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高校3年 夏②おもいっきりバカになりたい

受験勉強に染まらなきゃいけないけど、染まりきれない状況で過ごしていた時、

副会長と一瞬に電車に乗った日があった。

副会長は僕と帰る方向が一緒だったからたまに一緒になったりはしてたけど、

部活があった頃はそれぞれ部活のメンバーと帰っていたから、2人きりで話すことはあまり多くはなかった。

実は高校とも関係ない共通の知り合いが多いことや、

副会長が実は大人計画の舞台が好きだというカミングアウトから演劇の話をしたり

趣味も相性も良いことがわかって今更めちゃくちゃ意気投合。

ちなみにこの時、副会長は少し前にあった夏祭りの出店で串焼き屋のバイト(しかも1人で回してたらしいw)をして過去最高の売上を叩き出したらしく

そこの社長からボーナスとして高校生では目にすることのない大金をゲットしたことを教えてくれた。

そこから「おれが金出すから一緒にメシ行こうぜ!」と言い出すもんだから

なぜか2人で文化祭の打ち上げをする!という名目で

地元のターミナル駅に降りて、繁華街の一角にある小汚いラーメン屋に入った。

カウンターのみの、そんなに大きくはない店。

たまたま入ったけど、大将が副会長の幼馴染のお父さんだったことがわかってかなり和んでいた。

副会長は「瓶の麦ジュースとラーメン。みっちーは?」

「んじゃ俺も」

店で麦ジュースを飲むのは初めてだ。

大人になった気がした。

大将はなんかやたら嬉しそうに出してきてくれた。

苦味が得意ではなかったから、自ら進んで飲んではこなかった。

でも、この日飲んだものは人生で初めて美味しいと思った。

田舎とは言え、夜の繁華街は当時高校生の僕にはあまりに異世界。


家に着いた時、親に顔が赤いのがバレたくなくてすぐにお風呂に入った。

なんていうか、すごく背伸びをした一日だった。



それからまあまあ受験勉強も本格化してきて


クラスの友達らと気分転換がてら、学校の裏にある山を散歩に行こうという話になった。


毎日受験対策で飽き飽きしていた僕らはハイテンションで教室を出る。


ふと、学校から離れた環境でみんなで散歩なんて初めてだと気付いて

「青春してんね〜笑」

みたいな感じで男女入り乱れて笑い合った。

そんな折、広い駐車場の奥に2台の車が停まっているのを発見。

誰もいない公園なのになんで?

と思った僕たちは、事件の匂いを嗅ぎつけて車を見に行ってみることにした。

思春期真っ盛りの高校生だ。

もしかして自殺!?

またはカー◯ックス!?

なんとも言えない空気で息を呑む。

こういう時、いつも調子に乗っちゃうキヨぽんが先行して車の窓から中を覗くと、、、

中から勢いよく、めちゃくちゃイカついお兄さんが出て来た笑

奥には細身の女性が見えた。


開けてはならないパンゲアの箱を開けてしまったらしい僕ら。

この後、いかついおにいさんにめちゃくちゃ怒られた笑

いやでもさ、誰もいない公園に泊まってるフルスモークのワンボックスカーは

誰が見ても怪し過ぎるじゃんね笑


その時はあまりに威勢よく怒られたからすごすごと退散したけど、

後になって考えたら、あんな早い時間にフルスモークのワンボックスカーの後部座席に2人きりだなんて

仕事中に不倫かなんかで抜け出してきた男女カップルだったんじゃないかという気しかしない。

教室に戻ってそれに気付いてからは、みんなで馬鹿みたいにゲラゲラ笑った。


また、ある時から授業中にバレないように奇声を発するのがブームになった。←馬鹿w

発するものが言葉だとバレるけど、効果音みたいな音を発するとイケるんじゃないだろうか。

ということで、みんなで授業の合間に謎の発声練習を繰り返した後、

いろいろ鈍そうな先生を実験台に試してみることにした。

たたし、僕らもアホではない(いや、アホでしかないけど)。

一回の授業で、チャレンジしていいのは一人一度まで。

チャレンジした授業の時は、先生の名誉のためにも真面目に授業を受けて、必ず模範的な挙手をしなければならない。

などの謎ルールを設けて、そのルールを破ったらホウキでケツをグリグリされるという厳しい罰まで制定した。

いくつか先生に気付かれ怒られたり、気付かれずにやりすごしたりを繰り返すうちに

もっともバレない方法に辿り着いた。

それは

高音で「とぅん!」と一瞬に全てをかける発声をすること

であった。

先生も「ん?なんか変な音しなかった?」とか言いながら振り返るが

まさか誰かが言ってるとまでは思わないらしく、これでなんとかやり過ごせた。

しばらくして、キヨぽんが高音がでなくて地声で授業中に「きゅん」と普通に大声で叫んでしまって

めちゃくちゃ怒られてこの謎ゲーは終了した。


みんな、刺激を求めていた。

真面目な受験勉強と、ものすごいバカなことが繰り返される日常。

薄氷の上で僕らのメンタルは成り立っていたように思う。

いっそめちゃくちゃなバカになりたいと思ってた。

でも古い体質の学校で、それこそ偏差値の高い大学に入ることが正義のようなこの環境で

僕らのできる反抗はただただものすごいバカな日常を送ることだった。


流行のスタイルなんてよくわかんないけど

受験勉強の合間に話すカッコいいミュージシャンに憧れてた、ありふれた高校生の日常。



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