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異国日記を読んだ

異国日記 ヤマシタトモコ著 祥伝社

多少ですがネタバレを含んでいます。ご注意ください。

小説を読んでいるような感覚だった。
漫画の中に描かれる何気無い生活や会話、そのいち描写の解像度がとても高い。
その中のお気に入りのひとつは「誘惑に抗いきれず買った、こんだての調和を乱すちまき」(探してみてください)

人は誰しも朝ちゃんでいう「砂漠」を抱えて生きている。しょうこちゃんはクラブ、えみりちゃんは海であるように。
私の「ぽつーん」はなんだろうと、読んだ人は皆少しだけでも考えたと思うのです。そしてそれに名前をつけようと頭を捻らせたと思うのです。(私はまだ名前が見つかりません)

朝ちゃんが抱える悩みはきっと親が死んでしまったからではなく、かつて高校生だった私たちも抱えていたあの時の闇のようなものだと思う。
全て大人に言われた通りにしているのに、急に自分で決めなさいと言われ大人から見放された気持ちになったあの日のような。
友達と喧嘩して、泣きながら自分を顧みる布団の中のような、そんな闇の話。

忘れていた記憶を思い起こさせるような物語だった。
好きな人と楽しく過ごせたあの日の帰り道、学校から帰る道でみた風景、電車の中のざわめき、校門で吹いたシャボン玉の鮮やかさでさえ思い出す、そんな話だった。

槙生さんは、「愛している」という言葉では一括りにしたくなかったように感じます。朝ちゃんのことも、笠町さんのことも、実里さんのことも、お母さんのことも。
最後に言っていましたが「足りない」のです。きっとどれだけ言葉を知っていても足りずに探し続けるのではないかと思いました。

私も日記を始めてみました。(すぐに影響を受けるタイプです)実里さんのように誰かに宛てて書くわけではないけれど。
過去の自分への救済なのか、未来の自分への糧なのか。
私だけの気持ちを大切に覚えておくために。

今年映画になるそうで、友人と見にいこう、そして1人でも見にいこうと思いました。

私をこの物語に出会わせてくれた友人と、著者のヤマシタトモコ先生、出版に携わった全ての人に感謝いたします。

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