のファブラボの協力で電動車いす「Fab Scooter」を作成。金属の溶接や大型木製パーツの切り出しまで、ほとんどDIYで完成にこぎつけています。

分解・組み立てが短時間でできることで、活動範囲が大幅に広がったそうです。単に自作した以上の機能的価値があることに感激しました。

他にもいろいろ…!

僕が関わっている2つのプロジェクトからも出展させてもらいました。

まずは慶應大学の看護医療学部が中心となって進む「FabNurseProject」。看護現場の声をもとに、人の体にフィットするケア用品や看護学生のための教育ツールなどを開発しています。

これまでの活動の成果が認められ、2018年にはMakeの聖地ともいえる本場BayAreaへの招待出展も果たしました。詳しくはこちらの記事を見ていただけると嬉しいです  → Young Maker ベイエリア遠征チャレンジ ― 慶応大学Fab Nurseチームがメイカーの “聖地” で感じたこと

続いては、書いてある文字を音声で読み上げるスマートグラス「OTON GLASS」。失読症となってしまったお父さんをサポートするために開発されたデバイスは、日常生活用具としての認定を取得しながら、自治体での販売に踏み切ろうとしています。

中身がRaspberry Piだったり、外装が3Dプリントだったりと、意外と(?)DIY的な作られ方をしているのがOTON GLASS。Maker Faireとの付き合いも長く、ステージではその辺の話をさせていただきました。

今後はもっとハックしやすいような環境づくりに挑んでいく所存です。関心ある方がいましたらご一報ください!

技術者・支援者・当事者が重なり合う

時間は全然足りなかったのですが、個人・企業・有志団体など様々な立場からの出展を見ることができました。どれも明確なニーズから始まったものづくりですが、それが元になって別の事例や新しい技術開発に繋がっているのがナイスなポイントだと思います。

当事者が技術を学んでMaker/Developerになったり、技術者が何かのきっかけでニーズをつかんだり……。「アシスティブテクノロジ―」のものづくりには色々な関わり方があるのが面白いし、大きな可能性を秘めている部分だとも思いました。来年の展示も楽しみです!

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