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満月の夜話(6) - 満月会議 -


今夜は満月です。
満月といえば、ウサギが餅つきをしている風に見えると言われます。
しかし、なぜウサギなんでしょうか?
今回はウサギが餅をつくハメになった「第1回満月会議」の様子を書いてみました。PTA会長や町内の役員決め、学級委員長などマジでやりたくない会議を思い出しながらお楽しみ頂ければ嬉しく思います。

注意点:
 以下、くだらない内容が続きます。
 悪いけど読む時間が無いよ。という方は、ここらで閉じて下さい。

少しなら読んでもいいよ。という方は 行ってらっしゃい(人´∀`)




ある日、神様は言いました。
「満月は地球に住むたくさんの生き物が見上げる。ついては満月では神聖な動物による儀式をすべきである。儀式といえば餅、とにかく餅をつけ」と。

そこで招集を掛けられたのが年賀状でお馴染みの十二支の動物。
それぞれが少々の文句を言いながら、会議の場に集まりました。
遅刻したものはいません、遅刻すると会議での立場が弱くなってしまう事を参加者は知っています。会議が始まる前から会議は始まっているのです。

さて、何から始めて良いか分からないので、とりあえず猿がホワイトボードに『第1回満月会議』とだけ書いた後は、学級委員長やPTA会長を決める際の会議と同様、沈黙だけが続きました。
水を打ったように沈黙する理由は1つ。司会的な発言した人が何かをやらされる感、つまり『最初に発言した者負け』になる事を皆が恐れたからです。

そんな空気に対して、一番の年長者であり、オラつきの強い龍が苛立ちの末に吠えました。

龍「おい、誰か何か言えよ!決めないと終わらん。」
犬「うむ、これじゃあ何も進まんね。」
鶏「確かに。」
牛「ふむ。」

龍は良いこと言います。
こういう系統の会議は『決めないと終わらん』のです。


蛇「え〜、ではまず私は餅をつけないので、辞退させて頂きたいです。」
羊「それなら私だって杵を持てませんよ。」
猪「私も偶蹄目ですし。」
鼠「私も大きさ的に・・・」
龍「オイ!俺だって無理っぽいけど、最初からグズグズ言うなや!!」

このように『誰もがやりたくない事を決める場』の序盤において、大事な事は『早めに逃げる』ではなく『ほどほどに参加している感』を出す事です。
『ほどほどに参加』はとても難しいですが、消極的な姿勢は会議の後の人間関係に影響が出てしまいます。やりたくないのは分かりますが、会議の後も続く人間関係に配慮した立ち回りをしましょう。
『書記ならやってもいいよ』くらいのスタンスでいる事が重要です。


虎「とはいえ、虎の餅つきポーズと、犬の餅つきポーズって区別付く?」
犬「確かに、遠い所でシルエットのみでしょ?区別付かんね。」
羊「一理あると思う。」
猪「一理というか真理だね。」
馬「そうそう、私たち四足歩行は遠目だと区別が付かないよね。」
龍「待て!!猪までは納得出来るが馬はダメだ。馬は区別付く。」
猿「俺、普段は四足歩行だけど・・・区別付く?」
龍「オイ!!」
猿「冗談よ、冗談。そんな怖い顔せんでも。」

バランスの良い龍のMCが続きます。
ただ、一見リーダーシップを取っているように見えて、龍自身は「龍と蛇も区別がややこしいよね?」という隠し玉をココで見事に拾いました。
馬の発言は不用意でしたが、猿の大失態でかき消され、馬にとっては命拾いした形になりました。
このように『やりたくない理由』を『やるのが困難な理由』に粉飾し正当化する方法はよく見ます。『部活が忙しい』とか『うちは共働き』等ですね。
ただ、うっかり右に同じで乗っかると窮地に陥るリスクがあるので慎重に。
そして乗っかるなら早めに乗っかるのが鉄則です。なぜか後半に乗った人は消極的でダメな人のイメージになってしまいます。
さて、姿に特徴のある兎と鶏にとってはヤバい流れが来ました。


兎「(ヤバい・・・何とか鶏の方へ)」
鶏「アレ?兎さん、なんで耳がロップイヤーみたいになってるの?」
兎「え?・・・あ、いや、いつもこうよ。普段は耳が垂れてるんよ。」
鶏「ヤダなぁ、耳が垂れてたら兎さんらしくないですよ。」

これはいけない。兎が勇み前足で墓穴を掘る形になりました。
先述の通り『書記ならやってもいいよ』くらいに堂々としておく事が重要であり、下手に避けよう避けようと動いてしまい失敗した典型です。
自分に話が来ないように何かを書いているフリをして下を向く等、余計な事をしたため、かえって話を振られるパターンと似ています。
さて、このような窮地になった場合、次の行動パターンは主に2つ。
開き直る or 違う方向に話を逸らす、のどちらかです。


