[エモい名盤シリーズ]U2 「WAR(闘)」
みなさんは「エモい」という言葉をご存知だろうか?
この言葉は近年登場した若者言葉で、マイナビ調査の2018年10代女子の流行語では1位を獲得している。
しかし安易に使える性質を持つが故に、「ヤバい」と同様に語彙力の退化、そして感情表現の単一化を招いてしまうのではないか?という批判を受けている言語でもある。
詳しいことは「エモい 批判」でググればたくさん出るので、自分で探してみて欲しい。
話は変わって音楽好きの自分としては、今の時代サブスクなどが流通していて、今までよりも音楽にアクセスしやすい環境になりつつある中で、是非とも皆さんに素晴らしい音楽に出会って欲しいと思うことが多々あってですね。
今若い人たちの間ではアルバムを通して曲を聴く文化がなくなりつつあると言われてて、音楽産業では1曲のパンチ力が求められる時代になってきました。自分としてはアルバム通しで聴くのが好きなので、少し残念だなぁでもこれが時代の流れかぁなんて思うんですよ。
そんな中で自分が出来ることはなんだろうなと思い、今回の記事を書くに至ったわけなんです。言うなればお節介みたいなもんなんですけど、まぁこうやってでけえ声でこれ凄いよーって言って、一人でも興味持ってくれたら万々歳かなって感じでやっていこうと思います笑。
今回の記事はこの人をダメにする言語を使いながら、こんな素晴らしい音楽があるんですよーという、音楽好きのお節介が展開された記事です。
世界最高のバンドU2
今回紹介するアルバムを作ったのはU2というバンドだ。
アイルランドで結成され、80年代にデビューして以来、現在もバリバリ現役で世界の最前線を走る世界最高のバンドの一つだ。
メンバーは
ボノ ボーカル
ジ・エッジ ギター
アダムクレイトン ベース
ラリーマレン ドラム
音楽好きなら一度はその名を聞いたことがあるはずだだ。名前は知らなくともテレビとかでもBGMとして使われていて、無意識のうちに聴いたことがあるかもしれない。
そしてI Phoneユーザーにとっては、アルバム強制ダウンロード通称U2スパムのイメージを持っているかもしれない。当時高校生だったんですけど、同級生のジャニヲタ女子が滅茶苦茶文句言ってて、静かなる殺意を覚えたのも懐かしいですね。
U2ってどんな曲を作るバンドなのって言われたら、一言で言うならシリアスな歌詞世界をバカでかいスケールのサウンドで描く壮大なバンドだ。
こんな感じの壮大なサウンドなのだが、このバンドの肝はボノの熱いボーカルとエッジの空間的で奥深いギターサウンドだ。
日本でもU2の影響を受けたバンドは多い。例えばミスチルの代表曲「終わりなき旅」はU2の同名曲から取られたものだし、アルバム「DISCOVERY」のジャケ写は言うまでもなく「The Joshua Tree」からのパク...オマージュだ。
特にサウンド面での影響を受けているバンドで言えばLUNA SEAはかなり影響を受けてるバンドだ。実際ギターのSUGIZOは去年のU2来日公演にも足を運んでいるし、なんか面白いプロジェクトを裏でやっていた。
そして多くの人がU2に対して抱くイメージと言えば政治、宗教をテーマにした歌だろう。
特にボーカルのボノは趣味がボランティア、発言力はそこら辺の国の首相大統領より強大、なぜかサミットなどの国際政治イベントにさも当たり前のように出席など、もはや存在自体がVIPオブVIPなのだ。なんなんだこいつ。
日本なんかでも一時話題になったシーシェパード問題に首を突っ込んだりしたりもあって、その政治的でシリアスな活動性が先行してあまり曲を知らないという人も多い。
とはいえ現時点でグラミー賞最多受賞記録を持つなど、音楽性に対する評価は確かなものだ。今回紹介するアルバム「WAR(闘)」は、そんな彼らが世界最高のバンドになる前の話。
WAR(闘)
「WAR」は1983年にリリースされたU2の3枚目のアルバムだ。
邦題だとWARの横に(闘)という文字が入るので、個人的に「WAR(闘)」という表記が好きなのでこの表記を使っていこうと思う。
闘志みなぎる少年の精悍な顔つきが印象的なジャケットから分かる通り、このアルバムからははきちれそうそうなぐらいの闘争心とアドレナリンに満ち溢れた楽曲が収録された、まさに勝負のアルバムだ。
U2は1980年に「Boy」というアルバムでデビューし、81年の2nd「October」と立て続けにリリースするも、セールスには恵まれない状態に当時陥っていた。
ライブパフォーマンスの評判こそ良いものの、それに見合わないセールス。この歯痒いジレンマにレコード会社からは契約の見直しを突きつけられたりもした。
しかもボノ、エッジ、ラリーの3人は真剣にキリスト教活動への専念を検討、実際にエッジは脱退まで仕掛けるという騒動まで起こしている。
成功を確約されないロックアーティストとしての葛藤と、ギリギリまで追い込まれた状態で彼らがリリースした起死回生の一枚こそ「WAR(闘)」なのだ。
このアルバムは結果として彼らにとって初のUKチャート1位という快挙をもたらし、彼らの名を全国区のものにした。絶体絶命のU2はこの勝負に勝ったのだ。これがエモいってやつなんですね!
