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BBHFの新作ヤバすぎて咽び泣くわい南下してなんかしようとしてナンと化す

インドカレーって美味いですよね。

昔実家から歩いて5分のところにインドカレー食べ放題の店があって、平日はいつもガラガラだったから食べ放題1500円が実質時間無制限で楽しめたんですよ。

そんなこともあってよく友達7人ぐらいでそこのカレー屋に通い詰めてて、そこで5時間くらいカレー食いながら駄弁ったりしてて。

こないだそのカレー屋行こうとしたら最近インド人が夜逃げしたらしくてカレー屋潰れてたんすよ笑。かわりにお洒落なイタリアンに変貌してて時の流れって残酷だなぁって思ってんですよね。なんだこの話。

そりゃそうだよな。四次元から来たマヨラー成人だったまいやんが、今じゃ写真集女王のスーパーモデル白石麻衣なわけで。星野源とイチャコラやってたガッキーだって、知らないうちにショートカットからロングヘアーになってるんだからほんとに時の流れは速い。

同じようにチーズナンとあんこクルチャが美味い思い出のカレー屋が今じゃお洒落なイタリアンに変わるように、あの頃Galileo Galileiだった彼らは今じゃBBHFとしてやべえアルバムをリリースしているんです。

南下する青年

9月頭BBHFが2作目となるフルアルバムかつ、BBHF名義としては初のフルアルバム「南下する青年」をリリースした。

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結論から言うと優勝の一言。

今年何度目の優勝かわからないけど、とにかく優勝。

個人的には藤井風のデビュー作以来物足りなさを感じてた今年の邦楽シーンで、年間ベスト10に余裕で食い込めるレベルのアルバム来たなという感じです。

そんでもってこの時点でGEZAN、THE NOVEMBERSとともに10年代初頭から活躍してきたバンド群が、20年代の音を鳴らす方向に切り替わったという意味でもこの作品を語る価値はあるのかなと。(とはいえ上の2組とは方向性も出自も違うんだけど)

今回の「南下する青年」で俺がいいと思ったポイントは、過去の自分たちを上手く精算しつつも新たなBBHFらしさを打ち出せた点だと思っているんですよ。

BBHFになるまでの彼ら

ここでBBHF知らねえよって人のために言っとくと、BBHFに至るまでの道のりってのは実は長く2008年まで遡ることになる。

BBHFの前身はGalileo Galilei(通称GG)という10年代インディーロックシーンを代表するバンドであることはご存じの通りだと思う。

若手ロックバンドの登竜門「閃光ライオット」の初代王者としてデビューし、当初はバンプフォロワーの若手邦ロックバンドとして頭角を現してきた彼ら。

そんな彼らをインディーロックシーンの頂点へと導くことになったのが、エレクトロポップを取り入れた名盤「PORTAL」だ。そしてこのアルバムに収録されている「青い栞」が某人気アニメの主題歌に抜擢、10年代前半ロキノン系のアンセムとなった。

この「PORTAL」以降深化する音楽性に対し、アニソンをそつなくこなすバンプ フォロワーとしてのパブリックイメージに苦しんだ彼らは、2016年に活動終了を発表しその歴史に幕を下ろした。

その後ボーカル尾崎雄貴のソロプロジェクトwarbearを経て、2018年GG時代のサポートメンバーだったDAIKIを加えた4人でBird Bear Hare and Fishというめちゃくちゃ長いバンド名で実質復活。

俺みたいにバンド名長くて覚えらんねえよって人が多分一杯いたんでしょうね。翌年レーベル移籍を機に「BBHF」に改名して今という感じです。

近い感じで言うとジェファーソン・エアプレイン→ジェファーソン・スターシップ→スターシップみたいな感じで、名前は変わってるけど中はそこまでは変わってないのがBBHFだと思ってもらえればよろしいです。

とはいえGGの活動終了以降の彼らの動向には少ししっくり来ないことが色々とあってですね。というのもGG時代の幻影を払拭しようとしてたのが見てとれた気がするんですよね。

特にwarbearと前作「Moon Boots」なんか顕著で、それ持ってくる?っていうアルバム内でもなんとも言えない曲がリード曲になったりとか。どうもアンチメジャー的な行動がチラホラ見え隠れしてて。「ページ」、「次の火」お前らのことだぞ。

それとこれを言うと怒られそうだけれど、GG時代のアルバムで「PORTAL」以降のアルバム全部完璧過ぎて、その反動でwarbearとBBHFに満足出来ない俺みたいな人多いと思うんですよね。特にGG最後のアルバム「Sea and The Darkness」が完璧だっただけに、自分はそう感じることが多々ありましたね。

趣味的な作風のwarbearは仕方ないにしろ、ガッツリ後継バンドのBBHFとGGが比較されるのはもう運命みたいなもんで仕方ないことなんですけど、やっぱGG時代が好きな故にBBHFに辿り着いたリスナーとしてはなんだかなぁって笑。

とは言えBBHFと後期GGの作風って実は似てるようで似てないって今回の新作を聴いて思ったんですよ。逆になんで新作聴くまでわからんかったん?ってなるとは思うんですけどそこを紐解いて行きます。

