手漕ぎボート

 中世ヨーロッパのバロック期の芸術の特徴として「物語性の強調」が挙げられます。例えば、バッハの「フーゴ」なんてのがそれですね、聞いたことないけど、けーねが言ってた。音楽にも物語性を強調することができます。合唱コンクールなんてえのは、展開のある曲が多かったですよね、覚えてないけど、けーねが言ってた。森のくまさんみたく歌詞が物語になっているのではなくて、曲の展開が物語的なんですかね。

 だとしたら話がズレてしまうんですが、物語性を強調した音楽として東方プロジェクトの二次創作ってのがあるんですよ。ゲームBGMをアレンジした曲で、みんな好きなように歌詞書いたりもしくは使う楽器を変えたりしたりして、新しく作りなおすんですね。ボスキャラにはそれぞれ専用の曲があって、東方シリーズが好きな人は特定の曲を聞いたらそれに相当したキャラを思い出すんですね。それによって、物語性の強調が生まれます。曲の背後にキャラがちらちらと見え隠れする。

 「IEMITSU」という同人サークルがいます。このサークルも東方プロジェクトの二次創作で何枚かアルバムを出しているんですが、彼らの音楽はそうした観点から見た場合とても素晴らしい作品なんですね。彼らの「Re:シリーズ」というアルバムがあるんですが、たしか大体全部で10枚くらいのアルバムになっているんですが、その10枚で一つの物語を歩んでいくんです。プログレもびっくりですね。そして、その物語が人間と魔法使いの恋。魔法使いが妖怪になったりもしますが。人間以外の種族は寿命が長くてそのため先に人間が先に亡くなってしまうのです、当然です。そうした悲しみに狂いかけるさまを可愛らしい曲や敏感な音で表現するんですね。んで、言ってしまうと、最後のアルバムの最後の曲がすごいのですよ。「Re:シリーズ」を締めくくるに相応しい曲名で「Re:アリス」というのですが、もうひどいバッドエンドで。でも、なんとか希望を探そうとするんですね。曲調は彼女の狂気を著すように激しいバンドサウンドでボーカルも力のある声なのに消えてしまいそうな儚さもある。絶妙な。何かにすがるような歌詞もせつない。東方を知らない人からしたらただの数ある曲の一つですが、アリスという設定を知っている東方ファンはそれ以上に意味を読み取れる曲なのですね。そこに物語性の強調を垣間見ます。まあ、この曲の元ネタはアリスさん関係ないんだけどね。なんだそれ。

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