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デヴィッドボウイ全アルバム聴いてみた

こないだ久しぶりに京都に行ってみたら、思いの外車の運転は荒いし寒いし怪我するしであまり生活には向いてないなと思ってしまいました、三代目齋藤飛鳥涼です。

さてもう2月に入ってしまいましたが、年明けで新譜のリリースも無いことだし、これを機に誰かの作品を一気に聴いてみようってなったわけです。

そんなわけで今回は久しぶりの脳筋アルバムランキング企画ということで、イギリスが生んだ稀代のカリスマことデヴィッドボウイ編です。

デヴィッドボウイに対する雑感

ランキング発表の前にデヴィッドボウイに対する個人的な見解というか雑感について述べさせてください。

皆さんはデヴィッドボウイについてどういうイメージを持っていますか?

カッコいい人、時代と共に常に変化し続けた男、火星から来たロックスター、カッコいい人、派手なビジュアル、坂本龍一にキスした人、カッコいい人、京都の喫茶店で女子高生に英語教えてた人、カッコいい人、カッコいい人etc...

色々なイメージを持っているかと思いますが、この際だからズバリ断言します。デヴィッドボウイとは、ズバリ不変のロックンロールの美学を持ったソングライターであるということだ。今回全てのアルバムを聴いた上で辿り着いた結論だが、実は彼のディスコグラフィーの中でも評価の高い作品には高確率でブギーとも言えるような、いわゆるグラムロック的なゴテゴテとスウィングするようなロックンロールを基調とした楽曲が多いことに気付く。このデヴィッドボウイ的ブギーこそ彼のソングライティングの真骨頂であり、そこに彼特有の非常に人間臭くて暖かいメロディラインが非常に癖になる味わいで、他のロック系ビッグネームと並べてみた時の圧倒的異質感を感じさせる要因だ。

しかしこのデヴィッドボウイ的ブギーという特色に気付く人はあまり多くないという感じはありまして、なぜかというと彼は常に変化を恐れず挑戦する人というイメージがあまりにも付いていたからなんですよね。加えて視覚的にも特化したアーティストだったため、時代ごとに明確なコンセプトを持ったキャラクターを演じていたこともソングライティングの一貫性に気付きにくい要因なのかなとも思います。そして彼自身もソングライティングの一貫性には気付いており、87年発表の「Never Let Me Down」で限界点に達する&同年のベルリンの壁でのライブやその数年後のワールドツアーなどキャリアの総決算を図ろうとします。90年代から「The Next Day」までの期間は影が薄い印象がありますが、ここで注目したいのがボウイ流ブギーの脱却とオルタナへの挑戦というのが死ぬまで続くことになるわけなんですよね。

このように彼のキャリアをデビューから「Never Let Me Down」までで一つの時代と考えると、装飾こそ変われど割と不変で堅実なソングライティングを遂行していることがわかり、「Tin Machine」から「Black Star」まではその時代のオルタナへの適応を試みてることが伺えます。

以上のようなことを鑑みたうえで独断と偏見で選んだデヴィッドボウイ全オリジナルアルバムのランキングを発表したいと思います。なお対象作品は生前のオリジナルアルバムのみとなっており、よくオリジナルアルバム扱いされがちなカバーアルバム「Pin Ups」、最近リリースされた未発表作「Toy」については除外していますので悪しからず。 


27位 Hours

1999年発表

記念すべき最下位です。メロウな感じの曲調が目立つ作品なんだけど、全体的にダラついた感じが否めず、あと曲が割と似通った感じで全アルバム通しで聴いた時に印象が薄かったなという感じですね。多分ある程度時間を置いて聴いたら意外とよくなるかもしれないアルバム。


26位 Heathen

2002年発表

90年代のボウイと「The Next Day」での復活する道のりを繋ぐ架け橋的なアルバム。そのためどっち付かずといった感じが否めず、これだったら「The Next Day」聴くよって結論に至った。


25位 Tin Machine II


1991年発表

デヴィッドボウイ好きの間でも扱いに困るトピック、それが88年に結成されたティンマシーンである。「Let's Dance」以降のポップスターのイメージからの脱却を図るためのバンドであり、当時のオルタナ・インディーロックシーンへの彼なりの回答というコンセプトがあったように思えるが、2作目となる今作ではそのコンセプトからかなり乖離してしまった感が否めないんですよね。特にサウンドの肝であるギターソロがオルタナというより完全にメタルのそれになってるのも笑。

