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線に包まれる居心地のよさについて。 〈みたもの:松川ボックス〉

線が多い。
この住宅を体験して印象に残っていること。それが、この住みかの良さだと感じた。

2階に差し掛かる階段からの見え。


2階を見上げる



柱梁のようなフレームはフレーム。仕上げは仕上げ。それらがフラットに扱われて、全てが自律したまま、コンクリートの殻の中に漂っている。

だから、この空間にはモノが多い(ように見える)。それぞれのモノの輪郭線がそのまま現れるから、線が多い(ように見える)。

実際にはどの家にも同じ程度の物量をしてモノが集まり、空間を作っているけれど、モノ同士の前後関係が、モノを隠したり、輪郭線を隠している。その作法によって、ときに極端に線の少ない、緊張感のある空間が生まれることもある。

建築家はこの線を消す作法を好むひとも多い。宮脇檀はこの作法から距離を置いて、居心地のよい住宅を作ろうとしていたのかも知れない。

1階を見下ろす。


柱は、屋根を支えない。空間に漂ってる。


2階の床。

宮脇檀の設計した家を実際に体験するのはこれが初めてだけれど、学生の頃から彼の作品集をいくつも買って眺めていた。憧れのような気持ちを抱きながら、なんとも心地良い暮らしのある家の写真を、じっと眺めていた。

線の多さに包まれる安心感のようなものが、ここでは確かにあった。一方で、線が多いからではなくて、モノたちが隠されることなく素直に並べられていることが、この家の居心地を作っているのかも知れない。そんな風にも思えた。

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