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草むらになりたい 〜 朝ドラ感想文



約1年2ヶ月ぶりに、NHK朝ドラについて書きます。

この間なぜ書かなかったのか深くは追求しませんが、今回はどうしても書かねばならないという熱い思いがこみあげています。

本年4月から放送されている『らんまん』。
男性が主人公の朝ドラはいまいちウケが悪いとのジンクスがあるとかないとかですが、なかなか快調のようです。

ここ3週間ほど視聴できていなかった分を一気に観、ちょっと(かなり)萌えております。面白い。

『らんまん』は、日本の植物分類学の父と呼ばれている牧野富太郎博士をモデルに描かれているドラマです。
主人公の万太郎を神木隆之介さんが演じていて、現在は舞台が土佐から東京に移っているところです。

この万太郎さん、どこからどう見ても植物オタクです。

植物を「この子」と呼び、道端に這いつくばって草花をガン見し、植物のことになると文字通り寝食を忘れます。植物を見る時の彼の目はうっとりとしています。

そもそも朝ドラは主人公が好きなものを追い求めることを主題とする作品が多いですが、万太郎の「好き」レベルはここ最近の作品のそれを遥かに凌駕しているように感じます(個人の感想です)。

まさに清々しいまでの没頭ぶり。火力最強の真性オタクです。

土佐からついてきて万太郎の生活全般を支えている竹雄(志尊淳さん)のけなげさも泣けます。まるで命懸けでオスカルを守るアンドレのようです。月影先生に影のように寄り添う源造のようです。

そんなクセツヨな人々に混じって東京編に登場したのが、浜辺美波さん演じる寿恵子です。

和菓子屋の娘である寿恵子。一見普通の「ヒロイン枠」であるかに思えましたが、この作品は彼女をただ可愛いだけの女の子にしなかったようです。

日本髪に洋装が美しい寿恵子さん


寿恵子さんもなかなかのオタクでいらっしゃいました。
彼女の推しは、『里見八犬伝』。

自室にたくさんの本を並べ、朝な夕なに読み、時には感情込めて音読し、妄想に浸っています。
そんな現場を母に見られて説教されるシーンもリアルです。



特に、このセリフが印象的でした。

私、草むらになりたい。
草むらになって2人を見てたい。

『らんまん』第34話より

彼女は『里見八犬伝』の挿し絵を見て、こうつぶやくのです。
その挿し絵には、草むらの中にいる2人(犬塚信乃、犬飼現八)が描かれています。この2人が彼女の自担のようです。

この言葉に首がもげるほど頷いた方も多いでしょう。私もそうです。

尊すぎる推しをもった人は、おしなべて謙虚です。
どんなに推しを愛していても、「恋人になりたい」とか「結婚したい」などとはゆめゆめ思いません。

ああ、草や石ころになりたい。踏まれてもいい。なんなら踏まれたい。
そうして推しが生き生きと活動しているさまを見ていたい。見ているだけで幸せなのです。


ちなみに、このドラマには「尊い」以外にも令和のネット語を連想させるセリフが入ることがあります。
私が気がついたもので、「実家が太い」や「みんな大好き◯◯」など。
このような遊びは度を過ぎると鼻につくこともありますが、今のところよい塩梅で私は好きです。

来週からは、コミケ学会に出す同人誌学会誌出版に向けて万太郎が印刷所に潜り込むようです。
尊い姿を美しく印刷するためにまずは印刷技術の習得を目指すところが、オタクオブオタクならではです。


植物研究者として道を切り拓いた万太郎の生涯を、草むらになって見守りたいと思います。


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