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【ASIBA 1期生のその後を追う ③】

Problem -小さな箱に大きな問題- 馬場悠輔

昨年11/25に清水建設のNOVAREにて行われたカンファレンスイベントから約二か月が経ちました。登壇した各チームは、その後もプロジェクトに対する熱意を失うことなく、ASIBAを出発点として様々な活動や社会実装を行っています。全てのプログラムを終えたASIBA第1期生が今どのような道を歩んでいるのか、彼らのその後を調査しました。

カンファレンスイベントの様子はこちらから


カンファレンス登壇時の様子

東京藝術大学美術学部建築科学部B4の馬場悠輔は、「Problem -小さな箱に大きな問題-」と題して、自身の生活する居住空間を用いたパフォーマンスアートを行いました。段ボールや白地布で作成した大きなハコを、数畳ほどの部屋に押し込んだ未だかつてない作品は、そのコンセプトや表現に関して大きな議論が巻き起こりました。
あわせて本作品は、ASIBAでのピッチイベントから程無くして行われた東京藝術大の卒業制作展において、建築学科における最優秀賞(買い上げ賞)を受賞しています。

馬場による作品「Problem」(一部)

一期生の中で最も難解といわれる本作品を通して、馬場は何を伝えたかったのでしょうか。

近代以降大量に生産されてきた無個性の箱型空間は、特定の機能を満たすことに縛られて、人間が生活する上での建築との関わり、すなわち「境界」を固定的なものにしてきました。こうした関係性は形式的には何の問題もないにも関わらず、人間の行動にルールを課し、生活を退屈なものにしてしまっているといいます。
こうした両者の関係性を変容させる存在として、poché¹⁾を設計し、対象の空間へと持ち込みます。pochéは人間の生活の妨げとなるような「やわらかくて大きいハコ」であり、それによって固定されてきた境界は揺らぎ、更新されていきます。「既成の環境になにか『問題』があるとき、境界は描き変えられ、空間は"新鮮さ"を取り戻す」と馬場は語ります。

1) poché [pouʃei] 〈名〉フランス語。大まかにスケッチするpocherに由来

既に記載したとおり、ASIBAでの発表時から大きく提案を変えることなく、東京藝術大学の卒業設計でも展示をおこない、建築学科の学内最優秀賞を受賞しました。また、今年3月に行われる東大・東工大・藝大の選抜者による、「2024年三大学合同講評会」にも出展予定です。(詳細は近日公開)

藝大における卒業制作の展示

今後の計画やキャリアについては、まだあまり決めていないと語っている馬場。「修士に進むでもないし、(会社に勤めることなどは)多分ないと思うから、進路に関してはこれから考えなくてはならない」。これからも既存の枠組みに収まることなく、大きな問いに挑戦した、刺激的な制作を続けていってほしいものです。(文:宮田龍弥)


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