24位 Tin Machine

1989年発表

またまたティンマシーンが続きますが、こちらは商業的にもそこそこ成功した方のアルバムです。このティンマシーンというプロジェクト、来るべきオルタナのメジャー化を予見したボウイの嗅覚(後々ライブでピクシーズの「Debaser」をカバーしてたり)は流石だし、試みとしてはボウイのキャリアにおいても大成功の部類に入るポテンシャルはあったと思うんですよ。じゃあなんでティンマシーンは失敗したのか?理由は三つあります。一つ目はボウイが結成したバンドという企画色が強すぎたこと、二つ目はオルタナをやるにしてはメンバーの演奏技術が高すぎたこと、三つめはかなり酷な理由だけどいかんせん全員おじさんだったこと。頑張ってR.E.M.みたいな感じを出そうとはしてるのに、拭えないスタジアムロック感とオールドウェイブな味付けが残念な一枚だ。


23位 Outside

1995年発表

ナインインチネイルズに感化されたボウイがインダストリアルに果敢に取り掛かった作品で、猟奇殺人をテーマにした全5部作で作成する予定が売り上げ不振などによって頓挫した苦い作品ですが、個人的にはインダストリアルな風味に悪い意味でボウイが飲み込まれすぎているというか、噛み合わせが悪いなという印象が目立った感じです。でもセブンの主題歌の「The Hearts Filthy Lesson」だけは結構良いなと思いますた。


22位 David Bowie

1967年発表

君は誰だ???状態でお馴染みのデビュー作、ボウイ本人も公式としてカウントしたがらない作品です。当初はレコード会社の意向もあってかボブディランのようなフォークシンガーとして売り出したかったようだが、出来上がった作品はビージーズっぽいヘンテコサイケポップスといった感じに。しかしながら彼が最も影響を受けたアーティストの一人でもあるシドバレットを彷彿とさせるバロックポップ、そして後の「Space Oddity」に繋がる非凡なメロディセンスなど随所にらしさは見えるかなと。


21位 Reality

2003年発表

「The Next Day」の下位互換。多分他の人が同じような感じでデヴィッドボウイ全アルバムランキングとか作ったらもうちょい上の順位に行くとは思うけど、個人的にはこれを聴くんだったら往年の切れ味を感じられる「The Next Day」を聴いた方がよくない?ってなってしまいました。無念。


20位 Tonight

1984年発表

デヴィッドボウイ神話が崩れた悪名高き作品として語られる印象が多いけど、いわゆるバッド80'sと呼ばれる音響処理に耐性があるか否かで評価は変わってくる作品だと思うゾ。実際この時期の作品はポップスターとしての立ち位置を確立しただけあって聴きやすいものが多いんだけど、個人的にはこういう典型的な80年代ポップス自体は好きだから全然イケるんだけど、ビーチボーイズのカバーとかよくわからないレゲエみたいなコンセプトがぐらついてる感じがいけ好かないなと思ってこの順位に。


19位 The Man Who Sold the World

1970年発表

明確なコンセプトを持った活動スタイル、盟友ミックロンソンの参加といった後のグラム期の軸が見えてきた作品。確かにミックロンソンの参加によってかなりロックロックした感じのボウイ流ブギーになってきたんだけど、前作「Space Oddity」で見られたメロディセンスがなぜか埋没しちゃったんですよね。これが非常にいただけなくて、どの曲も凄く消化不良感があって記憶に残る曲が少なかったなという印象を抱いてしまった。南無。


18位 Black Tie White Noise

1993年発表

これもデヴィッドボウイアルバムランキングなんかをやると最下位筆頭候補の一つに上がるやつだけど、いかんせんこの時期のSimply Redとかみたいなのっそりしたクラブビートに乗っかるR&Bが割と好みなのでこの順位に笑。じっくり聴いてみるとビートはかなりヒップで良いし、UKブルーアイドソウルがイケる人なら結構好きになれると思うよ。


17位 Diamond Dogs


1974年発表

名曲「Rebel Rebel」を収録したグラム期のラストを飾る作品。この字面だけ見るとかなりいい感じに見えるのだが、前2作と比較した際に全体的にパンチ不足な感じは否めず、それもそのはずでそれまではいたミックロンソンの不在などサウンド面でそれまでのボウイ流ブギーを支えてた面々が欠けているのが効いちゃってるんですよね。とはいえ後のソウルミュージックへの傾倒を伺わせる曲もあってそれは良いなと思ったかな。


16位 Lodger

1979年発表

間に借りる人と書いてロジャーです。ベルリン三部作で括られるけど、かなり変な曲が多いなってのがまず最初の印象。それと音が前2作と比べて曇った感じがあって、好みが分かれるのも納得。もはやベルリンだけでなくアフリカ、エスニックといった感じでかなりワイドな視点を感じられ、同じイーノプロデュースのトーキングヘッズに似たアプローチだと思う。(余談だが今作に参加してるエイドリアンブリューが後に参加するキングクリムゾンもヘッズっぽいアプローチになる)


