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Withコロナ時代のアジアビジネス入門㊿「K-POP<BTS>と韓国大統領選」@駐日韓国大使インタビュー

韓国コンテンツは騎馬民族DNAで世界へ挑戦
 K-POPのBTS、「イカゲーム」、「愛の不時着」、「パラサイト半地下の家族」など日本でも人気のある世界的な文化コンテンツが韓国で生まれる背景は何だろうか。
 2月1日に日本と韓国の間で初めての経済連携協定となる包括的経済連携(RCEP)が発効され、姜昌一(カン・チャンイル)駐日韓国大使にインタビューする機会があったので、韓国の文化コンテンツについて聞いてみると、次のような印象深い答えが返ってきた。
 「韓国人はもともと騎馬民族の気質を持っていて、モンゴルから中国東北部を経て韓国に至るまで遊牧民の血が流れている。そのためか、前を向いて行動する気質があり、外に出ようとする気概が世界に進出する背景になっている」
 「韓国は歴史的にいろいろな経験がある。植民地であったし、国が分断され、戦争の経験もある。今も分断の状況がある。こうした歴史的な背景あるから、平和を愛し、外部に偏見を持たない方が多い」
 「韓国は1990年代、IT文化がスタートした際、早い段階で適応でき世界をリードしている。今や韓国は一人あたりのGDPが日本と同程度となるほど成長を遂げている。こうした経済的な背景も文化コンテンツが世界に進出する基盤になっている」

 姜大使はソウル大学卒業後、東京大学で東洋史学を学んで修士、博士課程を修了した。済州島出身で国会議員を4期務めた。革新系与党「共に民主党」に所属し、2017年に韓日議員連盟会長に就任した知日派であり、21年5月駐日韓国大使に就任した。
 大使によると、韓国は今から20年前まで海外の文化コンテンツの事情を知らない「井の中の蛙」だったという。ところが、1998年、金大中元大統領が小渕恵三元首相との会談で文化の開放がされたことが海外へ進出するきっかけになった。日本で韓流ブームが起きて韓国の関係者は自信を持ち、世界進出の動きが本格化した。文化コンテンツの産業を担うのは若い人たちである。韓国の若者は死力を尽くして取り組む習性がある。若手がベンチャー企業を起こし、グローバルの視点を持っていることが良い条件になっている。だから、新しいカルチャーの時代が始まったという。
3・9 韓国大統領の帰趨を決める若者票
 前を向いて突破力のある騎馬民族の気質を持つという韓国の若者が影響力を持つのは文化コンテンツばかりでなく、政治の帰趨を決める選挙の投票行動である。
 3月9日投開票の韓国大統領選は終盤戦を迎えている。革新系与党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)京畿道前知事と保守系の最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長が激しく争っているが、選挙戦のカギを握るのは特定の政党を支持しない無党派層が多い20~30代の動向である。「Z世代」や「ミレニアル世代」と呼ばれる年代で、就職難や不動産の高騰など機会の不平等に敏感であるといわれるが、3月9日はどういう投票行動をとるのか。
遊牧民の系譜は日本にたどり着かず?
 一方で、日本の若者は外の世界に出たがらず、選挙での投票率も低いというのが定説だ。
 遊牧民の系譜は朝鮮半島から日本までたどり着かなかったのだろうか、と思わず考えてしまい、司馬遼太郎の「モンゴル紀行 街道をゆく5」(朝日文庫)を読むと、次のような記述があった。
 <騎馬民族が五世紀のころの日本列島にやってきて征服王朝(応神、仁徳を代表とするような)を樹立したとするのが、江上波夫氏の「騎馬民族日本征服論」である。そのころを象徴するかに見られる後期古墳には、馬具が出土したり、馬に関する壁画などが多く出てくるが、しかしその後の上代日本では騎馬集団の大衝突という戦争形態は見られない>
 司馬遼太郎が取り上げたこともあり江上氏の「騎馬民族日本征服論」は世に広まったが、学界で疑問視する意見が根強いところを見ると、遊牧民のDNAは日本まで届かなかったことになる。


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