兎「あ。え〜、猿さんは? 2足歩行だし、シルエットも区別付くし。」
馬「まぁ確かにね、猿は猿と分かるね。」
牛「ふむ」
猪「どうよ? 猿さん?」
猿「まぁ・・・確かに。・・・でも俺は正直やりたくない。」

猿の言動には、先ほどの軽率な『四足歩行アピール』をしてしまった後悔の念が残っている事が伺えます。だから認めた上で開き直りに出ました。
しかしながら、ここで明確に『やりたくない』と言えた事は大きい。
『やりたくない』発言カードはいわばジョーカーです。切るタイミングを誤れば、やはり人間関係にシコリを残してしまう事があります。しかしこのタイミングでの開き直りは、親戚同士の話合いの中でズバッと拒否する叔父さん感を出せました。
『違う方向に話を逸らす』で誤魔化した兎と『開き直り』を選択した猿。
結果を見れば猿はピンチをチャンスに上手く変えたと言えます。


龍「じゃあこれまでの議論から、鶏か兎の流れだな。」
牛「ふむ。」
猪「OK」
鶏「あの〜、そもそも論ですが、鶏が餅をつくって変じゃないですか?」
虎「ん?あぁ、なるほど。」
兎「いやいや、それを言ったら兎が餅をつくのも変ですよ!!」
犬「兎はそれほど・・・変じゃない。」
兎「え?」
猿「・・・」
鼠「確かに、鶏と比べると兎の方が変じゃない。」
馬「うん。羽根で杵は持てないしね。」
蛇「鳥の足で杵を持つのも変ですな。」

会議終盤になると突如登場する『そもそも論』。話がミクロな方向に進展した所をグイっと引き戻すパワープレイですが、鶏が上手に使いました。
それに対して兎が焦り過ぎました。本来は感情論での反論ではなく、『鶏より兎の方が違和感があるでしょ?』という理論立てが欲しい所。
しかしながら、そのような理論は存在しない。だからこそ、ここまでの窮地にならないよう、もう少し上流で流れを変える事が望ましかった。
もう1つ、猿が発言しなかった事に注目したい。いまだ安全地帯にいない猿にとって、不用意な発言は『お前が言うな』感が出てしまうためです。
発言をグッと堪えた事で猿の立場は大きく引き上がりました。


龍「じゃあ、投票して決めるか?」
牛「ふむ。」
猪「OK」
蛇「投票用紙、配りま〜す」
兎「・・・ちょっと待って!!」
虎「ん?」
兎「投票は無し!・・・私がやります!」
犬「おぉぉ〜。」
猿「よく言った!」
鶏「ありがとう!」
羊「偉い!!」

素晴らしい英断だと思います。これがもし投票になると最悪の場合、

【開票結果】
 兎:11票
 ◯:1票 (←兎が入れた1票)

開票率100%

となるリスクが十分にあり、兎は誰に投票したかが明白になってしまう事で、今後の人間関係に支障が出てしまいます。
それならば自ら申し出て賛辞を受け、次回以降で同様の投票となった場合に利用可能な『暗黙的シード権』をもらう方が賢いと思います。
鶏の「ありがとう」も素敵ですね。心からの感謝の気持ちでしょう。ただ、感謝の気持ちを発言した事で、鶏は兎からの副担当指名を拒否出来ない位置となってしまいました。代表選が終わった途端に発生する『出来れば副担当も避けたいなぁ』という妙な色気はマナー違反です。


龍「それでは兎さん、一言お願いします。」
兎「え〜まぁ、なんとなくこうなる気がしていました、ちょっと。」
一同「(笑)」
兎「やっぱりお餅って聞いた時にね、餅って白いし。尻尾の形もね。」
兎「とにかく、頑張りたいと思います。よろしくお願いします。」
猿「頑張れよ!!」
蛇「しっかりな!」

決まってしまえば皆が円満になる雰囲気がとても良いですね。
短時間で終わった事と、誰も大きく傷付いていない選出が良く、現実世界の代表の選出会議なども、かくありたいものです。
拍手の中での猿の励まし。たまにいますね、こういう人。最初からこういう人がやればいいのに、と思います。

さて、12名の参加者が出てきましたが、お読み頂いた貴方はどのキャラの立ち位置にいる事が多いでしょうか?マジでやりたくない事を決める会議の際に、本稿の内容が少しでも役立てば嬉しく思います。
ちなみに一番省エネなのは牛だと思います。「ふむ」しか言ってませんが、見事に会議を乗り切りました。


さぁ、今夜は満月です。兎が餅をついています。
考えてみれば、他の動物よりも日本の月には兎がよく似合う。
兎の晴れ舞台です。ぜひ夜空を見上げてみて下さい。


お読み頂きありがとうございました。
十二支の動物を表す漢字は本稿内の漢字とは違います。
子丑寅卯・・・だとパッと見で分かりにくいので、普通の漢字にしました。
満月の話はこれで6回目です。毎度、恋愛などの人間系ばかりだったので、違う形で書きました。恥ずかしいので、次回は普通に戻します。
次回の満月は3月25日(月)らしいです。



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