BBHFはスタジアムバンドだ

BBHF最初のアルバムとなった「Moon Boots

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曲のクオリティは相変わらず高いのだが、個人的には力が入ってんなぁっていう印象。というかサウンドが後期GG時代のクリアなドリームポップサウンドから、全体的にヘヴィでバンドとしてのアンサンブルが増してきた気がします。それによってGG時代の程よい音の抜け感が無くなり、力が入りすぎた感じになってしまったんですよね。そのせいで収録時間の割に聴いてて疲れてしまうというのが「Moon Boots」の率直な感想。

ただ先行曲だった「ページ」しかり、楽曲のスケール感が格段に広がったのは窺えます。前作「Moon Boots」の残念なところはサウンドが重たく感じたことで、そのスケールの広さが薄まってしまったところなわけでそこはちょっと勿体ないです。

こんな感じでサウンドの質とかスケールがBBHFになったことで変わったことがわかります。

ここで伝えたいのはベットルームポップとして始まり、海外の最新のインディーロックサウンドを取り入れる、いい言い方ではないけど内向的なサウンドスケールだったのがGalileo Galilei。

対してBBHFはインディーロックサウンドをベースとしながらスケールのでかいスタジアムバンド的な趣きがあるのがGGとの明確な違いなわけなんです。

近いところで言うと、同じフォークが根底のKings of LeonMumford & Sonsなんかを思い浮かべてもらうのがぴったりだと思います。またシンセサイザーの有無はありますが、Walk The Moonなんかはかなり近いサウンドです。

個人的には比較に挙がりやすいThe 1975は音自体は似てるけどちょっと違うと思ってて。The 1975の場合はマシューヒーリーっていう絶対的なアイコンの下で、カメレオンの如くサウンドを変えます。ある意味志向するサウンドが一貫してるBBHFとは似て非なる性質である。

契機となった2枚のEP

良いところも悪いところもあったBBHFのスタートでしたが、転機となったのはレーベル移籍後に発表された2019年に発表された2枚のEP。

Mirror Mirror」はアニマルコレクティブを彷彿とさせるタイトル曲を始め、全体的にエレクトロ主体の作風となった実験的な一枚。

次に発表された「Family」ではバンドサウンドに立ち返り、後の「南下する青年」を彷彿とさせる要素がチラホラ散見できるようになります。

この2枚に共通するのはサウンドの抜け感と言いますか、抜群に音が洗練されていること。それが「Moon Boots」の時に感じた重たさを解消出来たこと。

特に「Family」からのリード曲となった「なにもしらない」は、GG以降の彼らがやりたかった形がはっきりと現れた最初の作品だと思っています。

長くなったが要するに、前年の2枚のEPで見え始めたBBHFサウンドのフォーマットが完成したのが今回の「南下する青年」というアルバムであることを伝えたいのだ。

押し寄せる名曲たち、これはモノ売るってレベルじゃねえぞ

さてさてアルバムの内容なのだが、まず1曲目「流氷」の時点からワクワクさせてくれる。ブリブリのベースはもうスタジアムバンドの風格すらある。それでいてサウンドが飛躍的に向上したことで「Moon Boots」の時に感じでゴチャゴチャ感は皆無。

個人的に猛プッシュしたいのは3曲目に来るミディアムナンバー「Siva」。冒頭のRadio Deptばりの北欧シューゲイザーを彷彿とさせる打ち込みでまず心打たれる。やっぱ日本でこのレベルの楽曲書けるんだから、別格だよなあこの人たちと再認識。

その後もThe 1975フォロワーも舌を巻く80'sライクな「クレヨンミサイル」「とけない魔法」など、インディーロック好きを楽しませる楽曲が続く。

そして今作の興味深いところはGG時代の面影が散見できるところだ。「リテイク」、「南下する青年」、「鳥と熊と野兎と魚」あたりはGG時代にありそうな曲調だが、洗練されたBBHFサウンドを通したことでその成熟さを窺わせる。

1988」なんてGGの3rdアルバム「ALARMS」に入ってもおかしくないくらいドリームポップだけど、「ALARMS」の時の荒さがなくなった代わりに全体的なブラッシュアップされてる感じがしてほんと素晴らしい。

そして最後を締めるのが「太陽」だ。素晴らしいアルバムは頭とケツが最高ってのが持論なのだが、「流氷」で始まり「太陽」で終わるのはまさにこの持論にぴったりだと言える。それでいて曲をこなすごとに楽曲そのものに不思議と暖かみが増していくかんじがして、そういう意味でもアルバムにである種の一貫性があって抜群に聴きやすい。


総評としてはGG時代の良さを上手くブラッシュアップしながら、BBHFで打ち出した壮大なスケール感を上手く演出出来ている素晴らしいアルバムという感じになりますかね。

GGを聴いたことないという人にもおすすめしたい、2020年の邦楽シーンを代表する一枚なのでぜひぜひ聴いてみて欲しいなと思いますね。

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