清宮克良 アジアビジネス入門ジャーナリスト

アジア未来総研代表。<アジア×地域創生=ミライ>を掲げ、アジア、日本、地方の情報を発信…

清宮克良 アジアビジネス入門ジャーナリスト

アジア未来総研代表。<アジア×地域創生=ミライ>を掲げ、アジア、日本、地方の情報を発信している。毎日新聞社政治部からワシントン特派員、執行役員などを経て退社。東海大学研究員。北海道湧別町出身(ふるさと特派員)

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アジアビジネス入門66「シン・ゴジラとシン・国際貢献」@アジア人材エコシステム(1)

庵野総監督が込める「シン・ゴジラ」の新解釈  日本語の接頭語に新たに加わった「シン」だが、その用法は庵野秀明総監督が製作したシン・ゴジラがまずは想起される。評論家の武田徹・専修大学教授によると、シン・ゴジラの「シン」には同音の「震」「神」「真」の漢字の意味が重ねられているという。放射能を帯びた巨大怪獣は東日本大震災による核災害のメタファーで、文明都市を破壊する姿は驕った人間を罰する神を彷彿させるといわれる。  庵野総監督の関わった作品は、シン・エヴァンゲリオン、シン・ウルト

    • アジアビジネス入門65「令和版<山谷ブルース>とインバウンド」@地域再生を考える(4)

      都内屈指の居酒屋「丸千葉」に向かう  目指す台東区の居酒屋「丸千葉」は都内屈指の名店と太鼓判を押す。「下町酒場巡礼」(2001年、筑摩書房)「下町酒場巡礼もう一杯」(2003年、同)の3人の著者の一人、宮前栄氏=ペンネーム=の弁である。宮前氏は古くからの知り合いで労働問題などを担当するベテランのジャーナリストだ。今も首都圏の通信部で現役を貫いている。  宮前氏とは上野からバスで吉原大門に向かい、そこから歩いて、かつて山谷(さんや)と呼ばれたエリアに踏み入れた。 インバウン

      • アジアビジネス入門64「ピースフルスクール<北の聖地>」@地域再生を考える(3)

        対立から話し合いでの解決を学ぶ  イスラエルによるガザ空爆、ロシアによるウクライナ進攻・・・。被害を受けた子どもたちが泣き叫び、笑顔と程遠い表情がテレビ画面に映し出されるたびに胸が締め付けられる。  そんな戦火を交え分断する世界がメディア空間で日常化する中、幼児期の子どもを対象にするピースフルスクールプログラム(PSP)のレッスンを見る機会があった。  「ピースフルってどんな状態?」。  「それはニコニコした顔になることだよ」。  北海道湧別町の町営の幼児教育保育施

        • アジアビジネス入門63「沖縄のバスケW杯と米軍基地」@地域再生を考える(2)

          ■ファーストスラムダンク、宮城リョータは沖縄出身  高校バスケットボールを舞台にした大ヒット映画「THE FIRST SLAM DUNK」(ファーストスラムダンク)の主人公、神奈川県立湘北高校のポイントガード(PG)、宮城リョータは沖縄出身だ。沖縄での生い立ちとバスケットボールとの出会いから、引っ越した湘南で湘北高校に進学してチームメートの桜木花道らと成長していく姿を描いたストーリーは、日本ばかりではなく、アジア各地で感動をもたらした。 ■オーストリア戦を観戦 健闘の日本

        アジアビジネス入門66「シン・ゴジラとシン・国際貢献」@アジア人材エコシステム(1)

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        • Withコロナ時代
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          アジアビジネス入門62「チューリップに惹かれて移住した元リケジョ」@地域再生を考える(1)

          ■知り合いゼロのまっさら状態で北海道へ  よそ者という言葉を意識したのは、神奈川県から北海道オホーツク沿岸のほぼ中央に位置する湧別町への移住を決めた地域おこし協力隊、竹内咲樹(たけうち・さき)さんの存在だ。彼女は役場の企画財政課に所属し、ふるさと納税や町を代表する観光スポット「かみゆうべつチューリップ公園」などのPR業務をしている。  湧別町公式noteを担当する元リケジョの竹内さんは次のように書いている。  「私は九州から東北まで日本各地6カ所に住んだ後、1枚のチュー

          アジアビジネス入門62「チューリップに惹かれて移住した元リケジョ」@地域再生を考える(1)

          アジアビジネス入門61「虫たちが教えるアニミズムとポスト資本主義」@日本型グローバルを考える(3)