Sunday Bloody Sunday
このアルバムでのU2は先程述べた、「シリアスな歌詞世界をバカでかいスケールのサウンドで描く壮大なバンド」ではありません。正確に言うならば半分は当たっていますが、半分は間違っています。
間違っている部分とは「バカでかいスケールのサウンドで描く壮大な」の部分です。
このU2の代名詞ともいえる広大なサウンドスケールは、このアルバム以降にプロデューサーとなるブライアンイーノとダニエルラノワによって、エッジのギターを生かしたサウンドメイキングをしたことにより生まれたものです。つまり「WAR(闘)」ではまだそのサウンドには至っていないのです。
「WAR(闘)」のプロデューサーはスティーブンリリーホワイトという、この満面の笑みを浮かべるおっさんです。これまた凄いプロデューサーでゲートエコーと呼ばれる、残響音の強いサウンドが特徴のプロデューサーです。
リリーホワイトのサウンドがこのアルバムでは見事な化学反応を起こします。独特な緊張感をアルバム全体に張り詰めさせ、エッジのギターはより生々しい攻撃性を醸し出させます。そしてボノのボーカルの熱気はさらに帯びることとなります。
続いて半分当たっている「シリアスな歌詞世界」というところです。
U2の出身地でもあるアイルランドは、キリスト教文化に揺れ動いた国として有名です。彼らの幼少期には北アイルランドを巡りカトリックとプロテスタント間で紛争が勃発、70年代には血の日曜日事件で一気にピークを迎えます。
ここら辺の内情に関してはあまり自分もすげえ詳しいわけではないので、興味があったらググって欲しい。とにもかくにも彼らは複雑な幼少期を過ごしたことに加え、特にボノはカトリックの父とプロテスタントの母の間に生まれたという出自を持っている。
幼少期から密接に繋がっていた宗教と政治というテーマが、国と国、人と人、男と女というあらゆるレベルにおける「戦い」へと昇華したのが「WAR(闘)」というアルバムであり、彼らのパブリックイメージを決定付けた瞬間であった。
1曲目を飾る「Sunday Bloody Sunday」は、先程述べた血の日曜日事件をテーマにしている。この曲を歌う時彼らは白旗を掲げるのだが、そのメッセージ性も相まって、めちゃくちゃ強烈に響くのだ。
New Years Day
このアルバムが発売される前年の1982年といえば、マイケルジャクソンの「スリラー」が発売され、MTV開局によりMV文化が広まった年だ。
つまりポピュラー音楽の大きな分岐点となった年だ。シンセサイザーによるきらびやかなサウンドは、それまでのヒットチャートの常連たちを追い出した。
ロックも言うまでもなく大きな変化を求められていた。それまでの70年代のバンドたちをオールドウェイブとみなしたパンク、ニューウェイブは一段落し、イアンカーティスはこの世を去り、ポリスは「Synchronicity 」を発表し解散する。
突き上げるようにユーリズミックス、R.E.M、ニューオーダーといった新進気鋭のバンドたちが傑作を発表する中、シーンを制したのは絶対絶命のU2だった。
なぜU2が時代を制したのか?それは強烈なメッセージ性からわかる通り、誰よりもマジだったからだ。
今も世界最高のライブバンドと称されているけれど、この頃のU2のライブの熱気は尋常じゃない。絶体絶命の状況が上手く逆転し、そのマジな感じがいまいちふわっとしていたシーンに衝撃を与える姿は、本当に世界を変えてしまうのではという期待を世界中のリスナーに抱かせることとなる。
これ以降シーンの最前線を索引し、世界へ多大な啓発を与えることとなる彼らにとって、「WAR(闘)」は強大な宣戦布告であり、不在だったロックシーンの主役を引き受ける覚悟でもあったのだ。
めっちゃエモいやん。
いかがだったろうか?このエモい名盤紹介はシリーズ化して、ちまちまとやっていきたいと思っているので今後ともよろしくお願いしますという所存です。
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