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大人の休日倶楽部


長野に行く時に
わたしは初めて[しなの]に乗った

塩尻から乗り換えて乗るのだけれど
名物(?)のお蕎麦屋さんの入り口の狭さには驚いた

小人が入るサイズしかないのだが
すでにおじさんが蕎麦を食べている後ろ姿がみえた

雨のしっとりした空気に包まれ
わたしはしなのを待っていた

自由席の列はそこそこあったので
「座れなかったらどうしようか」という不安な思いと
「トイレに近いところがあればなおいいな」という思いが混ざっていた

電車が着くと案の定、人がたくさん乗っていた

わたしはどこでもいいのでとりあえず座らなきゃと焦りながらも若いメガネお兄さんの隣に座った

そして、気が付いた

トイレとの距離が近い…

なんとも、ラッキーガールなわたしである

メガネお兄さんは窓に頭をつけて眠っていた

わたしはNetflixを開き、途中までみてた
「オーバーフェンス」を再開した

暫くすると、お兄さんがゴソゴソと支度をしていた

次は、松本だった

降りるのかと察し、お兄さんが席をたったあと

わたしは、お兄さんの温もり満点の席に座った

すると、すぐに隣にリュックを背負ったおじさんが
「隣座るね」と小さく手を上げながら座った

わたしは「どうぞ」と小さく頷いた

温かい日射しが長時間続くと鬱陶しい暑さに変わる

わたしはカーテンを少し閉めて
Spotifyでサカナクションのアルバムを聞いていた

山が近くなり少し暑さがおさまり曇ってきたころ
チラチラとおじさんが窓の外を気にしていた

雨降っているのを気にしているのか
それともなにか見たいのか

わたしはなにもすることなく「多分、風」を聞いていた

すると、おじさんが
「棚田見てもいいかな」と言った

それまで、なにも気が利かないわたしは焦りに焦って
「ごめんなさい!どうぞ!あ!見てください!」と
勢いよくカーテンをあけた

その後、おじさんとポツポツお喋りをした

最初は棚田の魅力のこと

名前や場所は忘れてしまったが
おじさんはいろんな棚田を知っていた

次に、休日倶楽部のこと
吉永小百合さんが出てる大人の休日倶楽部

きっぷに[大人の休日倶楽部]の文字

あれを使って各地へ旅行に行くのがご趣味だそうだ

JR東日本全線とJR北海道全線、その他7つの鉄道会社線が乗り降り自由らしい

なんてオトクなシステム…
だけど期間が限定しているそうだった

そして、おじさんの健康のこと
おじさんは痛風で足が痛くて辛いとのこと
各地でおいしいものを食べることが大好きだから
食事には気をつけているそうだ

旅行にきて大丈夫なのかと聞いたところ
まあまあ大丈夫とのこと

各地でレンタサイクルを使って移動するそうだが
上りは辛いそうだ

最後に、上田にある美味しい蕎麦屋さんのこと

何度か足を運んでいるそうでご主人にも顔を覚えてもらっているそうだ

今度行ってみると言ったら喜んでいた

そんな話をしているうちにあっという間に長野駅

おじさんはホヤのおつまみをリュックにしまい
痛風で痛めている足を気にしながら
「じゃあまたね。ありがとうね。」と言った

わたしも「お気をつけて」と言って電車を降りた

長野駅の改札をでると沢山の観光客の人がいて
あのおじさんのリュック姿が小さく見えた

大人の休日倶楽部かぁ

大人になってひとりで旅行に行くのもアリだなぁ

50歳まであと26年…

大人なのにまだまだ大人に憧れちゃうわたしなのである

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