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さようなら、メタカル最前線 メタバースカルチャーよ永遠に

2024年4月2日、本日をもって私、アシュトンは「メタカル最前線」の編集長を退任いたします。今後「メタカル最前線」は、2代目編集長・東雲りんのもと、浅田カズラ柘榴石まおりんを編集部デスクに加えた新体制にて、より一層メタバースのユーザーカルチャー発展に貢献できるよう進化をしていきます。

「メタカル最前線」は、2022年4月2日に私が創刊編集長となり立ち上げたウェブメディアです。「メタバースカルチャーの最前線を届ける」をコンセプトに掲げ、VRChatをはじめとしたソーシャルVRのユーザーカルチャーを、実際にそのコミュニティに熱中する編集部員たちとともに届けるべく邁進してきました。

2023年10月には、合同会社アシュトンラボを解散し、株式会社Vへ運営を譲渡するなど、さまざまな変化も経験してきました。本noteでは、私の編集長退任の理由、メタカル最前線創刊からの小史、そして私自身の今後の展望について皆さんにお伝えしていきます。

編集長退任の理由について

理由は大きく分けて2つあります。1つは、私の個人的な理由から。そして、2つは「メタカル最前線」をさらに大きなメディアへと成長させていくための私の判断から、です。

まず、私の個人的な理由について。端的に「VRChat、ソーシャルVRの楽しみ方と、そこへ懸ける想いが変化した」ということです。

これまでも様々お伝えしてきた通り、2021年3月にVRChatを始めてから、2021年12月の『ABEMA PRIME』出演、2022年4月の『メタカル最前線』立上げ、2022年7月の合同会社アシュトンラボ設立、そして2023年10月の同法人解散、株式会社Vへの譲渡。個人的なライフイベントとして2度の引っ越しに、大学への復学。本当にいろいろなことがありました。

私が『メタカル最前線』を立ち上げた当初の想い。それは「注目を集めた一方で誤解もある『メタバース』。そこに実際に暮らし、文化を営む『ユーザーカルチャー』の存在を広めたい。そして、そうした『熱のこもったカルチャーが存在する場』としてVRChatやソーシャルVRをもっと知ってほしい」という想い。これは、私自身が「VRChatやソーシャルVRのコミュニティ全体に熱狂していた」から成立していたものです。

しかし、プレイ年数が重なっていくにつれ、そうした「全体のカルチャー」よりも「身の回りのフレンド」やそこでの小さな出来事の方が私にとって重要度を増していった。現在の私にとって、「メタバース」や「VRChat」は、あくまで「自分の居場所を作れるサイバー空間」といった意味合いに変わってきました。

私は『メタカル最前線』の存在意義がなくなったとは一切考えていません。「メタバースのユーザーカルチャーの最前線を自信をもって届けるメディア」。この存在意義は、むしろソーシャルVRのコミュニティが多様化し、ユーザー1人1人が全体を追うことが難しくなってきた今の規模だからこそ、重要度を増していくし、カルチャーシーンのためにも、クリエイターのためにも、そしてユーザーのためにも『メタカル最前線』というプロダクトが果たしていくべき役割があると考えています。

メタカル最前線小史

『メタカル最前線』は、本日2024年4月2日で創刊2周年を迎えました。
まずは、さまざまな協力者、そして読者とともに3年目を迎えられたことを心より感謝いたします。

『メタカル最前線』が創刊されたのは、いまからちょうど2年前。2022年4月2日です。

VRChatをプレイし始めた当時、私はVRメディア「PANORA」にて主にVTuberカルチャーをメインとする記事を書かせていただいていました。その流れの中で、VRゴーグルに触れる機会や、ゲーミングPCを購入する機会が訪れ、VRChatに辿り着きました。

当初、ほんとうに衝撃を受けました。「すでにこんなにも新しいカルチャーの場が広がっているなんて。なんていままで気が付けなかったんだ」。そしてすぐに思いました。「こんなにも新しくて面白いカルチャーが知られていないなんてもったいない!私みたいに『何で知らなかったんだ』と思う人を1人でも減らしたい……!」。

