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宇宙の話をしよう

先日、コスモプラネタリウム渋谷でプラネタリウム番組『プラネタリウム版 宇宙の話をしよう ~ロケット開発編~』を観させていただきました。この番組は、NASAジェット推進研究所の技術者・小野雅裕さんによる同名の児童書を原作にした作品で、彼をモデルとしたパパと娘さんをモデルにしたミーちゃんの対話を通して話が進んでいきます。ロケット開発編ということで、『地球から月へ』の作者ジュール・ベルヌから始まり、ツィオルコフスキー、ゴダード、オーベルト、フォン・ブラウンたちの軌跡をたどりつつ、彼らの情熱と苦難が紹介されます。これ以上はネタバレになってしまうのであらすじを書くのはここまでにしますが、利根川初美さんの素敵なイラストやミツマチヨシコさんの温かい切り絵背景画(原画展が開催されています!)にマーク・オートレッドさん(合同会社スターライトスタジオ)のCGが上手い具合にマッチして、独特の優しい世界観が醸成されています。

見てまず感じたのがミーちゃんの既視感です。自分の好きなことを早口でひたすらまくし立てていく。いや、昔の自分ですね(笑)そして小野さんも同じだったんじゃないですかね(笑)私と小野さんは同い年。経歴はまったく違いますが、勝手に通じるものを感じました。まぁ、私は子どもの時代、浮気性というか「宇宙(天文)一直線!」という感じではなかったんですけども。
ミーちゃんの声をあてたのは設定と同じ12歳の岡田日花里さん。これがまたリアルなんですね。ああいう子ども、いますもん。自分がそうだったですし、改めて思い返すと、我が家の長男(現在4歳)もあんな感じです。いや、多くの子どもたちがミーちゃんなんじゃないかと思います。もちろん寡黙な子もいますが、それは言葉でのコミュニケーションが苦手なだけで内に秘めた想いは、みんな変わらないのではないでしょうか。そして、かつて子どもだった大人たちも、今は忘れてしまっている、社会に合わせる(?)ために隠しているだけで、やはりミーちゃんだったはずです。なので、この番組は子どもたちはもちろんですが、大人にこそ見てもらいたいと思います。きっと何かを思い出すはずです。

さらに、ある意味で宇宙開発黎明期を扱ったこの番組は、今こそ見てほしい、見るべき番組だと思います。
近年は民間企業の宇宙事業への参入が著しく、スペースX社のロケット打ち上げなど日常茶飯事です。日本もH-IIAロケットの打ち上げは成功の連続で(先日のイプシロンロケットの打ち上げは失敗してしまいましたが)、空を見上げれば、月に何度も国際宇宙ステーションの軌跡を目にすることができ、そこに日本人宇宙飛行士が滞在していることも珍しくありません。というか、常に数人の人間が地球のまわりを周回するようになって久しく、まさに宇宙が身近になったと言えます(宇宙へ行くとなるとまだまだハードルは高いですが)。
そして2022年には、人類の再びの月着陸を目指すアルテミス計画が本格始動。無人のオリオン宇宙船は月までの旅を終え地球に帰還、アルテミス1ミッションは成功裏に終わりました。今後、5年10年で、人間が月面を歩くようになることは確実でしょう。
有人宇宙飛行が珍しくなくなった現在ですが、そこに至る道筋は決して平たんではありませんでした。人間を宇宙へ、月へ、という夢物語を現実にするために、多くの人の挑戦があり、挫折がありました。尊い命が失われたことも一度や二度ではありません。それでも進んできたのは、科学や政治の力もあったでしょうが、なにより「ただ行きたかった」「行けるか試したかった」から、”人が想像することは、すべて実現できる”というジュール・ベルヌの言葉を純粋に追いかけていたからだと思います。今の宇宙時代が訪れる前に、ある意味”熱い”時代があった、ということを今の子どもたちに、この番組を観て知ってほしいのです。人は当たり前のように宇宙に行けるようになったわけではない。この番組を観れば、その後、ロケットの打ち上げや夜空を駆ける国際宇宙ステーションを目にしたときの感覚が変わるのではないでしょうか。

プラネタリウム番組『プラネタリウム版 宇宙の話をしよう ~ロケット開発編~』は2023年1月28日に投影が始まったばかり。しばらくは投影が続くはずです。ぜひコスモプラネタリウム渋谷に足を運んで、番組を楽しんでください。そして、原作も読んでみてくださいね。

(そういえば、あのクマのぬいぐるみ……のっそりくまは何者だったのだろう…?)
(一回だけ、喋ったような…?)
(明かされることのない謎……実はトラピスト1からとか……?)

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