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パーマやカラー後の正しいお手入れ法

髪の毛が傷んだら切るしかないよねーって

耳にするたびに心が痛みます
本当にごめんなさいと思う
僕達にもっときちんとした知識があればそんな事にならなかっただろうにと

毛髪の事を知ると、その対応の仕方まで理解できるので
やはり毛髪理論は欠かせませんが
今日は「いや、でも面倒だしちょっとわからないし」って理論を敬遠していた美容師さんと「ちゃんとヘアケアしてるのにどうして傷むの??」と悩んでいる方々に是非

読んで頂けると幸いです


そもそもの髪が傷む理由

ヘアカラーをして雰囲気を変えたい♪
どうせだったらブリーチなんかもやっちゃって透明感のあるベージュにしちゃお♪
髪の毛広がるから縮毛矯正もしたいなぁ…
手入れが楽になるようにパーマかけちゃおっと♪

ふふふふふふふふふふふふふふ

美容のお仕事ってこういう「もっとこうなりたい!」とか「変身したい!」とか色んなお客様の期待を受け止めつつ様々な技法で不可能を可能に出来るところが良いトコロ

大きく分けると美容のお仕事は
「形」「色」「素材(作り)」に分類され
「形」はカットやパーマ、ストレート
「色」はヘアカラー
「素材」は髪の状態などを整える為のトリートメントなどです

この「素材」の部分なのですが「形」や「色」を表現するために物凄く重要なので少しだけお話させて頂くと、「素材」を無視して「形」や「色」を創ろうとすると想定外の悪い結果になる事があります

簡単に言うとダメージ毛にパーマをかけたらチリチリゴワゴワになって、どうしようも無くなったり、髪がサラサラになるから!と思って縮毛矯正を複数回繰り返すと毛先がトウモロコシの毛みたいになったり
綺麗なベージュに染めたいと思っていてもダメージがあると色ムラが起きたり、ツヤが無くなるのでお世辞にも「綺麗なベージュ」とは言えない結果になってしまいます

さて、この一瞬でテンションがガタ落ちしてしまう「ダメージ」の原因なのですが、健康毛であれば普段の乾かし方やホームケアによってそこまで大きくダメージを受けることは無いので、これはパーマやストレート、カラーやブリーチによる「薬液」が使われている事が最大の理由になってきます

今日はこの「薬液」が髪の毛に対して何をしているのかを考える事で、パーマやカラー後の「本当に必要なお手入れの考え方」を伝えれたらなと思います

「薬液」が髪の毛に対して行っているコト

例えばパーマであれば「チオグリコール酸」などの還元剤と言うものが使われていて、これが髪の形を自由に変える為のおおもととなって
髪にこれを付けることによって「もう、どうにでもしてくれっ!!!」ってくらい髪の毛はフリーダムになり右に曲げれば右に、左に曲げれば左に、まっすぐ引っ張ればストレートにって具合にいわば「貴方の思うがまま状態」になり、そのあと「酸化剤」と言われるものを、つけることにより思うがままの髪の状態に固定されます

ただ、このチオグリコール酸
名前が長いので僕達は「チオ」って呼んでるんですけど
チオはそんなに簡単に髪の中に入ってはくれません

ほらチオ
やっと着いた…この狭い穴を潜れば「毛髪内部」に入れるぞ
今まで良く頑張ってきたな!ほらっ入るぞ!

…いやだ

ん?ちお…何を駄々をこねているんだ
早く入りなさい!

…いやだっ!! 私、ここには入りたくない!
こんなに小さな穴に潜れるはずがないもん!
わ、わたし…やっぱりお家に帰る!!

こっ、こら!待ちなさいチオ
チオー!!!!

…ってくらいチオは毛髪内部に入ろうとしてくれません
小さい穴に入り込むのが怖いようです

そこに登場するのが「アルカリ」君です

なーに言ってんだお前!名前はなんて言うんだ?

…私チオ…チオグリコール酸のチオよ

こんな小さい穴、ほら俺が拡げて見せるからさっ
ほらっよっこいしょっと

そういうとアルカリ君は小さいキューティクルの穴をグイっと拡げます

ほら行きなチオ もう、大丈夫だから

あ…ありがとうアルカリさん。おかげでチオ、毛髪内部に入る事が出来たわっ!