          ■虫の存在が普通に思える<緑の癒し空間>  札幌市南区真駒内郊外の山の傾斜地を<緑の癒し空間>にするべく、園芸療法士の石山よしのさんが造成した「わたしの庭 レラ・チュプキ」は夏の到来で多くの虫たちが飛び交っていた。最初は虫たちに過剰に反応しているが、心地よい風がそよぐ緑と光の空間に身を置いていると、そのうちどうでもよくなり、自然の中に虫がいるのは普通のことのように思えてくる。  経済人類学者のジェイソン・ヒッケル氏はアフリカ南部の小国エスワティニ(旧スワジランド)で育った

          アジアビジネス入門61「虫たちが教えるアニミズムとポスト資本主義」@日本型グローバルを考える(3)

          アジアビジネス入門60「韓国のカ・イ・カ・ンと若者の生きづらさ」@日本型グローバルを考える(2)

          ■キムチの味と韓国語「シオナダ」  小雨が降りしきるソウル市庁近くの目抜き通りはデモ隊の流れを警察の大型車両が取り囲んでいた。「看護師1人に患者5人の医療体制に改善を」とデモ隊の大音響が鳴り響く。  蒸し蒸しする梅雨模様の中、デモがひと段落した後、市庁エリアの韓国料理店に入り、キムチを食べると在日韓国人の知り合いが「アー、シオナダ」とホッとした表情で言った。  韓国語「シオナダ」の意味を聞いたところ、昔、薬師丸ひろ子が映画「セーラー服と機関銃」でつぶやいた名台詞「カ・イ

          アジアビジネス入門60「韓国のカ・イ・カ・ンと若者の生きづらさ」@日本型グローバルを考える(2)

          アジアビジネス入門59「SLAM DUNK旋風と香港・アジア」@日本型グローバルを考える(1)

          経済に活路 華人社会の逞しさ  香港の香港島北部、銅鑼湾(Causway Bay)にある複合施設「タイムズスクウェア」(Times Square、時代廣場)に日本のアニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」の巨大なポスターパネルが掲げられている。タイムズスクウェア5階のポップアップストアの案内である。香港はコロナ規制の緩和で街には人出が戻り、2019 年に起きた民主化を求めるデモの残影はすでにない。政治ばかりでなく、経済に目を転じれば、香港株式市場では中国株が大きく

          アジアビジネス入門59「SLAM DUNK旋風と香港・アジア」@日本型グローバルを考える(1)

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門58「ゴールデンカムイと<智慧の庭>」@札幌「テレサの森」物語(6)

          天から役目なしに降ろされた物はひとつもない 「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に2014年から連載された『ゴールデンカムイ』が2022年4月28日に全314話で最終回を迎えた。野田サトルによる明治末期の北海道と樺太(サハリン)を舞台に死刑囚が隠した金塊をめぐるストーリーである。単行本全31巻で発行部数は2000万部を超えている。  単行本の表紙カバーの袖のところにはアイヌ語の言葉が毎巻書かれている。 <カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門58「ゴールデンカムイと<智慧の庭>」@札幌「テレサの森」物語(6)

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門57「ニセコ町の共感資本社会と利他の思想」@デジタル経済と哲学(5)

           政府与党はWeb3(ウェブスリー)を日本の成長戦略の一つに据える。テクノロジーをめぐる論議が先行する中で、非中央集権で自律分散型のブロックチェーンを生かした経済社会とはどういうものなのか。共感資本社会を目指して非営利株式会社eumo(ユーモはEudaimonia持続的幸福の略。本社・東京都港区)を運営する新井和宏・代表取締役に経営哲学を聞いた。 SDGs未来都市ニセコ町に移住 --北海道ニセコ町に移住しましたね。  新しい芽はテクノロジーとともに実体経済のプレーヤーがいなく

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門57「ニセコ町の共感資本社会と利他の思想」@デジタル経済と哲学(5)

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門56「襲撃事件と中間層の崩壊」@ルサンチマンの標的は<時代性>か

          大きな喪失感とリアリティのなさ  参院選の開票直後にNHKは「自民・公明で改選過半数は確実」「改憲4党で3分の2議席を上回る」の速報を流した。  2日前に安倍晋三元首相が奈良市内で街頭演説中に銃撃されて死亡した。  安心・安全の日本で起きた凶行に大きな喪失感はあるがリアリティはない。  容疑者は特定の宗教団体名を挙げ、「母親が団体にのめり込んで破産した。安倍氏は団体を国内で広めたと思い込んで恨んでいた」と供述しているという。  今回の襲撃は個人的な恨みだけなのか。そうは思わな

