ジョバンニのことなど

銀河鉄道を降りて(丘の上でのヤケになった眠りから覚めて)、家で待つお母さんのことを思い出し、牛乳を無事にゲットした帰り道でカムパネルラの溺死を知ったジョバンニ。
物語はカムパネルラの父から(彼にとっては旧友である)父がまもなく帰ってくると知らされたジョバンニがこの知らせを持って母の待つ家に向かって駆け出すところで終わる。

私はこのあとジョバンニは家まで帰ってきた時に戸口のすぐそばで父親に遭遇するんじゃないかと想像している。(だってカムパネルラのお父さんは「今日あたりもう着く頃なんだが」と言っていたし。)
暗がりにたたずむ大きな人影にどきっとするけど、すぐそれがなつかしいお父さんだと分かって駆け寄るジョバンニ。
父はたくさんの鞄と荷物を地面にどさりと置いて彼を抱きしめるだろう。
「遅くなって悪かったな。元気だったか?」とのんきに屈託なく笑う父親に、ジョバンニはいきなり泣き出すに違いない。
だってどんなにか待ってた瞬間だしお母さんは病気になって本当にたいへんだったし元気なお父さんを見て脱力するほど安心したし、
そしてそれに、カムパネルラが、お父さんの親友の息子でもあるカムパネルラが今しがた命を落としたのだし。
言葉になんかならないよね。泣くしかないよね。
お父さんはそんな息子を牛乳びんごとだまって担ぎ上げて、お母さんのいる室のなかへ陽気に入っていくんだろう。
そしてあとからようやく落ち着いたジョバンニに、事の次第を聞かされて息子をもう一度しっかり抱きしめるんだろう。そして言うんだ。
「ジョバンニ、あした父さんとみんなと一緒にカムパネルラに会いに行こうな。」

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