15位 Never Let Me Down

1987年発表

「なぁみんな、80年代だからって理由だけでこの作品をディスるのは辞めにしよう。」って俺の心の中のウッディ(CV.唐沢寿明)が語りかけています。ボウイ作品の中でも一番ポップ風味が強いロックアルバムだけど、この作品の絶対的な魅力は前のめりになるような疾走感と力強さが突き抜けている点だろう。純粋に頭を空にした時に聴くには持ってこいな作品じゃないかな。


14位 Space Oddity

1969年発表

ウルトラ大名曲「Space oddity」が収録されているということだけでも充分評価に値すべき一枚。原点にして頂点というかこのどこか程よい人間臭さがあるメロディこそデヴィッドボウイの真骨頂であり、派手な見た目とは裏腹に聴き手に温かい印象を与える(この部分が欠けてたのが80年代以降の作品なので、コアなボウイファンがその時期の作品を嫌うのも納得できる)稀有な才能だと思います。他の曲も聴きやすいメロディが特徴で、進化への道筋を見出した作品。


13位 Earthling

1997年発表

「Outside」を聴いた時にはボウイとインダストリアルって噛み合わせ悪いんだなって思ってたけど、この作品くらい貪欲に取り入れちゃうと一周回って凄いってフェーズまで来てしまう。プロディジーとかあそこらへんのゴスっぽいビッグビートの影響があって、そこに彼の持つロックっぽさもあるからyukihiroの書いたラルクの曲みたいな味付けに。サウンドのアグレッシブさならトップ3くらいに入る作品。


12位 Hunky Dory

1971年発表

デヴィッドボウイというアーティストが最初の最適解を見つけた記念すべき作品だ。オープニングを飾る「Changes」はなにを隠そう、僕がボウイの楽曲の中で最も好きな曲だ。とにかくソングライティングが冴えており、これでもかと美曲のオンパレードに酔いしれる。ソングライターとしてのデヴィッドボウイを楽しむための一枚。


11位 The Next Day

2013年発表

みんなが待ち望んでいたデヴィッドボウイ流ブギーがこれでもかと炸裂している傑作。このアルバムが発表された年といえばアクモンの「AM」がリリースされ、クラシカルでモノクロなUKロックが総決算に入ったタイミング。まさにそんな瞬間にここまで往年のファンのみならず、若いリスナーにもブッ刺さるであろう小気味良いロックンロールアルバムを出すんだから、時代を読みとる圧倒的なセンスを感じてしまう。


10位 The Buddha of Suburbia

1993年発表

久しぶりのイーノとのタッグで組んだ、デジタルサウンドに取り組む契機となったアルバム。映画かなんかのサントラということもあってインストも多いのだが、これがまたイーノ仕込みの良質なアンビエントになっていて良き。また本人もソングライティングの勘が戻ってきたというように、アジアンテイストなメロディラインが心地よいエッセンスとなっている。


9位 The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars

1972年発表

デヴィッドボウイの代表作として名高い一枚です。思いの外順位が低いなって感じる人も多いでしょうが、この時期の作品だったらこれよりもう一枚ロックしてるやつがあるじゃないですか、そっちの方が好きなんですよねー。とはいえこの作品には名盤特有のマジックがかかっていて、流れで聴いた時物凄くテンポが良い。そしてバンドサウンドも程よく軽い。この絶妙な軽さこそが肝だと思ってて、彼の作品群の中でも素直な印象の楽曲が多くて抜群に聴きやすい。全てのバランスが調和された大傑作であることは間違いない。


8位 The Station To Station

1976年発表

近年再評価が著しいアルバム。それもそのはずでプラスチックソウル期で培ったシックで深みのある楽曲構成に、後のベルリン期を彷彿とさせる先鋭的なサウンドデザインという、まさにボウイの先進性と2020年代のシーンの尺度を照らし合わした点で合点の行く作品なんですよね。ボウイの全カタログの中でも抜群に洒落た一枚で、ソウルミュージックすらも自分の範疇に内包しデヴィッドボウイの音楽として昇華させた傑作。


7位 Low

1977年発表

デヴィッドボウイの最高傑作は?ってなると最近だとジギーとこれが挙がる傾向が強くなってきた印象はあります。たしかにキャリア最初期から流れで聴いていくと、明らかにこのアルバムからサウンドが垢抜ける印象は感じます。最初の一曲目からシンセが良い感じに楽曲にダーティーな質感をもたらしていて、インスト楽曲の完成度は文句無しにカッコいいです。でも歌物が次作と比べた時弱いかなぁと思う瞬間もあって...。まぁ兎にも角にも先鋭的でカッコいい一枚なのは間違いない。


