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2023彼岸「遊民、動きます」

■ お檀家さまの方々への3つのお約束

 先だっての暮のお便りと12月30、31日の法要では、今後の曹流寺をどう運営していきたいかについてお伝えしました。その後、お檀家さまや、私を応援して下さっている方々から多くの賛同や激励のお言葉を頂戴し、決意を新たにしております。

 また、お檀家様にご心配をおかけしないために、改めてはっきりさせておかなければならないことがあるとも感じています。まず、以下の3点をお約束します。

 1つ目は、新しい曹流寺の計画を進めるにあたって「寄付の強制は一切しない」ということです。もちろん、善意のお申し出をお断りするものではありません。
 私は「知り合いが、菩提寺の伽藍の改築の際に当然のように寄付を強要されたらしい」というようなお話を、お檀家さまからたびたび伺っています。もし、そのような危惧をなさる方がおられるのであれば、心外です。私の目的は真逆です。今回の計画は、お檀家様の方々の今後の負担を減らしたいという思いからのものです。

 2つ目は、今後のお便りで、進捗のご報告をその都度差し上げるということです。必要があれば臨時のお便りをお送りします。気になることやご意見、ご提案があったら、随時ご連絡ください。私一人で考えられることには限界があります。皆様方のお知恵をお借りしたいです。

 3つ目は、大きな決定の際は説明会を開催し、お檀家様の方々の賛否を問う機会を設けることです。前もって資料をお送りし、比較的時間に余裕のある彼岸の法要の前後などに時間を設けて説明会を開催します。当日の参加が叶わない方には、アンケートを郵送いただく、またはお勤めの際にお預かりするなどして、多くの方のご意見を反映できるようにします。

1.寄付を募る可能性はあるが、強制は一切しない
2.進捗報告をする
3.最終的な決断の前に、説明会を開催して賛同を得る

 この3点をお約束します。

■ 未来の曹流寺の理念

 私は、未来の曹流寺の理念を決めました。

1.救われない思いを抱えているあらゆる人に、坐禅という選択肢を提示する
2.坐禅の実践を行う場所として、生きた仏教を継承し続けていく
3.「没後供養で救われる」という仏教信仰の礎の場所とすべく勤め続ける

 本来ならば、なぜこの理念にしたかという経緯を先にお話しすべきなのですが、少々熱が入りすぎてしまい、非常に長い文章になってしまいました。今回は、皆様が気になっておられる建物についてのお話に集中したいため、理念の背景については夏のお便りでお伝えします。

■ 曹流寺の伽藍の歴史と課題

 まず、曹流寺の伽藍についてのお話です。
 今回の計画にあたって、古い資料を遡りました。残念なことに、先の大戦での空襲で全てが焼失しているため、その後のものしか残っていません。

 戦後のバラック小屋を経て、現在の曹流寺が建立したはっきりとした時期はわかりませんが、祖父がシベリア抑留から帰還した前後の1950年代だと推測されます。その頃に基礎を整え、その後は増築とリフォームを繰り返しながら維持してきました。文化財に指定されているわけではありませんが、私にとっても、お檀家様の方々にとっても、思い出深い貴重な建物です。

 しかし、築70年をゆうに超えた今となっては、あちこちに限界がきています。1996年に天井を張り替えて本堂に漆塗りを施したものの、そもそもの土台となる柱が細く、これ以上の大掛かりなリフォームは現実的ではありません。

「いずれはきちんとした伽藍にしたい」というのが、祖父と父の口癖でしたが、祖父は怪我が元で他界し、父は病を患い、志半ばで断念しています。私も37歳になりました。体力と気力のあるうちに、悲願を実現したいです。

 文化財に指定されている観光寺院は、釘一本の修繕すら行政の許可が必要ですが、曹流寺はそのような制約がなく、一度更地にすることも、自由な設計も可能です。

 総木造の立派な伽藍への憧れが全くない――と言えば、嘘になります。しかし、建築費と維持費が莫大で、現実的ではありません。曹流寺の敷地は200坪弱ですが、土地の形がいびつなため、実質的な建ぺい率は小さくなるでしょう。最近では、鉄筋作りの都市型寺院も増えてきているため、この可能性も視野に入れています。

