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【雑記】スポーツメーカーのサプライによるマーケティングのパラダイムシフト(サッカー視点)

…と立派なタイトルをつけてしまいましたが、あくまで日々働く中で感じる雑感程度のものです。
連綿と続いてきたスポーツマーケティングの定石みたいなものが変化してきている、いや、定石にすべきだと思ってきたことが、定石にできない市場でやろうとしていたことだと気づいたというべきなのか。

スポーツメーカーがチームにサプライするのは、当然見返りを見越した投資なわけですが、その見返りの定義のズレというのはずっと感じているところでした。


1.
導入期のスポーツメーカーであれば、ロゴが露出すること=着用してもらうことで認知が拡大し、品質の裏付けとなり大きな見返りとなるのですが、成熟期のスポーツメーカーともなると、すでに定着しているロゴ露出は、見返りとして価値が非常に低くなります。
2.
サプライする上でもう一つの大きな見返りは、レプリカ ユニフォーム販売の権利を得られること。この見返りの価値は、市場規模=ファンの数に左右され、数値(売上)として明確に投資結果が出ます。

3.
で、スポーツメーカーとしては、翌年出る新商品をチームに着てもらえたら、その商品の宣伝となり、価値や商品の説得力があがるわけですが、まずJリーグではそれを受け入れるチームはいないでしょうし、それ以下のリーグでも、積極的な受け入れではなく、オリジナルデザインの生産条件がクリアできなかったため、という消極的な理由が大半だと推測します。

ここで日本から海外へ、名だたるビッグクラブに視点を移します。

A.
サッカークラブの存在価値が、その地域において非常に大きく、世界的にも価値が高い=成熟期のスポーツメーカーであっても、ブランドの強さを世間へ示すことができ、"チームによって"ロゴが露出されることに大きな価値が出ます。

B.
レプリカ の販売は、言わずもがな全世界に渡り、非常に大きな売上規模となります。さらに、物は大量生産することで単価が下がるため、売上規模が大きければ大きいほど安く物を作り、利益を多く得ることができます。
別の見方をすると、全世界へ流通させられるだけのサプライチェーン能力のあるブランドじゃないとサプライヤーはできないとも言えます。ビッグクラブへのサプライが可能かはお金の問題だけではなく、そういった力も問われるかと思います。

C.
スポーツメーカーは、ビッグクラブにサプライする中で、大きくデザイン変更をすることが許されないホームキットに対して、アウェイキットでブランドの方向性を打ち出したり、サードキット・記念ユニフォーム・プレマッチシャツなどを産み出しました。
1人ホームキット1枚だった売上の、+α枚分市場を広げ、レプリカ ユニフォーム販売というサプライヤーの権利の価値が、当然ながら上昇します。


海外のスポーツメーカーによるマーケティングの好循環は、あくまで巨大な市場規模が土台となった好循環であって、規模がグッと小さくなる日本のJリーグでこの好循環モデルを当てはめるのがとても難しい。

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上記は個人的に調べた2021年J1~JFLのサプライヤーの一覧ですが、表にして見ると想像以上に大手(という表現には語弊があるかとおもいますが、意味は伝わると思いますので便宜的に使います)の数が少ない。(からこそ、pumaさんがこの分野にフォーカスしていることも明確に浮かび上がるわけですが)
"おいしいビジネス"であれば、大手が食い荒らす(言い方…汗)はずなので、この分野はビジネスとして旨味がない。(売上・効果ひっくるめて)という仮説が立ちます。
要するに、前途した1~3の見返りは、黎明期を超えたスポーツメーカーにとっては投資に見合わないということ。
ロゴの宣伝媒体以上の価値をチームが見出さないと、ユニフォームが”サプライ”される世界がいずれ終焉してしまうのでは…?などと、個人的には危惧していたりします。(選手スタッフ全員分・1シーズン分のウエアが全部購入になったら大変な金額!)
綺麗事で言えば、スポーツ市場を盛り上げるためにサプライしているスポーツメーカーも、自ら契約チームに宣伝媒体以上の価値を見出すべき。なんですが、メーカー側は割りに合わないと感じれば、契約をやめるという選択肢をとることができるのが現実です。割りに合わないというのには、楽に稼げないという手間のことも含むので、この件に関しては本当に"お客さん"の立ち位置だと思います。何事も物の割に安かったら(価値が高かったら)買う。

日本のスポーツチームにおいてJリーグのチームは、チームによってグラデーションはもちろんあれど、その他のリーグよりも諸々の規模が大きく、成功している部類であると思います。
ということは、後ろに続く規模のスポーツはより厳しい状況に陥っていく可能性は十分に考えられます。
あまり思考を放棄しておいていい問題ではない気がするな、と個人的には感じています。

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