6位 Let's Dance

1983年発表

デヴィッドボウイのポップアルバムとしては最高傑作と言っても過言では無いだろう。ボウイの特筆すべき才能として、アルバムの一曲目から聴き手を一気に世界観に没入させる能力が抜群に高いってのがあるんだけど、「Modern Love」から始まる今作はそんなボウイの能力が最も炸裂していて初っ端から最&高。ナイルロジャースによって手掛けられたどこかアダルティな空気感が、英国紳士の手本のようなボウイのキャラとも相まってて良きで、一言でポップアルバムとして片付けるにはあまりにも勿体ない大傑作だ。


5位 Aladin Sain

1973年発表

デヴィッドボウイのロックアルバムとしては最高傑作と言っても過言では無いだろう。これがデヴィッドボウイのロックンロールですよと言わんばかりにめちゃくちゃスウィングしている演奏がカッコよく、ミックロンソンのギターは要所要所でノイジーさを押し出してきて非常に華麗、そしてマイクガーソンの悲しげなピアノが退廃的なムードを漂わせます。冒頭で述べたデヴィッドボウイ流ブギーとはなんぞやと思ってる人は、まずこれを聴いて体をうねらしてほしい。


4位 Young American

1975年発表

デヴィッドボウイでソウルと言ったら「Station to Station」だろ!って声は百も承知なんだけど、こっちの方が純粋に良い曲が多くて自分のツボにどストレートにハマった。先程から口を酸っぱく言ってるが、デヴィッドボウイというソングライターは非常に人間臭く温かいメロディが特徴のソングライターであり、それがフィラデルフィアの心地よいソウルの空気を吸収したらどうなるか?ね?もうわかるよね?つまりそれはゾル(以下略)

他にもジョンレノンとの共演(個人的にはタイトル曲で「A Day In The Life」の一節を取り入れたり、「Across The Universe」のカバーなど溢れ出るリスペクトがビートルズ好きとしては堪らない)、まだまだブラックミュージックが前面に出てない時代にカッコいい音楽としてフックアップする姿勢なども好き。


3位 Black Star

2016年発表

生前最後のアルバムにしてデヴィッドボウイというアーティストの歴史にあまりにも美しい終止符を打った大傑作。そこにはボウイ流ブギーなど無い、むしろ死の間際であったからこそそのような人間力をダイレクトに出すことが出来なかったというのが正解だろう。そこでロックでスウィングをしようとしたのではなく、スウィングの本来の起源であるジャズ的な要素を押し出してきたのは、時期的にケンドリックラマーがジャズをフィーチャリングして成功を収めたことも加味すると面白い。結果としてどこか死の香りがする幽玄的な色味でありながらも、ドラマティックなサウンドプロダクションによって一つの名作映画のような有終の美を飾ることとなった。


2位 Scary Monsters

1980年発表

デヴィッドボウイを"ポップなカルトスター"として定義するなら、まさしく名詞代わりの一枚でなるのはこの作品だ。ゴテゴテとしたニューウェイブ風味のボウイ流ブギー、ポップとは絶対に言わせない奇妙でユニークなメロディ。ボウイがここで行ってるのはボウイ流ブギーの再構築であり、それは「Space Oddity」のトム少佐を登場させたりなどあえてそれまでの自分の活動を振り返り、ベルリン三部作で得た先鋭的なサウンドでアップデートさせることに成功した。総括であり飛躍への布石とも言える作品であり、またどの曲も抜群にカッコいい。デヴィッドボウイがデヴィッドボウイであるための存在証明を示した一枚。


1位 Heroes

1977年発表

記念すべき第1位で、一通り聴き終えてやっぱこれが一番だなとという答えに至った。近年は「Station To Station」、「Low」が批評界隈で評価を上げている煽りを受けてか、「Heroes」別に大したことなくね?みたいな謎の下げる流れが出来つつあるけど、いやいやちょっと待てよとなる今日この頃です。このアルバムは姉妹作の「Low」が割とゆったりと制作されたのに対し、「Heroes」は1週間というめちゃくちゃ短い制作期間であり、それが功を奏したのか全体的に程よい緊張感がある。またロバートフリップの参加も大きく、前作でシンセサイザーが補っていた前衛性という部分にフリップのアバンギャルドで攻撃的なギターが加わることでサウンドの先鋭性はさらなる進化を見せる。そして一番重要なのは歌物におけるキャッチーさ、いやドラマティックな展開が目立つことで楽曲の訴求性が飛躍的に向上したことも大きい。デヴィッドボウイ、ブライアンイーノ、そしてロバートフリップという、カルト的な立ち位置にいつつもロック史の重要人物として君臨してきた英雄たちがベルリンで描いた壮大なサウンドスケープに魅せられる大傑作だと思います。



いかがでしょうか。あくまで独断と偏見に基づいたランキングになりましたが、それまでボウイの作品を全く聴いたことないよって人はぜひぜひこの稚拙なランキングを参考にしながら聴いてみてください~。

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