「PANORA」へきんととさんの主催する「VRoid Fashion Mall」や、黒猫洋品店さまの主催するカソウ舞踏団の演劇「テアトロ・ガットネーロ」などを取材したり、「バーチャル文化アンバサダー」プログラムに応募し、一介のウェブライターの枠を超えた活動を模索したりと、とにかく「このカルチャーを広げるために」という一心で様々な企画を考えてきました。

そうした中、2021年10月。今となってはお馴染みの「Meta」が「メタバース・カンパニー」を目指すと号令をかけ、「メタバース」という用語が一気に社会へ浸透していきました。

「Facebook Connect」2021にて、「Meta」への社名変更を発表するマーク・ザッカーバーグCEO

この時の反応は様々。
「Facebookのレピュテーション隠しだ」と見る向きもあれば、ザッカーバーグの語る「メタバース」のビジョンに「新しい世界」を見る人たち、そしてここぞとばかりに「NFT・ブロックチェーンこそメタバースを実現する」と掲げる人たち。

そして、私は「いやいや、すでにメタバースはここにありますよ。ほら、『VRChat』を見てごらん」と、そう思ったのです。

「人々がVRゴーグルを被って仮想空間で過ごすなんて、想像もできない!」
「いやいや!もうたくさんしてる人います!!」
「メタバースが現実になったらこんなことが起こるんじゃないか?」
「いやいや!もうこんなことが起きてます!!」

「メタバース、もう来てるし、その最前線はここ『VRChat』にこそあるでしょう!」
「いまこそ、『メタバースのVRChat』としてこの実態を興味のある人に伝えなければ!」

こんな具合に、急いで書き上げた「PANORA」でのコラム記事「VRChatに週100時間ダイブするドハマりプレイヤーが語る、もはや引き返せないメタバース生活」が大きな反響を呼びました。

そして、『ABEMA PRIME』取材班から声がかかり、(ネット)テレビ出演を果たします。

さらに、この熱狂を絶やすまいと、ぬこぽつさんと共同主催した『年越しメタバース2021』。

この流れのまま、急ピッチで初期の運営体制である私、ひものさん、水瀬ゆずさん、笑福さん、そしてほなふくさんなどが集まり、4月2日。『メタカル最前線』が生まれました。(ちなみに、前日4月1日に水瀬ゆずさんとのルームシェア企画「メタバースシェアハウス」が始動しています)

『メタカル最前線』立上げ前夜のとある会議風景
ウェブサイトの背景写真を撮影する際の風景
みくにきさんに撮影をお願いし、たくさんのエキストラに集まっていただきました

当初から、個人ブログではなく「メタバースメディア」と銘打ってプロモーションしていたメタカル最前線ですが、かなり急ピッチで立ち上げたこともあり当初は「最悪、私が月に50本でも60本でも書けば成立する」というような見切り発車状態。

そこから、4月後半に東雲りんさんが、6月に柘榴石まおりんさん、橘いんでーさんが、といった具合に編集部メンバーが増えていき、徐々に体制が整えられていきました。

2023年4月の編集部メンバーと撮影

7月には、運営体制を強化しようと合同会社アシュトンラボを設立し、「法人運営のメディア」という体裁を整えましたが、これは知っての通りの顛末。2022年7月~2023年10月は、編集部体制が徐々に強化され、メディアとしてのプレゼンスは確実に増していっているのに、経営としてはまるで体を成していないという乖離状態が続き、精神的摩耗もかなり酷かった時期でした。

しかし、すでに協力してくれる人たちがいる。そして、求めてくれる人たちもいる。一時期は、運営停止まで検討したこともありましたが、東雲りんを始め編集部メンバーや周りの人間が、それを止めてくれました。この時期から、「私個人のモチベーション」と「役割としての『メタカル最前線』」を分けて考えるようになり、前者はどうだとしても、後者がある限り『メタカル最前線』自体は成長させなければいけないと考えるようになりました。

そして、この時期から実質的な編集業務を東雲りんさんに任せてきました。そうした半年以上もの積み上げがあっての「みんなで創る『メタカル最前線』」へのフェーズの移行という新たな目標が私の中で確かなものへと変わっていきます。