良いから気にすんなって…

って具合にパーマ液の最重要要素である「チオ」は無事に毛髪内部に潜入する事が出来ましたが、この時の「アルカリ君」がやったことが毛髪にとっての「ダメージ」となり悲劇が始まります

キューティクルの構造とCMC

キューティクルはケラチンと呼ばれるたんぱく質でタンパク質の特性上、熱、酸、アルカリで変性しますまた、うろこ状に重なる事で髪の内部組織を保護する役割を担ってます

そしてキューティクルがうろこ状の形を維持できているのは
「CMC」(細胞膜複合体)と呼ばれるものが接着しているのですが、CMCは毛髪のツヤ、柔軟性、滑りを左右するいわば「健康毛の必需品」

キューティクル同士の間にCMCがしっかり詰まっていればキューティクルは柔軟に動くことが出来、少なくなるとキューティクルは剝がれやすくなり
ダメージの直接的な原因となってしまいます

パーマをかける時であれば「チオ」を入れる為にアルカリ君が
ヘアカラーをやる時であれば「染料」を入れる為にアルカリ君が
ブリーチをやる時であれば「脱色剤」を入れる為にアルカリ君が

そりゃあ、もうね
大活躍してくれるんですよアルカリ君

そしてここからが本題
CMCは弱酸性物質であるためアルカリを作用させると溶出します
要はアルカリ君が働けば働くほどCMCは減っていき、ダメージへと繋がっていくという事

またパーマとヘアカラーでCMCの減少度合いは違い
もちろん個人差はありますが、それによってダメージのあり方が違ってきます
パーマをやるとCMCが3~5割減り、ヘアカラーだと7~8割、ブリーチだとほぼ無くなってしまいます

そうなるとキューティクルの接着的な役割を果たしているので
キューティクルが剝がれやすくなりダメージに繋がっていき
僕達が作りたい「形」と「色」を表現出来なくなってしまいます

「薬液」によるダメージの殆どはこの毛髪内部に薬液を突っ込む為にアルカリを使用する事によるものなのです

「大手術後」に必要なこと

ここまでで解るように僕達美容師は「薬液」を使う事で
細胞を動かし固定する、細胞の色を抜き新たな色を入れる
と言う整形手術よりももっととんでもない「大手術」を行っています

そして「大手術」の後には何が必要でしょうか?

「お薬」と「休養」です

一度アルカリによって広がった髪は実は瞬間でもとに戻るものではなく
時間をかけてゆっくりともとに戻っていきます

pH4,5~5,5(等電点)が人間の髪のペーハーだと言われていますが
アルカリ君はpH8~14の力を持っており膨潤と言う力でキューティクルをグイっと拡げてくれますが、また元の等電点に戻るまでに数週間かかると言われています

そしてパーマやカラー後のお手入れは
「如何に拡がったキューティクルを元に戻すか??」が重要なのですが
この大手術後に必要な「お薬」があります

弱酸性のヘアケア剤です

弱酸性のシャンプーやトリートメントを使用する事で
アルカリにやられた毛髪が出来る限り素早く元のキューティクルの状態に戻してくれます

それから「如何にその他のダメージを受けないか」
これが大手術後の「休養」にあたります

普段やっていたアイロンを出来るだけ避ける
普段何も考えずに使用していたオイルをつけないでおく
普段乾かして寝てなかったけど乾かしてみる

などなど、自分の毛髪が「術後」だという事をしっかりと理解しておくこと

足の靱帯の手術をした後に「普段から走ってるからっ!」って
ジョギングしたりしないでしょ
胃の手術をした後に「普段から食ってるから」って
ステーキ食べたりしないでしょ
パーマをかけた後に「普段からやっているから」って
アイロンバシバシやってたらダメなんです

「普段通りでは無いんだなぁ」と思って生活して
弱酸性のヘアケアをしっかりと使用する事が
パーマやカラー後の「お薬」と「休養」になります

普段沢山ケアしているお肌と同様
髪の毛もどうか可愛がってやってください

最後まで長い文章を読んで頂いてありがとうございました

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