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門56「襲撃事件と中間層の崩壊」@ルサンチマンの標的は<時代性>か

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門55「<錦鯉>デジタルアートと世界観」@デジタル経済と哲学(4)

          経産省若手の抽象的概念的なイメージ  自民党のNFT(非代替性トークン)政策検討PT(平将明座長)が4月、岸田文雄首相にWeb3(ウェブスリー)を日本の成長戦略の柱に据えるように提言した。最近のWeb3の盛り上がりはインターネット黎明期のウィンドウズ95が出た1990年代半ばの様相を呈する。経済産業省の蓮井智哉大臣官房審議官にインタビューにしたところ、Web3の「世界観」という言葉が出てきたのが印象的だった。 --Web3はじめ、関連するブロックチェーン、NFT、DAOは具体

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門55「<錦鯉>デジタルアートと世界観」@デジタル経済と哲学(4)

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門54「チャップリン映画と<チュプキの風景>」@札幌「テレサの森」物語(5)

          「街の灯」から「シネマ・チュプキ・タバタ」へ  「街の灯」(まちのひ、1931年)はチャールズ・チャップリン主演監督によるコメディ映画である。目の不自由な花売り娘に恋するホームレスの姿を描いている。YouTubeで見ると、無声映画ながらも流れる音楽が2人の心情を奏でているようで、弱者への優しい眼差しが感じられる名作だ。  「街の灯」の英訳は「シティ・ライツ」。「街の灯」という無声映画の感動を目の不自由な人々にも伝えたいとの想いから「シティ・ライツ」の名称をつけた団体がある

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門54「チャップリン映画と<チュプキの風景>」@札幌「テレサの森」物語(5)

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門53「伊藤穰一NFT論<本物であること>」@デジタル経済と哲学(3)

          伊藤氏<NFT=人間の純粋な部分と相性がいい>  伊藤穰一氏の新著『テクノロジーが予測する未来web3、メタバース、NFTで世界はこうなる』(SB新書)を読んで次の言葉が印象に残った。 <物理的にどうかではなく、「本物であること」というかたちにならない価値、ノン・ファンジブルな価値をトークン化し、取り扱い可能にしたものがNFTです。本物を選ぼうと偽物を選ぼうと、物理的にはほとんど何も変わりません。変わるのは自分の気持ちです。NFTは、そんな僕たち人間の純粋な部分と相性のいいト

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門53「伊藤穰一NFT論<本物であること>」@デジタル経済と哲学(3)

          Withコロナ時代の北海道ビジネス入門⑦「黒船ペリーも驚く北大祭ホタテカレー」@湧別町未来づくり担当課(2)

          ペリー来航がきっかけのホタテの学名  黒船を率いて江戸湾浦賀沖に姿を現したペリー提督は日本に開国を迫ったばかりでなく、寄港した函館からホタテの本種を持ち帰って一行の一人が学名をつけたことを遅ればせながら初めて知った。  <江戸時代末期の1854年にペリーの率いるアメリカ艦隊が来航した際に函館から本種を持ち帰り、Patinopecten yessoensisとして1856年に新種記載された。ラテン語でpatinoは「皿」、pectenは「櫛(くし)」、yessoensisは

          Withコロナ時代の北海道ビジネス入門⑦「黒船ペリーも驚く北大祭ホタテカレー」@湧別町未来づくり担当課(2)

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門52「カンボジア・デジタル通貨と非<アナーキー>思想」@デジタル経済と哲学(2)

          ビットコインやフェイスブックの思想と相違  日本のスタートアップ企業「ソラミツ」(東京都)はカンボジアの中央銀行デジタル通貨システム「バコン」を開発し、現地で定着化を図っている。岸田文雄首相が5月5日、訪問先の英国ロンドンの金融街シティで講演し、デジタル人材、イノベーション、スタートアップ、グリーン・デジタルへの投資を柱とする「新しい資本主義」の指針を発表したのを機に、先進的な取り組みをしている同社の宮沢和正社長にデジタル経済の未来について話を聞いた。  インタビューの中で「

          Withコロナ時代のアジアビジネス入門52「カンボジア・デジタル通貨と非<アナーキー>思想」@デジタル経済と哲学(2)