寺田寅彦を褒めてみる

寺田寅彦って人を褒めてみようと思います。
簡単に言うと(今で言う)東大の物理学の教授で、夏目漱石のお弟子さんみたいな立場の方。

wikiの説明はこちら
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E7%94%B0%E5%AF%85%E5%BD%A6

何年も前に上野の科学博物館で「化け物の文化誌」を見たときに初めて知った人なんですが、考え方が面白い。
後で「吾輩は猫である」とか「三四郎」を読んだ時に「あれ?このキャラってもしかして・・・」と思うと案の定モデルになってました。
「化け物の文化誌」でいくつか面白い言葉を見つけてたのをメモしてたのが出てきたんで、褒めてみようと思います。

【その1】
『雷電の現象は虎の皮の褌を着けた鬼の悪ふざけとして説明されたが、今日では空中電気と称する怪物の活動と言われている。(中略)結局はただの昔の化け物が名前を変えただけの事である』

カミナリってのは昔は雷様のせいだって言われてたんだけど、今は空中放電だって言われてる。事象は変わらない。見方と名前が変わっただけだと。
この人、科学と民俗学やオカルトを分けようとしてないですよ。
見ているものは江戸時代の人も今の人も一緒じゃねぇか、と。
視点が面白くて、軸がぶれてないんですよね。

【その2】
『人間が進化するにつれて、化け物も進化しないわけには行かない。しかしいくら進化しても化け物はやはり化け物である。現在の世界じゅうの科学者らは毎日各自の研究室に閉じこもり懸命にこれらの化け物と相撲を取りその正体を見破ろうとして努力している。』

これもちょっと凄い。
科学とは化け物の化けの皮を剥ぐ作業だと考えている。
怖いものの話しを聞いて、熊さん八っつあんが「よし、いっちょうこの目で確かめてやらぁ」って言うのの延長に科学があると考えている。
幽霊だとおもったのが実は枯れススキでも、じゃあ何で枯れススキが幽霊に見えたのか?って感じで化け物は進化すると思ってる。
科学的探究心ってのは人間が全員持ってる物なんだって事を言いたいんじゃないかなぁと。
で、人はそれを抑えられないって言いたいんじゃないかなぁと。

【その3】
手元にちゃんとした文章無いんですが、こんなような事も書いてありました(以下、書いてあったことをなんとなく要約)。
『なんでも科学で説明するのは良くない。化け物は化け物、不思議は不思議としておけば子供は好奇心をもってそれを解明しようとする』

いや、全くです。
例えばほとんどの人が冷蔵庫が冷える訳を知らない。
でも俺が「冷蔵庫の中には小さい雪女が入ってて、ソーセージをつまみ食いする代わりに中を冷やしていてくれる」なんて言ってもみんな否定するわけです。
じゃあ、なんで冷えるんだよ!って聞いても答えられない。
『理由は分らないけど冷える』のと『雪女がソーセージを報酬に冷やしてる』のどちらがより科学的だと思いますか?
俺は子供に何かを教えるにはまずデタラメを教えて興味を持たせて「ウソだと思うなら調べてみろよ」って言うのが良いと思うんですよね。
「夜、口笛を吹くと蛇が来る」にしたって、ただ単に「口笛吹いちゃダメ!」って言うよりも効果あると思うんですよ。
調べれば、なんで昔の人はそう言ったのかを理由付きで知れますから。
調べなかったらとりあえず分らないけど止めとこうって思うでしょうしね(笑)

そんな訳で、初めて見た時には俺と意見の合う見所のある人を見つけて非常に嬉しかったです。
だいぶ昔の人ですけどね。
東大教授ですけどね(笑)

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