これからの『メタカル最前線』に託した想い

そんな中、昨年6月頃に株式会社Vの代表・AliceさんからDMをいただきました。私のnote「メタバースで起業して1年で諦めた話」を読んでのことでした。株式会社Vとは、パリコレ参加のブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」衣装販売のニュースを一度扱ったことがあるといったもの。

Aliceさんから「ソーシャルVRの主要メディアがこのタイミングで縮小・なくなってしまうのはもったいない。一緒になんとかしよう」「ユーザー発の発信だからこそできることがあるはず。V社でサポートできることがあればしたい」と信頼できるご提案をいただき、運営権の譲渡とともに傘下に入ることを決断しました。

「役割としての『メタカル最前線』」に可能性を見出してくれたからこそ、昨年10月の株式会社Vへの譲渡が成立したと考えています。そのために記者の募集を含めた編集部体制の強化を急ピッチで進めています。

現に、『メタカル最前線』は2024年4月時点で、3人の編集部デスク、8人の編集部記者、寄稿者を含めれば15人以上の編集部体制で運営をしています。これからは、「1人でカルチャーシーンを見渡す」フェーズが終わり「編集部メンバー1人1人が、各々の抱える『メタバースカルチャーの最前線』を伝える」ように変身を遂げなければなりません。さらに、カルチャーシーンを創り上げるユーザー自身とももっとコミュニケーションをとれる体制を強化していき、「みんなで創る『メタカル最前線』」へと進化を遂げなければ「メタバースカルチャーの最前線を自信をもって届ける」というミッションは達成されないでしょう。

私は、良くも悪くも計画性がなく頑固な性格です。大きな絵を描くことは得意でも、それを実現させる計画能力や実行能力は乏しい。それが「チーム」や「組織」になればなおさら。私の得意技はちゃぶ台返しです。正直、先述の気持ちの変化もある一方で、「この規模に成長した組織を、『みんなで創り上げる』というコンセプトのもと運営できるイメージがわかない」というのも率直な感想です。

新編集長の東雲りんさんは、『メタカル最前線』を立上げ当初から支えてくれた弊誌の記者第一号です。天然なところもあると思いますが、そういった「余白」も含めて、現在の編集部メンバーからは支えられている存在で、「みんなで創る」というコンセプトにも十分応えられる人選だと考えています。

さらに、新体制では従来より『メタカル最前線』をクオリティの面で支えてくれていた柘榴石まおりんさん、さらにソーシャルVRコミュニティを伝える編集者・記者としてこれ以上の適任はいないと考えられる浅田カズラさんもJOINしました。きっと、表面的に変化していく部分があったとしても、「メタバースカルチャーの最前線を自信をもって届けるメディア」としてこれまで以上の速度で成長を遂げていくと考えています。

私がいなくなった後も『メタカル最前線』をよろしくお願いいたします。

蛇足:これからの「アシュトン」について

もうここまでで、かなり長くなってしまったので短く終わらせます。
これからも、私アシュトンは、VRChatに残り続けます。むしろ、「カルチャー全体を見渡さなければ」「カルチャー全体を負わなければ」といった役目を終えたことで、これまで以上に「私にとってのVRChat」を追求できるといってもいいでしょう。

これからは、ある意味で初心を取り戻して、いちユーザーとして、全力でVRChatを楽しんでいくつもりです。なんなら、さっそく新しいプロジェクトや、やりたいイベントなど、仕込んでいるもの、構想しているもの含めていくつかあったりします。これからは、「個人」の枠を出る活動は当分やらないかなと思いつつ、「個人」の力をリゾーム的に集結させたコミュニティ、コミューン的なものは作っていきたいなとかも考えてます。

また、「執筆」は幸いなことにこれまで様々な経験を積ませていただいたこともあり、自信をもってお受けできるお仕事だと感じています。私自身の興味である「オルタナティブなカルチャーの最前線」といったところは一貫して今も持ち続けています。まだまだ、執筆業は続けていきたいと考えているので、ぜひ何か機会やご相談等ございましたらお気軽にお声がけください。

今後の個人的な活動方針や、やっていきたいこと、関わりたいお仕事などは、個人的な場でもnoteやXなどソーシャルな場でも、積極的に発信していきたいと思っていますので、今後ともみなさま何卒よろしくお願いいたします。

それではみなさま、「次回作にご期待ください」!

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