 また、仮のものとはいえ思い出深い伽藍です。転用できる資材があれば、何かしらの形で活かしたいと考えています。

■ 遊民が実現したい2つのプラン

 2023年は、様々な可能性を視野に入れて情報収集に充てる期間にします。お檀家さまが十分に比較検討できる複数の選択肢を提示するつもりです。中でも、私が実現したいのは2点です。

1.曹流寺単体で新築、また、テナントを入れて新築
2.納骨堂の建設

 まず1.についてです。曹流寺単体での新築について、想像がつかないという方はおられないでしょう。テナントを入れる新築の可能性については、ご説明が必要かと思います。
 敷地内に幼稚園や保育園、介護施設などを展開している寺院があることは、皆様もご存知のことでしょう。加えて、最近では企業と手を組むという形で存続を図る寺院が出てきました。

 大阪・心斎橋にある真言宗の寺院「三津寺」のケースです。敷地内に本堂を移設し、本堂を覆うように15階建てのホテルビルを建築中です。報道によると、三津寺は築200年を越える本堂の維持費用が課題となっていて、ホテルに土地を貸すことで、存続に必要な費用を確保するのが狙いだとのことでした。

 東京・築地にある浄土真宗本願寺派の寺院「築地本願寺 佃島分院」のケースです。1階に和カフェと授乳室、2階が本堂と事務所、3~9階に介護付き有料老人ホームが入居する複合ビルです。永続的な宗教活動をするために資産を活用し「葬儀・お墓だけに頼らないお寺のモデルケース」となるべく、不動産事業に取り組んだとのことでした。地域のコミュニティ形成と社会福祉にも寄与しています。

 両寺院は大手企業と手を組んだ大掛かりなものです。曹流寺の場合、名古屋に軸足を置いた企業とコラボする、またはテナント入居してもらうことで、地域創生に寄与できるかもしれません。新栄という立地条件の良さも強みです。もちろん、曹洞宗の施設として相応しい相手を選ぶ必要があります。

 メリットは、地代家賃が得られ、お檀家さまの将来の負担が減ることです。名古屋の寺院としては新しい試みであるため、ちょっと有名になれるかもしれません。デメリットは、新たな第三者が入るため、相手方の希望とのすり合わせや、ルール作りの制定が必要となることです。撤退リスクも頭に入れておく必要があります。また、このような場合、まず誰に相談すれば良いのか、全く手探りの状態です。

 続いて、2.の納骨堂についてです。

 曹流寺の檀家数は減少傾向にあります。何も手立てを打たなければ、将来的に維持運営が難しくなり、お檀家さまの方々に今以上の負担をお願いしなければならないことがあるかもしれません。納骨堂を備えて檀家数の減少に歯止めをかけることができれば、お檀家さまの将来の不安と負担が減ります。また、もっともっと多くの人に、救いを提供する場所でありたいという思いも強いです。

 この2つのプランは、今すぐに取り掛からなければいけないという切羽詰まったものではありません。例えば「10年後に着手した方が確実に得策だ」という状況であれば、それまでは計画を練りながら現状維持するという可能性もあります。

■「未来の曹流寺についての意見交換会」のお知らせ(終了しています)

 今回は、未来の曹流寺をどのようにしていくか、現段階で共有しておきたい事柄をお伝えしました。今後は、専門家にも相談して様々なプランを検討していきます。

 私の説明だけでは、わかりにくい部分や不足している部分もあるかと思います。また、お檀家さまの方々のアイデアやネットワークなどがあれば、ぜひともお力添えいただきたいです。

 つきましては、3月19日の彼岸法要の後に、皆様方のご意見をお伺いし、質問にお答えする時間を設けます。
「もっと詳しく知りたい部分があるから、直接尋ねてみたい」
「いいアイデアがあるから、ぜひ提案したい」
「特に意見はないけれど、他の人の話を聞いてみたい」
など、どのような形でも構いませんので、ぜひご参加ください。

彼岸法要 3月19日(日)
09:30より 第1回目
10:30より 第2回目
11:30より 第3回目

 3回目の法要の後に、「未来の曹流寺についての意見交換会」を開催します。参加されるお檀家様は、11:30からの法要にご参拝下さい。

※このお便りは、私の裏方作業を担ってくれているプロのライターさんに、数時間にわたって熱弁したものをまとめてもらいました。

堀部遊民(仏教徒ちゃん)

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