見出し画像

恩義に「正義」はあるか

「ブラック企業」は今に始まった文化ではない。IT企業はそれが平常運転である。

以前務めていたIT企業の幹部だったOさんは、そのブラックぶりに嫌気が差してしばらくフリーランスで身を潜めていた経験があった。

どんなブラックぶりかといえば、ありきたりだが残業代は出ないし、鉄塔の上のコンピュータ制御室に何時間も一人置き去りにされることもしばしば。取引先への出張はもちろん飛行機代が全て自腹。マイルが貯まることが楽しみになるくらいその感覚は麻痺させられていた。

とにかく毎日が社長の顔色伺い。「拾ってもらった」という恩義をとにかくつきつけられる。だから逆らえない毎日。それでも歳を追うごとに疑問の念は蓄積され、ようやく、キツイ嫌味を言われながらもフリーランスに転向できた。会社勤めはもう懲り懲りだった。

そんなOさん、数年後、別の会社でまた懲り懲りだったサラリーマンに戻り、実質的にその会社のナンバー2になっていた。フリーランス時代に社長に気に入られ、スカウトされた形だ。社長から絶大な信頼を得ていた。

ここから先は

2,320字 / 1画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?