Z1307 教科教育法1(第1設題)

【第1設題】新しい学習指導要領では、国語科改訂の要点として、「学習の系統性の重視」が言及されているが、具体的に、学習指導要領に向き合い、「話すこと・聞くこと」の系統性について指摘しつつ、義務教育終了段階で求められる「話すこと・聞くこと」の力とは何か、また「話すこと・聞くこと」に関する力の育成の方向性について、レポートすること。

 平成20年7月に改訂された中学校学習指導要領解説(国語編)では、学習の系統性について、「国語科の指導内容は,系統的・段階的に上の学年につながっていくとともに,螺旋的・反復的に繰り返しながら学習し,能力の定着を図ることを基本としている。そのため,生徒の実態に応じ,各領域の指導事項及び言語活動例,さらには〔伝統的な言
語文化と国語の特質に関する事項〕を関連付けながら,重点を置くべき指導内容を明確にし,その系統化を図っている。」としている。
 これまで、国語科の授業では数えきれないほどの学習計画、年間計画が立てられてきたが、計画の根拠となるべき教科内容の「系統性」の欠落というものが指摘されてきた。例えば数学科の場合には、前の単元で学習したことを踏まえて次の単元へ進むため、日々の積み重ねが大切であり、教科書を戻って確認することは学習の基本として言うまでもない。しかし、国語科の場合はこのように前の単元を復習することはあまりないことである。
 また、関連して、国語科の場合「教科内容」の具体が極めてあいまいである。漢字指導などを除いては「読むこと」についても「書くこと」「話すこと・聞くこと」についてもその単元、その教材で子供たちに身に着けさせるべき「教科内容」の具体が把握しにくい。例えば、「走れメロス」を子どもたちに読ませることでどういう国語力をつけることができるか極めてわかりにくい、という指摘がある。
 すなわち、系統性をもたせた学習とは、それまで学んだ方法、知識等を復習し応用しつつ、新しい方法・知識等を学ばせていく方法である。
 それでは、義務教育終了段階での「話すこと・聞くこと」の到達目標はどういったところなのであろうか。
 中央教育審議会答申における国語科の改善の基本方針によると、中学校については「社会生活に必要な国語の能力の基礎を身に付けること
ができるよう,次のような改善を図る。」としてその具体的な内容が示されている。
 「「話すこと・聞くこと」,「書くこと」及び「読むこと」の各領域では,小学校で身に付けた技能に加え,社会生活に必要とされる発表,討論,解説,論述,鑑賞などの言語活動を行う能力を確実に身に付けることができるよう,継続的に指導することとし,小学校で習得した能力の定着を図りながら,中学校段階にふさわしい文章や資料等を取り上げ,自ら課題を設定し,基礎的・基本的な知識・技能を活用し,他者と相互に思考を深めたりまとめたりしながら解決していく能力の育成を重視する。例えば,社会的な事柄を含む広い範囲から課題を見付け,根拠を明確にしながら自分の考えを簡潔にまとめて記述したり,多様な文章や資料の形にまとめ,分かりやすく発表したりすることができる能力などの育成を図る。〔言語文化と国語の特質に関する事項〕では,古典をはじめとする伝統的な文章や作品を読んだり,書き換えたり,演じたりすることを通して,言語文化を享受し継承・発展させる態度を育成することを重視する。また,他の言語と比べた国語の特質や,社会生活で使用されている敬語の特質など言語の多様な働きについての理解を重視する。なお,音声,文字,語彙,単語,文及び文章の構成,言葉遣い,書写などについては,実際の言語活動において有機的にはたらくよう,関連する領域の内容に位置付けるとともに,必要に応じてまとめて取り上げるようにする。」としている。
 ここで、具体的な指導事項ならびに指導の方向性を検討する。
 学習計画・年間計画を立案するうえで留意しなければならないこととしては、単元レベルでの計画が基本となり、それが年間計画を形づくる。単元レベルでは、学習計画は、①時数、②単元名、③教材、④目標、⑤学習活動(指導方法)、⑥評価の観点と方法などから成り立っている。年間計画ではこれらの単元の学習計画を系統的に配列することで成り立つ。「話すこと・聞くこと」であれば、スピーチ、プレゼンテーション、話し合い、パネルディスカッション、ディベート、それぞれについて、教科内容の系統性を意識する必要がある。
 「話すこと」に関する指導事項としては、相手や目的,状況に応じて分かりやすく話すことを示している。主として話すための準備段階で指導する内容と,実際に話をする段階で指導する内容とに分けている。話すための準備段階では,第1学年では話の構成を考えること,第2学年では論理的な構成や展開を考えること,第3学年では説得力のある話をすることを示している。
この中で、相手や場を意識して話すことについては,第1学年では相手の反応を踏まえながら話すこと,第2学年では異なる立場や考えを想定して話すこと,第3学年では場の状況や相手の様子に応じて話すことを示している。次に、第1学年では言葉遣いなどについての知識を生かすこと,第2学年では資料や機器などを効果的に活用すること,第3学年では敬語を適切に使うことを示している。
 「聞くこと」に関する指導事項としては、話の内容を聞き取り,自分の考えに生かすことを示している。聞き取ることについては,第1学年では質問しながら聞き取ること,第2学年では話の論理的な構成や展開などに注意して聞き取ること,第3学年では聞き取った内容や表現の仕方を評価することを示している。聞き取ったことを自分の考えに生かすことについては,第1学年では共通点や相違点を整理すること,第2学年では自分の考えと比較すること,第3学年では自分のものの見方や考え方を深めたり,表現に生かしたりすることを示している。
具体的な活動例として、第1学年では、日常生活の中の話題について報告や紹介をしたり、それらを聞いて質問や助言をしたりすることや、日常生活の中の話題について対話や討論などを行うことが挙げられる。
例えば「鉄道では優先席をなくすべきである」「○○高校は制服を廃止すべきである」「日本は夫婦別姓を認めるべきである」という適宜のテーマに賛成、反対に分かれてディベートをすることがその手段として考えられるが、論理的にそれぞれの立場の考えを理論的に発表できるか、という点とともに話を聞くことに重点を置く必要がある。
そのうえで、第2学年では、調べてわかったことや考えたことなどに基づいて説明や発表をしたり、それらを聞いて意見を述べたりすることや、社会生活の中の話題について、司会や提案者などを立てて討論を行うことが挙げられる。さらに、第3学年では、時間や場の条件に合わせてスピーチをしたり、それを聞いて自分の表現の参考にしたりすること。社会生活の中の話題について、相手を説得するために意見を述べ合うといった活動が挙げられる。特に「話すこと、聞くこと」については、社会人となってから非常に重要視され、「アクティブ・リスニング」などの傾聴話法のトレーニングを新入社員研修などで受講するが、本来は学校で基礎的な部分は習得しておくことが望ましいと思われる。
 また、ロジカルシンキングという論理的思考方法を授業に取り入れることで、将来仕事をする際、年齢に差がある先輩、上司にも好意的にコミュニケーションを図ることができる。
このように、教師は年間計画を立てるうえで、児童、生徒の国語力の向上のために、また、効率的かつ効果的に国語科を学習し、目的を達成するために、「学習の系統性」を重視して工夫を凝らして授業を展開していくことが求められている。

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